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疑似転生記  作者: 和ふー
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暴風狼

 ステンド家で魔獣についての知識か掲載されている書物などを読んで、ある程度の知識は備えているメイリーであるが、旋風狼ですらそこまで詳しく載っていなかったのだ、その上位に当たる暴風狼などその姿絵と過去この魔獣が起こした被害くらいしか載っていない。

 しかし旋風狼との戦闘経験から暴風狼の特徴もある程度は予測することが出来る。攻防一体の風魔法で戦ってくるのだろう。そこで問題なのが、暴風狼の攻撃を防ぎ、防御を突破出来るかだが、あんまり自信は無い。


(奇襲で暴風狼を倒せないまでも傷を負わせられれば有利だけど、防がれると一気に不利になるな。正直、わかんないからあっちから狙うか。)


 暴風狼と自分の力量差が把握しきれない現状で、安易に暴風狼を狙うわけにはいかない。そのため標的は決まっている。


「『双なる炎槍よ、燃え盛り、敵を穿て』」


 奇襲と言うことを最大限生かして、高威力の魔法を唱える。狙うのは2匹の旋風狼である。しかし完全な死角からの攻撃だったのだが、魔獣としての野生の勘なのか迫り来る炎槍を素早く察知し、防御態勢に入る。

 旋風狼の風障壁に炎槍がぶつかる。本来ならば風によって炎槍は鎮火してしまうのだがそれは魔法の威力が同じ場合に起こる現象である。成長期であるメイリーの魔法力は、1年半前に戦った頃よりさらなる成長を見せている。そのためメイリーの炎槍が旋風狼の風障壁を上回る。すると風を取り込んだ炎槍がさらに燃え上がる。


「ガッル!」

「ガルルーー!」


 炎槍を防ぎきれなかったら旋風狼の1匹は貫かれ内側から焼かれ、もう1匹も重傷を負い戦えそうではない。奇襲は成功したかに見えた。


「ガァルルル!ガァー」


 配下を傷つけられた暴風狼が怒り狂った眼でこちらを睨み、攻撃してくる。その威圧感に驚きつつも、メイリーは冷静だった。


「『座標よ、換われ』」


 メイリーと1匹の風狼の位置が交換される。風狼は暴風狼の『暴風』を真面に食らいズタズタになりながら吹き飛んでいった。その隙に残りの風狼を始末しつつ暴風狼にも牽制の魔法を放つ。


「『炎槍よ、穿て』」

「ガァル!」


 仲間を自分の攻撃で傷つけている隙に攻撃したメイリーだが、暴風狼に簡単に防がれてしまう。おそらく魔法力的にはメイリーよりも暴風狼の方が上なのだろう。


(上手いこと取り巻きは倒せたけど、状況は絶望的だな。肉体的にも魔法力的にも相手が上か。)


 仕方ないのでメイリーは飛行魔法で相手の『暴風』を躱しつつ様子を見る。


(それにしてもほんとに天災って感じだ。触れる物全て壊していくみたいな。ん、それならアレを使えば。)


 何かを思い付いたメイリーは、回避行動を止め防御魔法を使い出す。流石にメイリーの防御魔法では完璧に防ぎきることは難しいが、攻撃をそらして当たらないようにすることくらいなら可能だった。

 

「ガァール」


 自身の攻撃を小さな幼子が防いでいる。暴風狼として群れの頂点に居続けた者として、そんな事実を認める訳にはいかない。苛立ちを募らせた暴風狼は自身の最大級の攻撃『嵐風』で仕留めることに決め、力を込め始める。 

 

「ガァー、ガァル!」


 今までの魔法とは桁外れの威力を持つ風の塊が飛んでくる。これは幾らメイリーが防御魔法を張った所で防げる類いの物では無い。しかしこれこそがメイリーの狙いであった。


「『空間よ、穴開き、繋がれ』」


 メイリーが発動したのは空間魔法『空間穴』

 本来なら長距離の移動用に使うのだが、メイリーの魔法力と魔力制御ではまだまだ使いこなせない代物である。そんな欠陥品も短距離ならば使い道もある。それがこの状況である。


「ガァッ?ガァルーー!」


 穴をメイリーの前方と暴風狼の後方に開けることでのカウンターである。メイリーの攻撃では不意打ちでも防がれてしまうが、自身のしかも最大級の攻撃ならば防ぎきれないだろう。案の定、暴風狼は直撃は避けたものの半身に莫大なダメージを負う。

 必死に睨み付けてくる暴風狼だが最早、攻撃魔法を使うのさえ難しそうだ。


「最期は風で『風刃よ、切り裂け』」


 暴風狼は自身の風魔法より数段劣る、風刃に切り裂かれ地に伏すことになった。


  

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