本と扉
暗がりの中 灯る洋燈のオレンジ
照らされるは 赤 黄色 紫 色とりどりの本たち
金や銀の刺繍文字が 仄かに光っている
周りには本の山 そして本棚の列
ぱら とふいにページが 乾いた音を立てる
本が息を潜めている室内で 誰かが ふふ と笑った
明かりが当たる横顔も ページをめくるその手も
陽の光を忘れたみたいに 青白い
黒縁の眼鏡と その奥の銀色の瞳が
光を反射して 一瞬 閃いた
彼が 大きな本を読み進めるたび 空気は動く
他に 一切の変化はない この世界の空気が
彼は本を読み 本は彼に読まれる
そうして 時は緩やかに 最後まで 過ぎていくはずだった
誰かがその部屋の扉を 激しく叩くまでは――
久しぶりに詩が書きたくなり、次に始めようと思っているお話の一部を詩の形にしてみました。
※追記:沢山の方に読んで頂けて嬉しいです。ありがとうございます。
この詩を冒頭にしたお話、「扉の少女」の投稿を始めました。