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疑似転生記  作者: 和ふー
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回復魔法教室

冒険者と教会は切っても切れない縁があった。冒険者は怪我をすれば教会にお布施を渡すことで、回復魔法を掛けてもらったりポーションを貰ったりしてまた冒険に出る。教会側にとっては冒険者はよく怪我をしてくれる上に金を持っている存在であるため、多くのお布施が集まるという大切な存在なのである。

そのため教会に所属し回復魔法やその上位の神聖魔法を習得した者は、教会に所属し続けるか他者にそれらの魔法を教えないという契約を魔法的に結び、他にそれらが漏れないように秘匿にしている。回復薬やポーションなども、それを作れる職人たちを囲い独占しようと試みている。そのため冒険者で回復魔法を使える人は、教会に多大なお布施をした見返りに教授して貰ったため、他者に教えることができない者か、スキルによって回復魔法に似た効果を得たので、他者に教えられない者がほとんどであるため、冒険者内で回復魔法が広まらないのであった。しかし、


「回復魔法は治したい箇所に魔力を注いで、治った後を明確にイメージするのが基本。魔力制御ができてないと大幅に魔力が消費しちゃうから気をつけて」

「はーい!」


そういう事情をあまり気にせずに始めた回復魔法のレッスンは、最初はフランのみに教えていたのだが、途中からフランが知り合いを誘ってきて増え、彼らが少しずつ覚えだしたところ、噂を聞いた他の冒険者が来るようになってしまった。とはいえ一人に教えるのも複数人に教えるのも大して変わらない、と考えたいメイリーは多くの冒険者に回復魔法を教授するのだった。


そんな感じで回復魔法教室を続けていれば、そんな現状を教会側が良く思う筈もなく、組合に抗議の連絡がいったようだ。


「とはいえ魔法の教授を規制する権限が教会にある筈がありませんし、組合としてもメイリーさんを罰することはできませんのでしょうがないんですけどね。元々教会のことを嫌っている冒険者は多いですし」

「それに少し前からは、私が直接教えることもなくなってる。私が教えたフランとかの最初の人たちが、教えるようにしてるから私に言われてももう遅い。」


メイリーとしてもそんなに何回も教室を開いている時間はなかったのだが、そう言ったらフランたちが自分たちが教えると張り切ってくれたのである。


「冒険者に回復魔法が浸透すれば死亡率も低下するでしょうし、今どんな感じですか?」

「適性の関係で全員が覚えられるとは思えないけど、ほとんどの人が初級の『治癒』や『活性化』くらいなら覚えられると思います。それ以上となると覚えられる人が限られてきますね」


本来なら不特定多数に魔法を教えることにメリットは無い。それならば回復魔法を交渉の材料に使った方が有用だ。しかし前世の記憶は無くとも知識はあるメイリーとしては、病院は大切だが、それが知識や技術を独占するよりも、それらを周囲に広めて予防させる方が大切だと考えているため、回復魔法を広めることに躊躇は無かった。またもう1つはメイリーのスキル『自動回復』により、メイリーの中での価値観として回復魔法がそこまでの位置に無いことも理由の1つであった。

兎に角、これによって各宗教の教会、全ての収入源が徐々に減っていくことで、数年後ある事件が起きるのだが、それはまだ先の話である。





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