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疑似転生記  作者: 和ふー
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休憩中の面倒事

芽依は試合運がついているのか、殆どの試合が第1か第2試合のため午前中のうちに暇になってしまった。とは言え前代未聞の偉業とまでは言わないまでも、陣地総取りという快挙を成し遂げた芽依を周りが放っておく筈もなく、芽依はゆっくりとゲームをやる暇も無かった。

しかしそれも次の試合が始まる頃には収まりほっと一息つく。


「良い手だと思ったんだけど、こんなことになるんだったら他の手段を考えるべきだった。」

「えー、そうかな。凄かったよ。まあ芽依は注目されるの好きじゃないからそう思うかもだけど、目立つの嫌だから手を抜くのも違うでしょ?」

「うーん。まあそうか。」


芽依も納得したのでこの話も終わりかけたのだが、残念ながらそうもいかなかった。2人に記者とは別の人種が近づいてくる。


「鹿島芽依さんだね。こんにちは。」

「今度はどちら様で?」

「私たちは…国防軍の者だが、先程の『マジックジャマー』について少し話を聞かせていただきたいのだがよろしいかい?」


よろしくないですとは言わせない雰囲気を放っている国防軍の人たち。しかし、


「何のことか分からないのでお引き取り下さい。」


空気を読まない芽依は雰囲気など無視する。しかし彼らも少女の言動にいちいち動揺などしないのか、気にせず話を続けてくる。


「貴女の使用した『マジックジャマー』は国防軍の機密にしている技術の1つの筈です。その存在事態は有名ですがこれの発動を許された魔法使いは、国防軍でも限られた隊員のみです。それを貴女が発動した。我々はこの事態をかなり問題視しているのです。お手数ですが術式を我々に見せていただきたいのですが?」


面倒だなと言う顔をする芽依。何が面倒かと言えば彼らは魔法が引き起こす現象のみを見て芽依の発動した魔法を『マジックジャマー』だと判断してしまっていることであり、おそらく彼ら自身に『マジックジャマー』の使用権限は無いため、術の概要しか知らないのだろう。


「はぁ。確か『マジックジャマー』の原理はチャフのように魔法を反射する物質を空中に散布して、魔法の発動、制御を不安定化させて命中性能を奪うのが目的の魔法ですよね?私の魔法とはコンセプトが違いますよ。」


芽依の馬鹿にした態度に若い方の隊員が痺れを切らしたのか口調に怒気が帯びてくる。


「しかし効果自体は同じ物だろう!」

「ええ、そうですね。」


『マジックジャマー』も芽依の『無魔結界』もその効果範囲内で魔法が使い辛くなり、魔法が弱体化するなど、効果は同様と言っても良い。


「それを我が軍は問題視していると。」

「おい、止めろ。学生相手に恥ずかしく無いのか!すいません鹿島芽依さん。しかし我が軍の上層部より機密漏洩があったのではという声があったことも事実ですので。」


謝りつつも年配の隊員が鋭い視線を芽依に向けてくる。それを受けた芽依は更に呆れを深める。


「先程も言いましたが、そちらの軍の機密の魔法とはコンセプトが異なります。それに軍の機密技術とは魔法自体では無く、魔法反射物質の創生の術式だったと記憶しています。私の魔法とは完全に別物です。効果が同じであっても機密の漏洩を疑うのは早計なのでは?」


芽依の『無魔結界』は魔法に反射するのではなく、干渉する。イメージとしては相殺する物質のため別物である。おそらく軍は機密の漏洩ではなく、芽依から『無魔結界』を取り上げて軍の機密にしたいのだろう。


「しかしそう言っておいて貴女の魔法が『マジックジャマー』でない証拠が何処にありますか?」

「はぁ。魔法を見れば分かりますよね?普通。それとも貴殿方にはわかりませんか?であるならお引き取り下さい。」

「これ以上拒否するようであれば魔法演舞の決勝を辞退してもらう可能性もありますよ?」


魔法の違いを感じ取るのは魔法使いの基本的な技術である。おそらく『マジックジャマー』を見たことのある彼らならば、その差違は判別出来るだろう。芽依が素直に来てくれれば、術式を調べ機密の技術が使用されている証拠をでっち上げることも出来るのだが、術式を公開する決定権は術者である芽依にある。

残念ながら彼らに強引に芽依を連れていく権限は無いため、彼らがやれることは最早脅し紛いのことだけであった。普通の人には効果のある脅し文句かもしれないが残念ながら芽依には効果は無い。


「どうぞご自由に。お引き取り下さい。」

「…後悔することになりますよ。」


幾ら国防軍であっても確かな証拠もなく芽依の出場を取り止めさせる権限など無い。それくらいこの『魔法演舞』は大きな大会なのだ。しかしこの脅しはこの大会に懸けている学生ならば従ってしまうほどの力のある言葉なのだ。しかし芽依にとってこの脅し文句は脅しとしての機能を果たしていない。

芽依は立ち去る国防軍の人たちを笑顔で見送るのだった。

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