表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

多重選挙

作者: 尚文産商堂

ある年のこと。

手野市選挙管理委員会はパニックになっていた。


それもこれも、選挙が重なったことが原因だ。

元々参議院通常選挙が行われることが決まっており、手野市もそのための投票が行われる手はずが整えられていた。

しかし、悪いことは突然に起こるもので、贈収賄事件が発覚。

手野市長が多額の資金を地元の建設会社から受け取り、公共工事の融通をしていたというものだった。

これだけならば市長が辞職して選挙ということで終わるはずだった。

だが、それに市議会議員が地盤としている地域への口利きをしていることが判明。

さらに接待に献金、挙句の果てには旅行代やらなんやらかんやらまでその会社から受けていることが発覚するころから雲行きは怪しくなる。

手野市議会議員は46名いるが、実にその4分の1以上となる13名が関与し、それぞれの受け持ちを決めて工事を依頼していることが発覚。

他にも、連座の規定に抵触する恐れがある者もおり、大規模なリコール運動へと発展した。

通称、手野不動産疑獄と呼ばれる大事件である。


ことはこれに収まらなかった。

大阪府議会へと飛び火することとなったからだ。

手野市は大阪府議会議員として当選枠を4名としているがこのうち2名が手野不動産疑獄に関与していることが発覚。

手野市議や市長へのリコール運動とともに、府議会議員へのリコールも並行して行われることとなった。

これに対抗する形で、リコール阻止に議会は動く。

まず市長が議会へ辞表を提出し、これを受理したことにより手野市長選挙の実施が決定される。

速やかに解散を決議するための臨時会を議長が招集し、全会一致により解散が議決された。

これに伴い、手野市議会議員選挙が行われることが決定。

同時に大阪府議会へと手野氏選出議員のうち疑獄に関与しているとされる2名が辞表を提出し、3日後に本会議により受理が議決された。

こうして参議院通常選挙、市長、市議会議員、府議会議員選挙の4重選挙となることが決まった。

しかし、不幸はさらに続く。

府知事へ対する行政対象暴力が発生したのだ。

原因となったのは定かではない。

逆恨み、あるいは理由なんてない、という話もあるがダンプカーで公用車へ突っ込み、公用車は原形をとどめないほどに破壊され、知事と運転手、そして同乗していた秘書の3名が即死。

なおダンプカーの運転手も両足切断の大けがを市たが一命をとりとめた。

この犯人は事故後一切の発言をしておらず、犯行についても黙秘を続けている。

何はともあれ、これにより知事が死亡し、このために選挙が行われることとなった。

この時点で5重選挙である。


極めつけは衆議院の解散であった。

首相は野党からの追求に、自らの政党の中から辞任要求が日増しに強くなっていた。

理由はありすぎるが、どれにしても平々凡々なもので、本来ならば辞任をする必要がないものばかりである。

しかし、ここぞとばかりに針小棒大にマスコミが煽り立て、それに野党議員と一部の与党議員が賛同したことにより、形勢は徐々に悪い方向に進んでいた。

そこで解散である。

解散することによってすべてうやむやにしたうえで、片を付けたいという意図があったのだろう。

だが理由なんていうものは体外が後付けだ。

ここでは手野市域においては初めて、全国でもおそらくこれまでなかったであろう六重選挙が行われることとなった。

つまり、衆議院議員総選挙、参議院議員通常選挙、大阪府知事選挙、大阪府議会議員選挙、手野市長選挙、手野市議会議員選挙の6つである。


こうなるとてんやわんやだ。

投票箱も追加で発注し、投票用紙も必要な枚数分を印刷会社へ通知しないといけない。

さらには必要な人員も用意する必要がある。

この六重選挙のとき、手野市選挙管理委員会は災厄の選挙という裏の名前がついたという噂がある。

どちらにせよ、この多重選挙を乗り切った後、ほとんどの選挙管理委員会の事務局の人員が有休の申請を出し、そのほぼすべてが受理される結果となったことが、どれほどの多忙だったかを知らしめているだろう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ