表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
疑似転生記  作者: 和ふー
84/150

魔法演舞 決勝トーナメント 後

準決勝2試合目の対戦カードは漣選手VS渚選手となった。それを不承不承ながら観戦していた芽依であったが、その決着は案外早くついた。


「漣選手が抵抗する前に渚選手が生み出した大波に飲まれてしまいましたね。得意の移動阻害系の魔法も使用してませんでしたし」

「ええ、おそらく漣選手のアレは重力魔法に類する魔法でしょう。そのため発動に時間が掛かってしまったのでしょう。そして発動速度が今大会でも随一と目される渚選手とは相性が悪かったのでしょう。」


試合後の解説を聞き流しながら芽依も2人の能力について考察する。


「芽依。どう思う?」

「わからないけど、前も言った通り重力魔法では無いね。確か3位決定戦があるからそれ見ればはっきりすると思うけど、雷魔法などを応用した磁力魔法じゃないかな?」

「えーと、そっちじゃなくて…」

「相手を押し飛ばす魔法は重力魔法じゃ無理だし、その点磁力なら引力だけじゃなくて斥力もあるからそれも説明できるし。とすれば発動が遅いのも対象を磁石的性質に変化されなくてはいけないから…」

「だからそっちじゃなくてっ!」


察しの悪い芽依の発言に訂正をいれる凛だったが、芽依は気がついていて敢えてそんな態度をとっている。


「渚選手の方はもっと単純だよ。私が使う魔法の中にアレと逆の魔法が存在するからある程度予想がつく。多分速攻魔法でしょ」

「速攻魔法?それってあの無詠唱とか詠唱破棄何かの高等技能の?」


凛が例に上げたものは、それこそ魔法のスペシャリストたちの限られた人たちが扱える技能である。凛としては学生がそんな技能を持ち合わせていることが信じられない。そんな凛の疑問がわかっているのか芽依は笑顔で首を横に振る。


「速攻魔法だよ。技能じゃない。簡単に言えば速攻魔法の詠唱と別の魔法を紐付けしといて、速攻魔法の詠唱でその魔法が発動するようにプログラムしとく。そうすると速攻魔法の詠唱さえ済めばその魔法を放てるって魔法だよ」

「…それって意味あるの?結局、詠唱してるんだよね?」

「うーん。厳密には色々と制約はあるが、速攻魔法はキーワードみたいなモノだから、それ自体に魔法制御の必要が無いから、威力は本来よりも劣るけど早く発動できるのが利点」


魔法の発動には『箒』を動かすキーワード的な働きをする詠唱とは別に、魔法を制御しなくてはならず、それには正確さと早さが求められる。しかし速攻魔法は『箒』にあらかじめプログラムしておき、キーワードのみで発動するため早い。その分魔法制御は『箒』のみが行うので威力がでにくいという欠点もある。


「それなら芽依もその速攻魔法って使えるの?」

「…使えるか使えないかで言えば使える。けど実用的ではないね。特にこの大会では『箒』は支給されたモノを使うから、十分な出力が出せない。多分、渚選手の速攻魔法は既存のモノとは別物だと思うよ」

「えっ!大丈夫なの?」

「問題ない。じゃあそろそろ控え室に行く」


芽依はそう言って観客席を後にするのだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「それではお待たせいたしました。最終決戦。決勝トーナメント決戦戦を開始いたします」


観客のボルテージは最高潮を迎えていた。今大会は面白い魔法が数多く出て、波乱な展開もあり盛り上がった。そのためその集大成である決勝戦に期待する声も大きくなる。しかしそれと同時に観客もこの試合が長く続かないだろうと予想していた。どちらも学生とは思えないほど、発動速度が早い。もしかしたら初撃の優劣で決着がつくなんてことも考えられるだろう。

その予想はある意味、的中していた。


「3、2、1、レディーファイト!!」

「始まりました決勝戦。さてどんな戦いが、おおっと、早速、渚選手が仕掛けます!」

「あれは『大津波』ですね。あれほどの魔法をあの短時間で。これは即時決着もあり得ますよ!」

「おっと、鹿島選手一切の抵抗もできず波に飲まれてしまいます。これは準決勝の再来となるか!」


渚の魔法に為す術なく飲み込まれる芽依に、観客からはため息さえ聞こえる。決勝戦が味気ないものになってしまったのだから当然である。

しかし波が過ぎ去り芽依が完全に流されてしまった筈なのに、試合終了の合図はまだ鳴らない。そんな異常事態に術者である渚は慌てて辺りを探す。


「えーと、これはどういうことなんでしょうか」

「おそらく、鹿島選手は波に飲まれることまで折り込み済みで、それに紛れて姿を隠して魔法の準備をするつもりだったんでしょう。『人魚の吐息』や『泳化』など波中でも泳ぎきれる魔法があれば『大津波』であろうと無効化できますから」

「しかしそれならなぜ姿を隠したのでしょうか?」

「おそらく渚選手は速攻魔法により魔法発動を補助しております。そのため真っ向勝負は分が悪いと考えたのでしょう」

「なるほど」


そんな解説をしている間に芽依は準備を完了したのか姿を表す。


「速攻魔法の発想は嫌いじゃないけど、コンセプトがね。『三重術式よ、解放せよ』」

「津波…なっ!重力?」


芽依に向かって再度、速攻魔法を放とうと試みた渚であったが、それより早く芽依の遅延魔法が炸裂する。今回の遅延魔法は、3つの魔法を重ねた複合型であった。折角なので漣選手の磁石への性質変化と磁力による移動阻害、止めの『コイルガン』の三重術式であった。


「なんのつもりだっ!」

「だからコンセプトの違いですよ?」


コイルガンが渚を貫き、決着となる。

今回は折角面白い魔法を見れたので真似したくなった芽依であったが、慣れない魔法のため時間が必要であり、一回隠れるという戦法を選んだ。ただ、初めてに近い魔法のため、術の発動速度、発動規模、威力、精度など全てが中途半端となってしまった。

しかし遅延魔法の利点は組み合わせによって、ひとつひとつの魔法の不足を補うことにある。一方で速攻魔法はひとつの魔法で完結している。威力を捨てて早さをとることで。

対人戦においてどちらが優れているかと言われれば、速攻魔法であろう。しかしそれでも芽依は遅延魔法を選ぶ。それこそコンセプトの違いなのだ。


「早さよりも威力。それこそロマン」


これにて芽依の優勝で魔法演舞に決着がついたのであった。







長かった。まず戦闘描写が苦手なのにトーナメントにしてしまったのが…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ