魔法演舞 最終予選 中
芽依の最終予選が始まった。2次予選の旗取りと同様に、スタート地点は戦闘不能時の復活場所となっているためスタート地点での争うもそこそこに各々、スタート地点よりターゲットを探索しに飛び出して行く。
芽依も他の出場者と同じように転移を使いつつ移動していく。空間把握を利用しつつ飛行魔法でフィールド内を飛んでいるとすぐにターゲットを何ヵ所か発見出来たのでその中で一番遠くに設置されているターゲットに転移した。
「えーと、ターゲットに魔法信号を送って。『信号よ、送信せよ』」
魔法を維持すること数秒、認証が完了したのかここら辺一帯のエリアが芽依の陣地になる。これで他の出場者に上書きされるまでは大丈夫である。今回のルールでは最終的な保有陣地が同数だった場合、陣地を守護出来ていた時間で順位が決定するシステムである。そのためおそらく一番乗りで陣地を取った芽依は、このまま行けば3位は確定する。しかし
「さて、アレを設置し終えたら次に行こう。」
芽依に保守的な考えは無さそうであった。
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最終予選のターゲット探しは2次予選の旗よりも何倍も見つけやすく、また陣地を取るためのターゲットへの魔法信号が届く距離が10mと定められていて、送信に数秒の時間が掛かるなどの理由から、この『陣取り』では陣地の防衛戦が主となる。まずは相手を倒してから陣地を取らなければ、ほぼやられてしまうためだ。
そして最初の30分程は、自身の陣地の周りで守護する5人と陣地を取れなかった5人の戦いとなることが多い。そのためターゲットに誰もいないということは殆どあり得ないと言っても良い。しかし、
「誰もいないよな?探知魔法にも反応がない。もしかして定石無視で2つ目を?」
あり得ないことがまさに起こっていた。しかしこれを見つけた彼にとってはまたとないチャンスである。序盤は圧倒的に防衛側の方が有利なため、出遅れた彼は罠である可能性も警戒しつつもチャンスに飛び付いた。
「これだけターゲットに近付いても敵襲無し。やっぱり2つ目を狙ってここを空けていたのか。ついてるな。『信号よ、送信せよ』…あれ?」
ここで漸く彼はこのターゲットの異変に気づく。魔法信号が送れないのだ。彼は焦りつつ色々な場所から送信を試みるが全て上手くいかない。ここで彼は1つの可能性を思い付く。
「まさか、『マジックジャマー』か?でもあれは正式には公開されてない高等技術の筈。…いや待てよ。確か2次予選で彼女に放たれた魔法が消失して…まずい!」
『マジックジャマー』とは魔法を相互干渉によって魔法の発動を妨害、魔法の弱体化を目的に開発された技術であり、一般公開されていない技術である。しかしこの現象に似たモノを昨日の2次予選で彼は確認していた。しかもそれを起こした相手は最終予選で不運なことに同グループである。
そして彼の予想が当たっている場合、彼女は『陣取り』において定石破りの全陣地制覇をやりかねないため、間に合わなくなる前に彼は、別のターゲットに急いで向かうのだった。




