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疑似転生記  作者: 和ふー
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凛の変化

 『WMF』への出場を承諾した次の日、芽依が少し寝不足になりながら学校に登校すると、芽依を見つけた凛が駆け寄ってくる。


「芽依、遅かったね」

「少し珍しいゲームを入手したから、やり込んでいた」

「またゲーム。やりすぎちゃダメだよ」

「分かっている。…それより凛、何かあったか? 変な顔だぞ?」

「変じゃないよ! ちょっと話したいことがあってさ」

「話?」

「そう。じゃーん!」


  そう言って見せてきたのはとあるカードであった。


「『魔導塾生証』ああ何かたまにCMとかやってる塾か」

「そうなんです。C級ライセンス取得を目指して『魔導塾』に通うことになりました。イエーイ!」

「前までライセンスなどいらん、みたいなこと言ってたが心境でも変わったか?」


  前までの凛は、魔法競技や魔法そのものには興味を示しつつも、自身の魔法行使の向上にはそこまで関心が無いように見えた。この学校は魔法授業のカリキュラムが充実してるため普通に学んでいれば、卒業までにC級ライセンスを取れる生徒もそこそこいる。凛も取れるなら取りたいというスタンスであったため、塾に通ってまで取得するほどの熱意を持つとは思わなかったのだ。


「うーんとね。この頃芽依は凄い頑張ってるじゃん」

「凄く頑張る? ゲームをか?」

「ゲームもやってるけどさ! 『魔法演舞』とかさ」

「そうか?」

「そうなの! それでさ凄いなーと思ってさ。あんな風に魔法が使えるようになったら楽しそうだなーって。だからさ」

「魔法が好きな凛が魔法を頑張る。いいじゃないか。応援する」

「えへへ」


  ゲームのために魔法を頑張っている芽依からすれば、凛の言っている凄さについてはピンとこない。しかし、好きなもののために努力することには純粋に共感できた。


「そう言えば私も凛に聞きたいことがあったわ」

「え、なになに?」

「『WMF』についてなんだが」

「WMF? そういえばもうすぐ選考会だね。でも珍しいね芽依が関心持つなんて」

「ああ、何かそれに出場することになった」

「へー、出場か。じゃあちゃんと知っとか……ええぇ!!」


 凛は驚きの叫び声をあげた後、固まってしまったため結局『WMF』について聞くことが出来なかった。


――――――――――――――――――

 

  メイリーは、とある鍛冶工房に来ていた。


「それで、お前はこの土竜の素材を渡すから、剣を一本造ってくれて言いてぇーのか?」

「ええ」

「これらを使えばお前の持っている防具よりも上等な物が造れるが?」

「この装備に不満はないですから。思い入れもありますし」

「…ならこの素材でお前の装備を強化してやると言ったら?」

「それはお願いしたいですが…」

「なら最初っからそう言いやがれ! 俺が最高の装備を造ってやる! まあ金はたんまり頂くがよ!」

「では、よろしくお願いします」


  王都でも有名な鍛冶職人であるガンクツ。彼は腕は一級だが偏屈で頑固者。気に入らない相手には一切物を造らないことで有名であった。しかし何故かは分からないがメイリーはガンクツに気に入られたようであった。


「装備を預かるからな。そこら辺にある…これとそれとあれ。今、お前が着けてのに性能が似てる筈だ。適当に着ていけ。完成まで2週間ってとこだ。そしたらまたこい。分かったら帰れ!」

「分かりました。では」


  メイリーがここに来たのは、ガンクツ作の装備を街で見かけたためであった。断られる事も想定していたが、思ったよりもすんなり受け入れて貰えた。


「紅鬼が来るとしたら装備を変更中の今かな? 最近、探るような視線も増えたしそろそろ決着をつけたいが」


  予定とは違うが装備を軒並み変更中であることは、紅鬼側にも伝わるだろう。まだ諦めていないのであれば襲撃をするチャンスと思うだろう。

  メイリーとしては前のように突然襲撃されるよりも、襲撃の時期を絞れる方がありがたかった。

  そしてメイリーが予想した通り、紅鬼がメイリーの前に現れたのは装備を変更して3日後の事であった。


  

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