魔法演舞 決勝トーナメント 前
『魔法演舞』3日目、決勝トーナメントは、特に波乱が有るわけでも無く順当に進んでいた。芽依たちが目をつけていた選手は1回戦を難なく勝ち上がり、まだまだ余力がありそうであった。芽依も苦戦することなく、現在に2回戦の真っ最中であった。
「おおーと、防戦一方だ。やはり斎藤選手、戦いにくそうですね。」
「はい。鹿島選手の得意とする空間魔法は高難易度であるため、殆どその概要が知られておらず手の内が読みにくい。更に鹿島選手はこれまで殆ど空間魔法のみで勝ち上がってることで、他のどの魔法が得意なのかもわからない。相手にするには嫌な相手となりますからね。」
相手選手は芽依の情報が乏しく、ただでさえ面倒相手なのに更に警戒せざるを得ない。それに比べて芽依は相手選手の情報を、アナリストのごとく教えてくれる凛のお陰もあり、有利に戦いを進めることが出来ていた。
「鹿島選手が暴風を繰り出しました。それを斎藤選手、風楯で防ぎます。同じ風魔法ならば防御の方が有利、斎藤選手劣勢ですが落ち着いて、」
「いや、あれは駄目ですね。完全に悪手です。」
「えっ?」
解説者の言った通り、芽依が放った暴風を風楯は防げなかったばかりか、殆ど勢いを弱めることも叶わず斎藤選手は吹き飛ばされてしまった。
「風魔法は確か防御に優れた属性だったと記憶していますが、何故このような現象が?」
「確かに同程度、もしくは少し強めの攻撃魔法であればそうなります。しかし暴風と風楯では魔法の格が違い過ぎます。すると防御を侵食し下手をしたら更に強化される危険性もあるのです。」
「そうなんですか。おおっとここで鹿島選手、吹き飛ばされた斎藤選手に止めを刺します。2回戦第1試合決着です。勝者は鹿島選手。」
芽依は順当に勝ち進むのだった。
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試合を終え観客席に戻った芽依を出迎えたのは、満面の笑みを浮かべる凛であった。
「凄いよ!本当に。これでベスト4だよ。『魔法演舞』本選の!」
「そうだね。」
芽依の反応は相変わらず鈍い。凛には悪いがゲームとは言え実践経験の差が歴然である学生相手に連勝したところでそこまでの高揚感は得られない。芽依は魔獣を倒すために自身の使用できる魔法が、どの魔法と相性が良く、ある魔法とどのような反応するかなどを調べる。それは芽依がゲームを攻略するため、つまり魔獣を倒す手段として魔法を学んでいるためだ。
それに比べて他の学生たちの殆どは、自身の魔法技術の向上のために日々努力している。つまり戦闘をあまり想定していない人が多いのだ。そのため魔法技術としては芽依と他の学生とでそこまでの差は無いのだが、発想や咄嗟の機転で遅れを取ってしまい結果的に差があるように見えてしまうのだろう。
「とは言え次からは苦戦しそうかな?」
「次はいよいよ太陽選手だもんね。楽しみだな芽依VS太陽選手。」
「まだ決まってないけどね。」
と言いつつ芽依もそうなるだろうと考えてた。太陽選手のレーザー砲は直撃しなくとも熱によってダメージを与えられるため、図らずとも範囲攻撃となっており、今のところ他の選手たちに防ぐ術は無さそうである。
「勝てるの?」
「策はあるけど、上手くいくかはわからない。まあ何とかする。」
芽依は穏やかな表情で返答するのだった。




