不吉な鼠の氾濫 Ⅲ
今回の依頼は時間との勝負であるためメイリーの空間魔法によって、全員を『下水処理場』近くの村まで運んだ。初の空間転移を経験し目を白黒させている者たちを放っておいて、メイリーは一緒に転移させた馬車で目的地まで向かう準備を始める。
今回の作戦では近隣の村の被害を最小限で抑えるため、初撃の魔法で群れの数を減らすのに加えて群れの進行方向を村が無い方向に誘導し、そこで迎え撃ち一網打尽にする。本来なら近隣の村人たちをメイリーの転移で安全な場所に移動させられれば、万全なのだがそれをやるために必要な場所も時間も魔力も足りないので、この作戦に決定した。
そうしていると唯一のCランク冒険者となった魔法使いメルルさんが声を掛けてきた。
「流石ですね。空間魔法を使えるというだけでなくこの人数に加えて2台の馬車をまとめて転移させるなんて」
「そうですか?時間を掛けましたからこれくらいはできますよ」
「そ、そうですか。これならガーラルを連れてきてもよかった気がしますね。流石の彼もこれを見ればリーダーを認めざるを得ないでしょうし」
そんなことを言ってくるが、メイリーの意見は異なる。
「彼のパーティーは近接武器主体ですから、今回の依頼は不向きですよ。毒や呪いに侵されるリスクが高まってしまう。それに渋々私を認めたとしても、彼らよりもランクの下の魔法使いを主力として使えばどちらにせよ不満を言ってきます。ならいない方がいい。何かあっても私が対処すればいい」
群れの規模の詳細が分からないため大きな事は言えないが、『自動回復』を持つメイリーがいれば近隣の被害を度外視すれば鼠の殲滅は十分に可能であろう。ならば勝手に動き危険に陥るリスクがある奴等を連れていくより、多少戦力的に弱くとも指示されたことをしっかりとこなしてくれる者たちだけの方がやり易いのだ。
迎え撃つための一応の場所を決め、そこに拠点にて各自準備を始めてもらう。メイリーは近隣の村を回り事情の説明と防衛の強化の補助をした。メイリーが拠点に戻ると斥候班もちょうど戻ってきていたので、最終確認をすることになった。
「群れの規模は概ね予想通りでした。ただ上位個体もちらほら確認できました。上位個体相手では私たちの持つ耐性装備では防げない可能性もあります」
「それは不味くないか?」
「いや、作戦に影響がでるほどじゃないだろ。作戦は魔法による殲滅何だし多少強い個体がいても関係ないだろ」
予想外の敵に不安の声も上がるがそれほどでもない。メイリーは問題ないと考え総括する。
「作戦に変更はありません。3方向からの魔法攻撃で拠点側に進行を誘導し、随時魔法で数を減らしていきます。前衛の人たちは後衛を守る配置で撃ち漏らしを駆除していって下さい。ただし強い個体がいるようなので自身の安全を第一に、最悪『不吉な鼠』さえ倒せれば多少の鼠を逃がしても問題ないので、危険は犯さないようにお願いします」
メイリーの言葉に全員が頷くのであった。




