テイルの入学試験 前
テイルはメイリーと言う師匠に七年間、基礎を学び自身でもしっかりと修行してきた。その習慣が身に付いていたため、剣術や教養の勉強などもしっかりと習得している。そのため入学試験に落ちると言うことは考えていない。しかしテイルの目標はただ合格するという事ではなく、主席合格なのだ。こればかりは容易ではないと考えていた。
(あいつは世の中には自分以上の術者がゴロゴロいるって言ってた。となると子供でも俺より魔法も剣も強い奴がいるかもしれない。でも負けられない。)
メイリーは単独での大型魔獣の討伐というトンでもないことをやってのけた。学院の入学試験で躓いてるようじゃメイリーに相応しい人間には程遠いとテイルは考えている。
「それではこれよりファモール国立学院の入学試験を開始いたしますので各人、準備をお願い致します。」
まずは教養の筆記試験。その後、剣術の型の試験と魔法の的当てとなっていた。ただ、剣術と魔法の試験で満点を取った生徒は教員との模擬戦があるという噂だ。
真偽はわからないが教員との模擬戦までいければ、首席合格に一歩近づくことは間違いないので、そうなれるように集中して望んだ。筆記試験は簡単であった。ティーチに、
「教養が出来ないのなら、メイリーの授業はお休みだ」
と言われて頭に叩き込んできた問題ばかりが出題された。剣術の試験も魔法だけではメイリーとの模擬戦についていけないため、鍛えていたので特に問題は無かった。
そして魔法の的当ての試験になった。
(的当ては確か、まず的に正確に当てる魔力制御を、そして次に的を撃ち抜く威力を見る試験だって言っていたな。)
「えーそれでは次、テイル・ステンドさん、お願いします。」
「はい。」
的当ては任意に魔法を選ぶことが出来る。そのためしっかりと制御出来る、低威力の魔法を選ぶか当たれば強力な高威力魔法を選ぶかも自由と言う訳である。そのためテイルの得意な魔法矢はこの試験に、あまり適さない気がしたテイルは、メイリーが良く使用していた魔法を使うことに決めた。
「『炎槍よ、敵を穿て』」
残念ながらテイルの炎槍は、メイリーのそれより一回り小さい。しかし12歳程度の学院生未満の子供用の的を粉砕するには、この炎槍(小)で十分であった。
これで試験は終了なので、入寮するまでの繋ぎである宿に戻ろうか悩んでいると、教員に訓練所に来るように言われる。
(これは噂は正しかったってことか。と言うことは首席を狙えそうだぞ。)
とほくそ笑みながら訓練所に向かった。するとそこには先客がいた。おそらく同年代だろう。と言うことは、彼も剣術と魔法の試験を満点で合格したことになる。
「こんにちは。君も先生に呼ばれて?」
「ああ、そうだよ。初めまして。ぼ、私の名前はテイル・ステンド。宜しく。」
「えーと、僕の名前は…リリア・リュート。宜しく。」
これが生涯の友となるリュートとテイルの出会いであった。




