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武人ゴルメスの友語り2



それ以来、私はまどか殿に惚れ込んでしまった。

誤解が無いように言っておくが、女性としての上っついたそれではない。人として、武人として、強者としての憧れと言ってもいい。まどか殿を見ていると、子供のようにワクワクする自分がいた。



その日は朝から落ち着かない日だった。闘技場の一件以来、帝都には不穏な空気が漂っている。陽も落ち、何事も無く終わろうとしていた詰所に、突然地鳴りが響く。外に出ると、皇城の辺りが赤く染まっている。近くの者を偵察に出そうとした時、卿からの招集が掛かる。


皇城より魔族が溢れ、貴族街を蹂躙している。


俄に信じられない一報だった。一般の兵士では太刀打ち出来ないだろう。魔族に剣は通用しない。我らに出来る事は、主の盾となるか、時間稼ぎくらいである。

それでも卿をお守りする為、兵を率い皇城へと向かうしかない。

空を見ると、交差する光が見えた。まどか殿だ!術を拳に纏わせ、魔族と戦っている。まるで翼でも生えているかのように、空を飛び、拳や蹴りで魔族を撃ち落としている。舞うようにしなやかに、時に力強く、美しいとさえ思える。


ずっと見ていたい気もしたが、公爵邸での集合が言い渡されていた為、急ぎ向かう事にした。


話しを聞くに、隣国の企てのようだ。詳細を聞いている間に、魔族との戦闘を終わらせたまどか殿が合流した。私は少しの間、まどか殿と行動を共にすることになった。



まどか殿の先を見据える力は、この世の理を熟知しているかのようで、剣を振ることしか能のない私には、理解の及ぶ所では無かった。そんなまどか殿に付き従う者達は、指示に疑問を持つ事が無い。それは理解ではなく、信用だろう。産まれた国も種族も違う彼等だが、それぞれの能力を駆使し、任務を遂行する。

私は、ジョーカーという執事に尋ねた。


「まどか殿とは、名家の方なのか?執事や下男を連れて、旅をしているとか?」


「さぁ、どうでごさいましょう…わたくしもお仕えしたばかりですので…」


「なんと!私はまどか殿が産まれた時からの従者とばかり思っておった。」


「いいえ。わたくし共、出会って半年も経っておりません。」


「見たところ、貴公等はまどか殿に絶大なる信を置いている。半年も経たぬのに、何故そこまで信用出来るのか?」


「それは…まどかお嬢様が、わたくし共を信用してくださるから…でしょうか。」


「それは、どういう事なのか?」


「まどかお嬢様は、わたくし共の氏素性など、何もご存知無くても、仲間だと言ってくださいました。そして、仲間である為の条件として、勝手に死ぬな!と仰います。」


「仲間…か。」


「それだけではございません。まどかお嬢様は、命というものを尊ぶ御方でございます。わたくし共にお掛けくださる言葉然り、出会ったたばかりの村人でも、敵対者であっても、その命を奪う事を嫌います。」


「自分を殺しに来た者でもか?」


「左様でございます。ですから、命を軽んじる者、弄ぶ者は許せないのでごさいましょうな。」


「まどか殿は、何故あそこまで強いのだ…」


「ゴルメス様、貴方様は主君の御命をお守りする為に戦っていらっしゃるでしょう。それは、御自分の御命を軽んじる結果になります。」


「主の盾となるのが、我らの務め。」


「まどかお嬢様は、この世の全ての命を守りたいとお考えなのです。おそらく不可能なことでしょう…ですが、今、目の前にある命は守ろうとなさいます。御自分の命も含めて。まどかお嬢様にとって命とは、一国の王でも、村の子供でも、全て等しく尊いのです。その背負われる命の重さが、まどかお嬢様の強さなのでしょう。」

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