囲まれた
秘密組織っぽい集団だっただけに『ヴィルディゴ教団』に関する資料は殆ど見つからなかった。ただ、今回の計画書やこれまで行ってきたことの報告書は何点か見つかったため、それらを持って彼らを近くの警備隊に突き出すことにした。
転移で近くの街の警備隊に彼らをお任せした後、クロウとマーメを回収し商人の家に戻る。商人たちはメイリーの『睡魔』は解けていたが、未だにソーマの精神干渉からは抜け出せていなかったようで街から逃げるの一点張りであり、神聖魔法で精神干渉が取り除かれようやく落ち着きを取り戻すのだった。
「まさかソーマが…そうですか。何にしても竜討伐お疲れ様でした」
「別に大したことはない。それよりこれで依頼は終了でいいですか?」
「え、ええ」
「なら私はもう行かせてもらいます。やらなきゃならないことができたので」
「ま、待ってくだ…」
メイリーが狩った竜の素材のことや、精神干渉された村人の回復など、交渉したいことがあった商人だったが、止める間もなくメイリーは転移してしまったのだった。
しかしその後、村人や「バスディ」に掛かっていた精神干渉は解かれた。警備隊に収用されていたソーマたちの変死により。
それをメイリーが知ることになるのは少し先の話である。
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ゲームから戻ってきた芽依は自身の端末の着信が凄いことに気がついた。
芽依にこんなに連絡してくる相手は決まっているので、その人物に電話を掛ける
「もしもし!」
「凛、何? 一回電話して出なかったら私はゲーム中だと何度も言っているだろ?」
「それどころじゃ、ニュース見た?」
「ニュース? 何? 新作ゲーム?」
「違うよ! 取り敢えず魔法ニュースのトップページ見て!」
いつにも増してうるさい凛に辟易しつつ、言われた通り『魔法ニュース』というなんの捻りもない魔法情報サイトを開く。すると
「あれ? 私だ」
そこのトップページには芽依の写真が大きく掲載されていた。内容は学会に出た芽依が一ノ瀬博士と二人で会談したという内容であった。
「これが?」
「これが? じゃないよ。一ノ瀬博士は魔法の第一人者なんだよ。しかも博士は講演とかの仕事以外、ほとんどを研究に費やしているから、メディアに露出しないし、親交を持とうとしても持てないって噂なんだ」
「ボッチですね」
「そうじゃなくて。博士と二人で会談って凄いことらしくて…今、記者が!」
記者という言葉で嫌なことを思い出した芽依は、慌てて外を確認する。すると外にはカメラを持った輩がうろうろしていた。
「うげ」
「やっぱり記者が来てるの?」
「来てるな。面倒だな」
一ノ瀬博士は基本的にメディア露出しないため博士と、しかも学会後に会談した芽依に取材の目が向かれる形になったらしい。
「向こうだったら『睡魔』で眠らしてやるのに」
「だ、駄目だよ!」
芽依はここが現実であることに絶望するのだった。




