宝竜討伐の報酬
魔力が不足によって気絶してしまったメイリーだったが、すぐに『自動回復』によって気がつき動けるようになった。しかし魔力の回復は体の回復よりも遅くまだまだ本調子とは言えない。
(魔力欠乏を引き起こすほど魔力を消費するつもりはなかった。まだまだ制御が甘いってことだね。それにこの魔法は迷宮の魔獣くらいにしか使えないな。冒険者が多用できる魔法じゃないな。)
魔力制御は魔法使いの生命線となる。そのため今回のように想定以上に魔力を消費してしまうと言うのは本来のメイリーならばあり得ない事態であった。しかもメイリーは制御力を上昇させていたにも関わらずだ。それほど今回の魔法『空間断裂』は難しい魔法なのだ。
その分効果も高いが難点として空間ごと切断するという魔法の効果上、魔獣の損傷が激しくなってしまう。冒険者の依頼はただ倒せば良いと言う訳ではない。素材の採取依頼は勿論、討伐依頼であっても討伐証明のため色々と必要である。しかし規模が大きいこの魔法では、小型、中型クラスの魔獣では全身を呑み込んでしまう可能性が高い。この魔法を使用するならば、魔力消費と規模の調整が出来るようにならないといけないだろう。
(さて反省はこのくらいで良いか。目当ての品は出たのか?)
意識をドロップアイテムに向ける。メイリーが倒れる前に確認した所によると、今回の依頼の品である『宝珠』と1つの『箱』が落ちていた。ただ、何となく嫌な予感がしたメイリーは『宝珠』に『鑑定眼』をかけてみた。すると、
(『竜珠』か。一応、宝珠の仲間らしいけどこれはどうなんだ?と言うか宝珠に種類が有るなんて聞いてないのだが。)
何と宝竜からドロップした『宝珠』の派生アイテムである『竜珠』であった。普通の冒険者ならレアドロップに喜ぶ場面なのだが、メイリーとしては判断に迷う場面である。竜珠も宝珠であることに変わりはない。しかし今回頼まれたのは『宝珠』である。これを渡して違うと言われて依頼失敗になるのも面倒であった。
(まあまだ1ヶ月以上、猶予はあるしもう一度か二度、倒してこればっかりドロップするようなら諦めれば良いか。それで次は『箱』だが。)
『箱』とは迷宮攻略時の報酬のようなものであり、迷宮主を討伐すると確定でドロップする物である。初心者迷宮でも手に入れたがその時は大した価値がある品ではなかった。しかし今回はそれなりに高位の迷宮。『箱』の中身も期待が出来る。メイリーが『箱』を開けてみるとそこには宝竜を模したような首飾りが入っていた。
「『宝竜の首飾り』か、おお!魔法弱体化か。これがあれば宝竜の魔法弱体化の理論がわかるかもしれない。」
メイリーとしてはアイテム自体よりもそれによって、宝竜が使用していた魔法弱体化が使えるようになれるのではと期待するのであった。
今回の成果は上々であったが残念ながら目当ての品物かどうかの判断がメイリーにはつかないので、もう少し迷宮探索を続けることになったメイリーは、宝竜との激闘で更に力をつけ残り1ヶ月で2度の宝竜討伐を達成するのだった。




