テイルの入学試験 後
テイルとリュートが談笑していると、教員が訓練所に入ってくる。
「まさか満点合格者が2人も出るとは。数年に1人くらいしか出ないと言うのに。まあ今年は豊作と言うことなのだろう。こんにちは。テイル君とリュート…君。君たちは剣術と魔法。両方のテストで満点を取った。そのため教員との模擬戦をしてもらう。」
テイルが考えていた通り、首席合格者を決めるために呼ばれたのだろう。となると少し疑問がある。
「あの、筆記試験の結果は?」
「ふむ。筆記試験は一般での入試を受けようとする者を選抜するための者でこの学院ではあまり重視していません。基本的に貴族家の人たちには簡単な問題なので。」
テイルとしては違和感を感じる説明だったのだが、リュートは素直なのか納得する。
「そういうことなら。それで僕たちは貴方と戦えば良いのですか?」
「うむ。そうなりますな。では早速始めましょう。まずはリュート君から。」
教員の言葉でリュートが指定の位置に移動する。ただ、テイルが見る限り教員とリュートの力量差は瞭然であった。そのため直ぐに決着はつくと思ったのだが、リュートは意外にも善戦する。10分ほどの戦いを終えた。結局、リュートの魔力と体力の両方が切れたことによる敗北と言うことになった。
「はぁ、はぁ。魔力も体力も失くなっちゃったよ。僕は魔力量ならかなり、自信があったのに。」
「お疲れ様。それで、次は私でしょうか?」
「ふむ。そうだな。次はテイル君。やろうか。」
(リュートの体力は兎も角、魔力はかなりのモノだった。のにそれと戦ってまだまだ余裕そうってことはかなり、実力差があったな。なのに10分以上かけたか。)
おそらくは判定するためなのだろうが、違和感を覚える。
「それでは始め!『突風よ』」
自身で開始の合図を出しながら、すかさず魔法を繰り出してくる。先ほどのリュートとの戦いでは無かった動きであった。しかし不意打ちなど慣れているテイルは、回避を選択する。
「『跳躍せよ』」
「『矢よ、狙い撃て』」
上に逃げると即座に攻撃を放ってくる。しかし魔法矢ごときで今さら慌てはしない。
「『千の矢よ、撃ち抜け』」
「な、なに!」
回避行動を取りながら、魔法を行使出来るとは思っていなかったのか、自身の魔法矢を更に強力な魔法矢で打ち消され、そのまま飛来してくる魔法矢の対処に遅れる。
「ふ、『防げ、風楯』」
「遅い。『分かれろ、千の矢』」
風楯はテイルも良く使う魔法なので、その効果範囲はわかっている。そのため、その楯を上手く避けるように千の矢を誘導した。
「くっ、そ。」
「『炎槍よ』」
教員が吹き飛ばされる。それを見つつ魔法を準備しておく。すると、
「ま、参った。私の敗けだ。」
「そうですか。『解除』っと。」
教員が降参した。そのため、テイルも炎槍を解除するのだった。これにてテイルの勝利が決定するのだった。しかしテイルとしては不完全燃焼。納得していない。おそらく生徒という事で、教員はかなり手加減してくれたのだろう。テイルには使ってきたが、リュートには攻撃魔法を一切使わなかったのがその証拠であった。
「お疲れ様。テイル、教員を倒しちゃうなんて本当に凄いね。僕ももっと頑張らなきゃ。」
「ありがとうリュート。でも私ももっと強くならないと。師匠には到底追い付けないからな。」
「君ほどの腕前を持つ者がそこまで言う師匠か。会ってみたいな。」
新たに出来た友達同士の朗らかな会話をしつつ、テイルの首席合格が決定するのだった。




