王都へ
貴族や有力な家柄の子供たちが12歳になる年から通う学院。正式名称を『ファモール国立学院』は魔法や剣術だけでなく、一般的な教養。マナー、立ち振舞い。そしてこれから貴族となる者たちでコネクションを作り、領地経営をやりやすくしていく狙いもあった。
そんな学院に今年度からテイルも入学する。この学院にも入学試験が設けられており、魔法、剣術などの武術、そして教養の筆記試験が存在する。この入学試験は一応、誰でも受けることが可能となっている。しかし小さい頃から家庭教師などによって教育されている貴族の子供たちに混じって、普通の平民たちが合格することは殆ど無く、年に数名いれば多い方なのであった。
「僕、いや私ももうすぐ12歳だからな。メイリーの教えに恥じぬよう、学院の入学試験は主席で合格してみせるぞ。」
「はぁ。そうですか。頑張って下さいね。私は王都に行ったらまず組合に行かなきゃならないので、そこまでの付き添いになりますけど。」
魔獣増加もこの頃は殆ど沈静化しているため、テイルであれば小型魔獣程度なら負けることは無いのだが、ちょうどメイリーも王都に拠点を移すタイミングであったため、一緒に移動することになったのであった。
馬車での移動のためいつもより大分ゆっくりのペースであった。そのためこの機会を利用して望遠の魔法などを使って『地図化』のマッピングを進めながら進んでいった。
そして1日がかりで王都に到着した一行は、そこでひとまず解散することになった。
「それじゃあテイル様。何かご用がありましたら、冒険者組合にご連絡下さい。」
「わかった。私は学院の寮に入る予定である。学院は関係者以外の立ち入りは禁止しているから、用があるときは、手紙で知らせてくれ。」
「はぁ。まあほとんど無いと思いますけど。」
そう言い残してメイリーは冒険者組合に向かうのだった。しかしここがステンド領ならば兎も角、ここはメイリーを知っている者がほとんどいない、最初に冒険者組合に行った時と同じように面倒ごとに巻き込まれる気がしていた。しかし組合の受付カウンターには知り合いの姿があった。
「あれ?レレナさんじゃないですか?どうしたんですか?」
「あ、メイリーさん。お久しぶりです。雷虎事件以来ですか?メイリーさんの担当をしていたこともあって、この春から晴れて王都の冒険者組合に栄転になったんですよ。」
「そ、そうですか。おめでとうございます。」
何だか嬉しそうなレレナに疑問符を浮かべながら祝福の言葉をかけるメイリー。
「えーと、メイリーさんは今日は依頼を受けに?」
「うーん。今日は一応、様子見のつもりなんですが、良い依頼が有るのなら。」
「わかりました。それならこれなんかどうですか?」
レレナが居たことにより、周りには不審な視線を感じるが、予想よりもやり易そうだと感じるメイリーであった。




