第295話 向こうの世界
「おい。起きろ! 起きろって!!」
(うるさいな。もう少し寝かせてくれ……)
しかし、ふと気付く。
この状況と声に覚えがある。
「ぐぬぬ、もうこうなったら!!」
デルフは危機感を感じ咄嗟に目を開けて起き上がった。
「おっ、起きたかデルフ!」
そう言うのは村のときの格好をしたカリーナだった。
やはり、嫌な予感は的中しカリーナは拳を振り上げている。
起き上がるのがもう少し遅ければその拳はデルフの腹部に振り下ろされていただろう。
だが、そんなことよりもなぜ死んだはずのカリーナがこの場にいるのか不思議でならなかった。
「……カリーナ。なんで」
「なんでって、お前がこんなところで昼寝をしていたから起こしに来てやったのだぞ! 私を待たせるなんて良い度胸だ!」
デルフは周囲を見渡すとほのぼのとしている草原だった。
「ここは……そうか」
デルフの姿もジョーカーの姿ではなくただの村人の姿だった。
諸々合わせてデルフは理解した。
「だけど、よく俺の場所が分かったな」
「教えてくれたんだ」
「誰に?」
「むむ、お前には会わせたくないな。もの凄く綺麗な女性だからな。……まぁ、いいか。ほら」
カリーナが指を差した方向に目を向けると黒髪の女性が立って微笑んでいた。
「……リラ」
デルフが歩いて向かうとリラルスは一言尋ねてくる。
「もういいのか?」
「ああ、全てを託してきた。……俺の役目は終わった」
「……そうか。ならいい」
その間にカリーナが割って入る。
「な、なんだなんだ。お前たち知り合いだったのか! ずるいぞ!! 私も入れろぉぉぉ!!」
「わ、分かっているって。お前も一緒だ」
そのときリラルスは気が付いたように尋ねてくる。
「……ヨソラはどうじゃった?」
「大丈夫。ヨソラは俺らが考えている以上に強くなっている」
「それは良いことを聞いた」
嬉しそうに笑みを浮かべるリラルス。
「また、お前たちだけで話しているぞ!! ずるいぞ!」
「分かった。分かったって。だからその振り上げている拳を下ろしてくれ」
必死にデルフはカリーナを宥める。
それに対してリラルスは楽しそうに歩いている。
「やっと心置きなく旅ができるの! ふふ、さてどこに向かおうか」
「うーーーんと遠くに向かうぞ! 私もこうやってデルフと旅するのが夢だったんだ!」
「時間はたっぷりとある。急がなくてもいいさ」
そして、三人は笑い合いながら果てしない道を歩み始めた。




