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疑似転生記  作者: 和ふー
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注目される一日

 週明け、『魔法演舞』の予選や凛の家でのお祝い、それに夜中までゲームをやっていたせいで、いつもよりも疲れた様子で登校してくる芽衣。それでも疲れてはいるがそこまで見た目に変化は無い筈なのだが、なんとなく周りに見られている感覚がある。最初は気のせいかと思ったが転生世界で魔獣狩りなどを経て、生物の視線には敏感になっている芽衣の勘違いとも思えない。

  疑問に思いつつ教室に入ると、そこまで親しくもない級友たちがわっと駆け寄ってくる。最初はぎょっとした芽衣だったがすぐに要件が判明する。皆が口々に魔法演舞予選のことを言うからだ。一応予選も、各県でテレビ放送されているらしいが、今までの人生でそういった類いを見たことが無かった芽衣としては、凛が前に言っていた通り、この学校がいかに魔法演舞に力を入れており、それ目当てでこの学校に来た生徒達が多いのかを目の当たりにした。


(まさか、私がこうして知らない人たちに囲まれる事になるとは。これが鈴さんの言っていた反響が凄いと言うことか。くっ、ストレスが。)


「どうだった?」だの「凄かったね」だの言われても、芽衣にとっては、久しぶりに遠出をして疲れた、くらいの感想しか無いので反応に困る。人見知りをする方では無いが別に他人とコミュニケーションを進んで取るタイプでも無いので、どう返事を返すべきか悩ましい。


「もう、芽衣が困ってるでしょ。散って散って。」


  そうこうしてると、人集りを掻き分けて登場した凛が助け船を出してくれる。そのお陰もあり、何とか自分の席に辿り着くことが出耒た。

  凛の発言で落ち着きを取り戻したクラスメイトがぽつぽつと質問してくるので、それらに返答していくと次第に満足したのか自席に帰っていった。ただ、朝のHRの時間となり、担任が現れると1度鎮火した熱が再燃してしまう。授業のたびに先生がその話をするため、その度に鎮火して熱が再燃してしまい、結局今日は一日中、人々に纏わり付かれるのだった。


  帰り道、もう芽衣はへとへとになっていた。  


(散々な一日だった。こんなことなら今日は休めば良かった。まあいい、今日もゲームで癒やされるしかないな。)


 疲れの一端にはゲームのやり過ぎによる寝不足もあると思うのだが、芽衣はゲームをやらないと精神的に疲れる芽衣にゲームをやらない選択しなど無いが。

  とそんな芽衣のもとに近づいてくる男がいた。


「あのー鹿島芽衣さんですよね。私、魔法技術研究所の杉本ですけど。少しお話良いですか?」


  彼が鈴が言っていた人事部の奴なのだろう。しかしへとへとの芽衣はそんな男に気付かない。


(もう今日は早く帰りたい。)

「あのー。聞こえてますよね。鹿島さん?」

(目立つから止めてたけど、どうせ目立ったんだし、いいか。)

「あのー!」

「『飛行せよ』」


  目立たないために控えていた魔法での登下校を今日だけ解禁する芽衣。取り残される人事部の杉本。

 

「あれ?今誰かに。まあ気のせいか。」


 飛び立った後漸く気がつく芽衣であった。

 

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