違和感の正体
クロウとマーメには彼らの元々の活動場所に転移させ少し調べものを頼み、ヨハンには護衛の中にいる裏切り者を炙り出すための仕掛人を頼んだ。そして頼み事をした張本人は悠々と狩り場を進んでいく。三人に頼み事をしたのは1つは証拠を確保して『バスディ』を潰すためであり、もう1つは自身の推測を確定させるためであった。
始めメイリーは、何人もの人たちが生後数ヶ月にも満たない赤ちゃんを連れて教祖を囲む様に強い違和感を感じた。それは子供の年齢であった。メイリーが幸運の魔法で商売していたとき魔法を掛ける子供はもうすぐ5歳になるという子ばかりであった。対して『バスディ』は生後数ヶ月。『バスディ』が活動を始めてまだ数年。正確にはわからないが2年ほどらしい。何十年もの歴史があり生まれてすぐ誕生日を決めてもらう慣習がある宗教なら兎も角、新興宗教ならもうすぐ5歳になり藁にもすがる親がいてもおかしくないのに、全員が生後数ヶ月というのは奇妙だ。このことから2つの事が分かる。
(1つは教祖のスキルか何かで誕生日を決められるのは生後まもない子供に限られること。どこまでが限界かはわからんが。もう1つはそれを信者たちに公表してることか)
そうでないならばもっと年齢がバラバラになる筈であるし、何歳でも誕生日を弄れるならば態々、生後数ヶ月の赤ちゃんを連れ回すリスクを犯す必要もない。それに気づいたとき漸くメイリーの違和感の正体が判明する。
メイリーの幸運の魔法が商売になり得たのは姉が実際に良いスキルを手にし他の人も成功したこと。そして極めつけに領主の子息でも成功したためである。成功例がありそれが領主の子息である。そのネームバリューによって商売になり得たと言える。実際に物が有るわけではないこういった商売どは成功例が、それも身内であったり知り合いであったり、有名人などの成功例であれば信憑性が増す。逆に何処の誰かもわからない人物が「これは凄い」と言ったところで皆やろうとは思わないだろう。
そう考えると『バスディ』はおかしい。『バスディ』の教祖はおそらく1歳未満の子供の誕生日を決定することしかできない。そして『バスディ』がこの村で活動し始めたのは2年ほど前。そしてスキルが授けられるのは5歳。つまりこの村に住む人たちで誕生日を授かったことにより良いスキルを得たという成功例がまだ無い筈なのだ。なのにこの村で『バスディ』が根付いている。そこでメイリーたちを陥れた精神干渉スキルが出てくる。
(でも実績も何もない宗教にのめり込ませるほどの強制力はそいつにも無いはす。なら多分成功例自体はしっかりとあるはずなんだ)
結果が出てから入信するならまだしもまだ何も実績がない団体に所属させることができるなら、誕生日云々など必要ないことになるため信者の中に実際に成功し子供が良スキルを得た人がいる筈なのだ。つまり『バスディ』自体は5年以上活動してると考えられる。
(見ず知らずの人の成功例だと信憑性は低いでしょうが精神干渉スキルを使えばそれくらいの足掛かりで十分になる。そしてそんな団体の重要人物を商人の護衛に紛れ込ませたということは…)
団体の作戦の鍵が商人ないしマーメである証拠と言えるのではないか。となると『バスディ』は最強の魔獣を生み出そうとしてた危険団体となる。そしてそんな作戦を単なる一宗教団体が実行するとも思えない。
(精神干渉スキル持ちが一宗教団体の幹部程度で甘んじてるとも思えん。なら黒幕がいるかもしれないな)
という考えに至ったメイリーは情報収集をクロウとマーメに、黒幕を含め一網打尽にするための作戦の開始をヨハンに任せたのだ。
「さて、竜を倒したら作戦開始だな」
ひょんな事からメインディッシュが増え昂ってるメイリー。これを相手にする竜が少し可哀想になるくらいの高揚っぷりであった。
メイリーが違和感、違和感言ってたことを解消する回ですね。話は全く進んでませんが




