魔法演舞 1次予選
『魔法演舞』本選は3日間に分けて行われる。1日目が1次予選と2次予選、2日目に最終予選が。そしてそれらを勝ち上がった者たちで3日目に決勝トーナメントが行われるという運びとなっている。
決勝トーナメントは1対1の魔法戦闘と決まっているが、予選は毎年様々な魔法競技が行われる。そのため魔法力だけでなく、どんな魔法を選択するかや、それこそ自身に得意な競技になるかなどの運も大切な要素となる。そのため優勝候補が簡単に予選で敗れるなんてこともざらである。
そして今年の『魔法演舞』の1次予選の魔法競技は『鬼ごっこ』であった。ゲーム開始時に一定数の鬼を決め、それ以外がエリア内を逃げ、鬼と肉体接触した場合、鬼がその者に移ります。そして最終的に鬼であったものが予選敗退するのだ。
「これって最初に鬼になった人ってかなり不利にならない?」
「そんなことはないと思う。今回のルールだと鬼を移された人に接触しても鬼は移せない。タッチ返しは無しのルールだ。それなら鬼になった者には鬼になった者の戦略があると思う。」
またこの鬼ごっこでは他者を害することが出来ないようになっている。攻撃魔法などを他者に当たるとダメージは無く、ノックバックのみが発生するようなエリアが設定されている。そう言った細かいルールを理解した上で戦略を練る必要があるのだ。
「鬼の数は半数。およそ200人の出場者の内の100人が1次予選で敗退する。説明だと4つのグループに分けるって話だから50の25が鬼。初期に鬼かどうかで戦略が変わるし考えないと。」
もう既に戦いは始まっているのであった。
とはいえ残念ながら芽依はこの世界でも珍しい空間魔法を使いこなす。空間把握と転移のコンボを使えば正直、この手の競技で負けることはあり得ない。最初に鬼では無かったので光学魔法の透明化と無音魔法を併用した『不知覚魔法』により身を潜めつつ、空間把握で情報収集を制限時間まで続けるという地味な作業をしていた。
そうして誰にも発見されないかと危惧していると、残り5分程で肉体変化魔法の一種、『獣化』を使用して嗅覚で芽依を見つけ出した出場者がいた。
「やっと見つけたぞ。獣の肉体から逃げられると思うな!」
と意気込んでいた彼にやっと見付けられて嬉しくなった芽依は5分間、空間魔法をフルに使って完璧に逃げ回るのであった。
「あの人は可哀想だったね。」
「そう?」
「基本的にさっきのグループは逃げ回る人が多くて、芽依みたいに隠れてる人は少なかったから。獣化の人は隠れてる人狙いだったのに、折角見つけたのが芽依何だもん。ああいった競技じゃ芽依に勝ち目無いよね。」
「そんなこと無いと思うけど。」
ちょっとした些事はあったが問題なく、1次予選を突破した芽依は、次に向けて昼食を食べながら、他のグループの鬼ごっこの観戦を楽しむのであった。




