組合長との会談 後
可笑しな質問にメイリーは首を傾げる。どうやっても何も無いのだから。
「基本的には魔法を使いました。私はソロですし多少の近接戦闘は可能ですが、肉体のレベルが高ランクの冒険者には、程遠いので嫌でも魔法主体となるので」
当たり前のことだ。メイリーに仲間がいれば違うのだが、この見た目で剣や槍で宝竜を打ち倒したと言っても説得力が無いだろう。しかしクダンもそれは分かっている。そして宝竜の特性も理解しているからこそ、聞いてきたのだ。
「宝竜に魔法使いが単独で倒せるとは思えん。そんなことができる輩はSランクの威力特化の連中だけだろう。確かにお前さんは将来そのレベルになる素質を備えているかもしれんが、今はまだ発展途上。故にお前さんの魔法で宝竜の守りは崩せん筈だ」
「よく知ってますね」
メイリーは感心する。クダンの言っていることはメイリーの事を子供だと侮らず、しっかりと評価した上で倒せないと判断したのだろう。と言うことは彼はメイリーには仲間がいると考えているのだろう。
「宝竜は近接戦闘にはそれほど強くない。魔法使いがブレスを防ぎつつ、数人で叩けばBランクでも倒せるだろう。まあその場合、魔法使いの技量がかなり必要とされるが」
「私ならできると。それは評価されていると理解していいんですか?まあでも残念ながら宝竜は私だけで倒しました」
嘘だと判断しているクダンだがこれ以上は聞いてこない。どうやって倒したかと言うのは冒険者の重要な飯の種だ、それはクダンが組合長であろうと、いや組合長だからこそ容易に聞いてはいけない事である。少しだけでも答えたメイリーにこれ以上尋ねるのは、タブーを犯すことになる。
そのため仕方がないがこの話はこれで終わりとして、別の話に変えてくる。
「お前さんが献上した宝珠によって第2王子の評価が上がった。冒険者は中立たれ、というか文言を知っているだろう。今回のお前さんの行いはそれに反していると思わないか?」
「屁理屈では?冒険者が誰から依頼を受けても自由な筈です。それにそれが駄目であるなら、貴族のお抱えの冒険者は軒並み駄目ということになりませんか?」
クダンはその反論に口を閉ざしてしまう。
「他に何か聞きたいことはありますか?」
「…いや、もうない。退出してくれて結構だ」
「はぁ。それでは」
メイリーはその言葉に素直に従い執務室から退出するのだった。
メイリーが退出したすぐ後、クダンに駆け寄る受付嬢。
「あんなに簡単に帰して良かったんですか!組合長の権限を使えば幾らでもやりようは、」
「それを使って得られる利益が少ないと判断しただけだ。組合側から彼女を冷遇処置することは可能だし、それを脅しに使うこともできる。しかしそうすれば彼女はここから去るだろう」
「…そうすれば第2王子を支援する冒険者はいなくなります。それがあの方の思惑でもあった筈です」
「だろうな。だが空間魔法を使えるという情報がある。それならここから去っても第2王子を支援することは可能だ。そうなるとここは空間魔法を使える貴重な冒険者を失っただけで、得るものは無い。元々あのおっさんの要請が組合の主義に反してるんだ。これ以上やっても利益はねーよ。」
その言葉に今度は受付嬢が口を閉ざしてしまう。
「それにそれが分かってるからお前もレレナにこの話をさせなかったんだろ?あいつならこんな筋の通らない話を承諾しない。そうなれば上司の命令に逆らったレレナは謹慎処分だ。馬鹿らしい」
「…お答えできかねます。私は、私たちはあの方に多大な恩があるのですから」
「そうだな。だから多少は協力したじゃねーか。もうこれっきりだがな」
クダンはそう言うと自身の仕事に戻っていくのだった。




