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武人ゴルメスの友語り4



戦場に到着した時、皇子様や貴族の方々は、檻に閉じ込められていた。だがそれは、守りの檻だ。檻に近付こうとする輩を 茨の鞭が打ち付けて居る。

檻の上にはメグミを抱えるジョーカー、あの娘も術者なのか…檻はメグミの術らしい。

檻にたどり着く前、頭上を火の玉が飛んで行く。まどか殿だ。檻を囲む者達を 一撃で吹き飛ばした。


「…まぁ、私がやってもいいんだけどね…ニセ皇子の首は、俺が獲る!ってうるさいのが居るから、アンタはそいつに任せるよ。その代わり、この檻は守らせて貰う。どうしても殺りたいなら…死ぬ気で来いよ。」


『かたじけない。ここまでお膳立てして貰って、討ち漏らすなど以ての外、必ず我が手で討ち取って見せようぞ!』


数合の打ち合いの後、ようやく子爵を討ち取った。私を掠めた槍に毒が塗ってあったらしい、身体が痺れ、意識が遠のく…

『これまでか…まぁ、戦場で死ねるのだ…悪くない…』

などと、そんな感傷には浸らせて貰えなかった。目を開けると、まどか殿がいる。この戦闘中、二度まで救われた。魔導師の火魔術を弾いたのも、そして今、身体の毒を消してくれたのもまどか殿であった。

『私はこの恩、返せるだろうか…』


突如、賊の一人が合図の火を打ち上げる。ジョーカーが空へ舞い上がり、国境線を見ている。

「王国軍だ!」

まどか殿の声に、倒れていた兵士も身体を起こす。今度こそ我らの出番である。皆己を奮い立たせた。


だがまどか殿の表情は曇る。聞けば冒険者は、国の戦争に関わらないのが暗黙の了解らしい。貴重な戦力ではあるが、いつまでも頼る訳にもいかない。私は了承し、別れを告げる。

「ゴルメス、死ぬなよ。」

まどか殿が唯一仲間に告げる条件「死ぬなよ」その言葉を私に向けた。

『無駄死には出来ぬな…』

私はまだ恩を返していない。さっさと王国軍を蹴散らし、再びまどか殿と間見えなければ…


私はひたすら剣を奮った。無駄な動きを排除し、流れるように…そう、まどか殿のように。

無心で切り進み、気付けば敵陣の中にいた。

『囲まれたか…』

私は覚悟を決め、剣を握る手に力を込めた。その時…

「ズッドォーーン!!」

落雷の如き衝撃が、辺りの兵士を吹き飛ばす!土煙の中から現れたのは、まどか殿であった。


「友として来た。」


その言葉に身震いした。このような死地に戻って来るとは、しかもその理由が友として…腹の底から湧き上がる闘志、受けた傷の痛みなど吹き飛んでいた。

『私は今日、莫逆の友を得た。』


まどか殿は、王国の魔術に対抗する為、魔術で応戦すると言う。初めに王国軍を見た時、表情が曇った理由、その心中を私に話してくれた。


「ゴルメス、私は戦争が嫌いだ。どんなに大義名分を並べたって、詰まるところ私利私欲による人殺しだ。誇りで死ねる兵士ならいいさ。だがその裏には必ず泣いている民がいる。こいつらも戦争に駆り出され、骨も拾って貰えない哀れな兵士達だ。国が民に向き合った政をしていない証拠さ。こんなこと、貴族に聞かれたら大変だが、友として、ゴルメスには打ち明けたかった。」

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