急な呼び出し
テイルからの手紙には学院生活の近況報告がずらっと書いてあったので、流し読みしていくと本題に、明日の昼頃会えないかと言うことと、会う場所が書いてあった。別に明日は用事がないためメイリーも問題は無いのだが、もしこれで無理だったらどうすれば良かったのか。
(返事をした方が良いのか?でもテイルの住んでいる寮は関係者以外立ち入り禁止らしいし、どうすれば?…まあいいか。)
面倒になったメイリーは、取り敢えず明日、指定された場所に行ってみることにした。
翌日、指定されたお食事処に行くと、
「いらっしゃいませ。予約の方でしょうか?お名前は?」
予想よりも豪華な場所であった。そのためメイリーのような子供がいるには不釣り合いな場所であるのか、従業員も表情には出さないが、不振な目でメイリーを見つめていた。
「えーと、メイリーです。予約かどうかはわからないですがここを指定して来たのはテイル。テイル・ステンドです。」
その名前を聞いて、従業員が名簿のような物を確認し出す。暫くしてメイリーたちの名前を見つけたのか、態度が一変する。
「申し訳ありません。メイリー様でございますね。テイル・ステンド様はもうお部屋にいらっしゃいます。一番奥の個室ですので。」
「はぁ。どうも。」
メイリーとしてはテイルがこんな豪華な店に入れること自体疑わしいのだ。ガンルーやメイリーのお陰もあり、ステンド領はあそこら辺の近隣のまとめ役的な立ち位置となり、発言力も増したらしいが、それでも田舎貴族に違いは無い。その息子がこんな店を、疑問は尽きないが案内された個室に向かう。
少し警戒しているメイリーが空間把握を使うと部屋の中には5名もの人が存在する。テイルが侍女を連れてきていたとしても数が合わない。
(嫌な予感がするな。面倒ごとに巻き込まれる予感だ。)
しかしここで立っていても始まらないので、意を決して部屋の中に入る。するとそこにはテイルとテイル付きの侍女、そして見知らぬ少年と、それを護衛する騎士2名がいた。
「おお、メイリー。久しぶりだな。」
「お久しぶりですテイル様。まあ挨拶はいいのでこの状況を教えて欲しいんですがね。」
「そうか。まあまず座ってくれ。」
「はぁ、わかりました。」
護衛の騎手がメイリーを見た途端、警戒心を高めたようで煩わしい視線を放ってくる。少年の方も何故かかなり驚いた様子でメイリーを凝視していた。
「テイル様、此方の方々は?」
不躾な視線に晒されて居心地の悪いメイリーは、手っ取り早く用事を済ませようと考える。するとテイルは何故か答えずらそうに視線を反らす。
「えーとだな。」
「いいよ、テイル。君が信頼している師匠なんだろう。話そう。僕の名前はリュート。ファモール・リリア・リュートです。」
メイリーのように一般の市民は名前しか無い。そして貴族であるテイルには姓が存在する。そして更に名前が長くその姓が、ファモールであるという事を加味すると、この少年は
「王族か。」
面倒ごとが確定したのだった。




