賢者2
ドラゴンの死骸は大きくて処理ができなかったため、放置し、衝撃でぐちゃぐちゃになった家の中の掃除を優先した。
飛び出した時には気がつかなかったが、家を覆っている樹の部分は黒く焦げてり、一部触れば炭の部分が塊で落ちていく。ドラゴンの攻撃の凄まじさを改めて実感する。こんなものを食らったら文字通り消し炭だろう。
掃除が終わり、一息ついたところだったが、俺は賢者のことが気になりすぎて、直ぐにその話題をアムディアにふった。
賢者と会ったかと聞かれたが勿論そんなことはない。だからこそ気になる。
「賢者は、他に独自の用語は使ってなかった?」
「うーんとね、最後に会ったのはかなり前だから、いっぱいあったけどほとんど忘れちゃったな~。」
椅子を後ろ足で立たせ、ゆらゆらさせながら遠い昔を思い出すようにアムディアは答えた。
「何でもいいんだ。印象の強いものとかなかったかな?」
あと、2、3個出てくれば日本人と断言できる。ちなみに今の時点で7割は日本人であるとみている。
「うーん、あーそうだ! 初めて会った時に言われた言葉だけど全く意味がわからなかった言葉があった。」
「出来れば、発音の仕方とか記憶の限り忠実に再現してくれないか?」
判断材料は鮮明であればあるほど良い。
「えーと、確かこんな感じ。」
「はぁ、はぁ、はぁ。褐色系ロリッ娘キターーー。おっふ、アムディアたんマジ天使!ペロペロしたい!」
んー?
おかしいぞー?
アムディアの声のはずが、脳内フィルタかなんかでモストディープゾーンオタクの音声で再生されたぞ。
あ、なんか匂ってきた。これ人間のときに嗅いだことのある匂いだ。犯罪という香りだ。
てか、賢者ってなんだっけ。変態の異名だっけか。
「うーん。最初はビックリしたよ。いきなり早口で訳のわかんない事を言われたんだもん。でも、なぜか良く覚えてるんだよね。」
「そ、そうなんだね。それは、誰でもビックリするよね。」
しないやつはいない。断言できる。
そして、これで断言できる。日本人だ。是非とも接触して、この世界のこと、俺のこの現状、日本に帰る方法など情報を交換したいものだ。
まともに話せるか不安は残るが。
「賢者は、今、何処にいるか分かるかい?」
「ううん。分からない。かなり前にいつの間にか出かけにいって戻ってきてないよ。」
つまりだ、この賢者なるものは山奥に少女をつれてきて放置してどっかに行ってしまったと。
なかなかな野郎だな。
となると、アムディアは自分の家に帰るべきではないか?なぜここに一人でいるんだ?
「アムディアは、何処からきたんだ?家族が心配しているんじゃないか?」
「え? 私の家族は賢者だよ。私はここにいる前の記憶がないんだ。」
賢者、お前そこまでするんか。
俺とお話する前に少し形の違ったお話(物理)をしないといけないみたいだな。
なんにせよ、接触しなければ話しにならない。どうにか居場所を突き止めたいものだ。フィリアたちならば立場的に知っている可能性はある。それに、ドラゴンに邪魔されてしまって聞きそびれたことがいくつかある。
「アムディア、ドラゴンに邪魔されてしまったフィリアたちへの質問の続きをしたい。もしかしたら、賢者の居場所を知っているかもしれない。」
「うん!わかった!」
そう言うと、アムディアはフィリアたちに声をかけてくれた。
都合良く覚えてるわけがないんだよな。




