自由な性格
ある程度の事情を理解したメイリーであったが何となく疑問が湧く。
「リュート様は本当に王位継承権に興味があるのですか?どちらかと言えば護衛2人の方が必死になってる印象なのですが?」
「そうだな。元々リュートは王位に興味は無かったと思う。王と別の生き方を知るために学院に入学したと言っていたしな。ただリュートの才能は兄の第1王子よりも優れているらしく、第1王子の取り巻きになれなかった者たちがリュートを担ぎ上げてるらしい。」
「はぁ。」
「ただ、リュートもただ流されてるだけではなく、何やら思惑があるらしいんだが。」
メイリーとしてはそう言った裏事情的な物に興味は無いが、政治的なことに首を突っ込むと自由が制限される可能性があるのでこれ以上これに付き合うつもりも無かった。
「まあこれ以上関わる気もないので、失礼させていただきます。今度私の興味を誘う依頼がある時は、あの護衛を抜きに依頼するようにリュート様にはいっておいて下さい。」
「2日後の会談は?」
「行くわけ無いでしょう。私も色々と忙しいので、それでは。」
明日からは溜まっているという組合の依頼を受ける予定のメイリーに、完了した依頼の依頼主と会う暇など無いのであった。
冒険者組合にとってもBランク以上と言うのは貴重な戦力である。ただ、Bランクを越すような強者は変わり者も多く一ヶ所に留まってくれなかったり、組合側が消化して欲しい依頼を受けてくれなかったりと、自由気ままな者が多い。それはメイリーも同じであるが、メイリーの場もそう言った気質を持ち合わせており、好きな依頼しか受けない事が多い。それはまあ構わないのだが、
「メイリー君。君はこの国でも極めて稀な空間魔法を使えるのだろう?」
「ええ、そうですね。」
「ではそれを我が国のために使ってはくれないかね。」
「お断りします。」
「待ってくれ、我が国の北部辺境地域の開発には莫大な資材の運搬が不可欠なんだ。現在、2名の空間魔導師が任務にあたっているが、証言によればこの2名よりも君の魔法は卓越していると言うでは無いか。どうだろう。報酬は望むだけ、」
「お帰りください。私は今日は一角熊の討伐で忙しくなる予定なので。」
「そ、そんな誰にでも出来る依頼など。待て、待ってくれ。」
メイリーは普通の冒険者とは違い、空間魔法と言う優秀な魔法を使える。そのためメイリーにしか出来ない依頼なども来る。しかもそう言った依頼に限って大貴族や国からの、莫大な利権の絡んだ依頼が。しかしメイリーはそれをさも当然のように断ってしまうのだ。
「メイリーさん。あの人ってララーテ伯爵の使いの人ですよね…断ってしまって大丈夫なんですか?」
「指名依頼は断っても構わないんでしょ?あの依頼が莫大な人命に関わる大事だと判断されれば強制依頼になるはずなので、大丈夫ですよ。」
「いえ、別にその心配では無くて。」
「それでは行ってきます。」
自由気ままな冒険者と言っても、断れない相手と言うものはいる。断ればこの国で生き辛くなるような相手には渋々従うものも多い。しかしメイリーはそう言った枠組みで生きてはいないのだろう。
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ゲームを終えた芽依は可笑しくて笑ってしまう。
「いや別にいいけど。やっぱりあっちの私は好戦的が過ぎるな。間違いない。」
(まあでも明後日からの戦いにはわりと参考になるかもな。)
明日は凛と一緒に東京観光を楽しみ、明後日からは遂に『魔法演舞』本選が開催されるのだ。
「楽しみ、ではないな。早く終わらせてゲームの続きしたいし。まあ明日早いし寝よう。」
生きたいように生きてるメイリーと自身との違いを感じている芽依だが、その芽依も相当、自由に生きてると回りから思われてることに気付いていないのだった。




