追跡2
奴等の姿が消えた。しかし、臭いは先に続いている。
だいたい検討はついている。結界か何かの類いだろう。
俺は奴等が消えた現場へ警戒しながら近付いた。やはり、匂いがここで消えていて何か「壁」がある。
こういったものには、触ろうという気が起きない。
試しに小石を前足ではじいて「壁」の方へと転がすが小石は消えなかった。
結界自体に攻撃性はないのか、もしくは生物ではないため反応しないかである。
奴等は入る瞬間に合図のようなものを送っていなかった。つまり、恐らく入っても大丈夫なはずではあるが、入りづらい
生きたまま獲物を捕ってきて放り込めば確認がとれるんだが、もちろんそんな時間はない。結界の中はどうなっているか分からないため、追えるという確証は一切ない。
どうすれば安全であるかを考えて、木の棒でも突っ込んでみようかと思い立った時だった。
「入って。」
一度、俺の頭はこの言葉をスルーした。しかし、2秒後遅れて俺の頭が受け取った言葉の処理を終わらせる。
「は?」
再度、頭の中に声が響く
「その結界の中に入って。」
俺は、思考を放棄しそうになった。
なんだ、今の。
入っても良いという許しを得たようだが罠という可能性がある。先にやろうとしていた木の棒を突っ込んでみるが、特に異常は起きなかった。
恐る恐る前足で触れてみる。すると、結界がゆらぐ。異常は起きない。そこでやっと入る決心がつく。
入ってみると、そこは入る前と変わらない森のなかだった。
ただひとつ、大きく違う点があった。
結界の中心であろう場所に通常の何百倍になるか分からない樹がそびえ立っていた。
「結界は特定の対象を隠すためのものか。」
声の主はあそこにいるだろう。
匂いも樹に向かって行っている。
俺は匂いを追ってやつらと同じように樹に向かって歩を進めた。




