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疑似転生記  作者: 和ふー
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不可思議な竜

気を取り直してメイリーたちは狩場に入っていく。竜の発見現場まではまだまだ先とのことだが、警戒するに越したことはないのでと、空間把握で周囲の様子を視ながら進んでいく。すると商人が心配していた通り狩場は酷い有り様であった。


「魔獣の数が多すぎる。これで氾濫が起こってないのか。こんな浅い場所に中型魔獣がいるって」

「そんな強敵を息するようにサクサク殺すなよ。悲しくなるだろ!」


暴風狼などの化け物を除けば中型はCランクの適性であるため、クロウたちでも倒せない敵ではないがそれなりに苦戦する相手なのだ。それを戯れのように葬るのを見ると格の違いがよく分かる。しかも10歳に満たない少女が行ってるのだ。元Cランクの立つ瀬がない。


「ただこれくらいが打ち止めかな? 流石の竜も大型魔獣の縄張りに入ってくるほど馬鹿じゃないか」


本来なら奥に進むほど強い魔獣が出てくるのだがここでは出てくる魔獣は似たり寄ったりである。おそらく竜と競合する奴は竜に食われ、そこから逃げ出した中型下位連中がさらに弱い魔獣を食い滅ぼしたのだろう。


(氾濫直前の状況に類似してる。これが『バスディ』の思惑で成されたんなら村を滅ぼしたいのか? これは竜を倒したとしても解決しないぞ)


メイリーには理解できないが何らかの意図があるのだろう。


そうこうしている内に竜を見かけたと言う場所にたどり着く一行。そこには小さな洞窟があった。竜が洞窟に住むと言うのはそれなりにある話であるがいささか小さすぎる気がする。聞いていたサイズから考えると出入りするのにギリギリの大きさしか無いように見える。


「あれか?」

「ああ、確かに入り口は小さいんだが中はそれなりに広いらしい」

「らしい?」

「マーメの探知魔法とヨハンさんが潜入したのを聞くとな」


そう言われて空間把握で洞窟内を視てみると確かにかなりの広さである。これならば竜も生活できるだろう。しかし肝心の竜がいない。マーメも同様の探知結果を得たようで困惑している。


「竜が外を出歩いていてこんなに静かな筈が無いと思うが。何処かに行ってる? でも何処に?」


メイリーは考える。竜がここら辺を闊歩しているならば魔獣がメイリーたちに襲い掛かって来ることは無いだろう。するともっと遠くにいるのだろうか。そう結論づけそうになった時、メイリーはあることを思い出す。


「この洞窟の構造。入り口は狭く中は広い。確か…やばい!」


メイリーは慌てて洞窟を対象としていた空間把握を地中へと切り替える。メイリーの考え通りだとあの洞窟は自然発生的にできたモノではなく、竜自身が掘ったモノだ。そしてそんなことをする竜はメイリーの知る限り一種類しかいない。


「何が…」

「土竜だ。多分地中に…いた!」


土竜の怖さは地中からの奇襲にある。ほとんどの冒険者が気が付かない内に死を迎える。今回もそうだった。

メイリーが感知したタイミングと土竜がこちらを補足したタイミングはほぼ同時だった。土竜は地中深くから急加速でこちらに突っ込んでくる。ただメイリーだけならばこれに対処するのは難しくない。メイリーの前では土竜の奇襲性は効果が薄いのだ。しかし土竜の襲来を2人に伝え、それに備える時間を確保するのは流石のメイリーでも出来なかった。


「下、土竜、来る!」

「何? くそ!」


地面からの強襲。前衛職のクロウが辛うじて回避行動に移す。しかし


「え、うそ。ほん━━━」


マーメは録な反応もすることができず地面から現れた土竜に飲み込まれる。突如の展開に残された2人も呆然としてしまう。そしてクロウは先ほどまでマーメがいた場所と地面から出てきた土竜の口元につく赤い液体を見比べ正気に戻り、また正気を失う。


「マーメ。まーめーー!」


叫ぶクロウ。そのお陰でメイリーも我に帰る。そして土竜目掛けて魔法を発動した。


「『空間断裂』」


マーメを助けるには一撃で土竜を殺すしかない。最悪、生きてさえいればメイリーの『神聖魔法』で応急処置はできる筈だ。そのためには詠唱している猶予すらないため詠唱破棄での『空間断裂』を発動する。流石のメイリーもこれほどの大魔法を詠唱破棄で行えばただではすまないが、そんなことを言ってる暇は無いのだ。

土竜もいきなり反撃が飛んで来るのは予想外だったのか直撃を食らい下半身が見事に削られ消失した。


「消耗が…おいクロウさん。マーメさんを!」

「ああ!」


色々起こりすぎて逆に冷静になったのか、クロウはすぐに竜の上半身に駆け寄る。いや駆け寄ろうとした。そして驚きの光景で再度、動けなくなる。


「クロウさん!」

「嘘だろ。そんな!」

「クロウさん。何してん…」


メイリーもその光景に言葉を失う。削りとった筈の竜の下半身が再生しだしているのだ。ものの数秒で血は止まり肉が再組成される姿は上位の神聖魔法を掛けられているようだ。少なくともメイリーが持つ『自動回復』を遥かに凌ぐ回復力である。

それを見て絶望したのかクロウは膝をつき泣き叫ぶ


「マーメ、マーメ、マーメ!」

「こんな特性が土竜にあるなんて…」


泣き崩れるクロウを尻目に思考するメイリー。土竜であることに疑う余地はない。ならば別の要因で再生能力を得たと考えるのが妥当だ。しかしそんな能力を得られる心当たりがメイリーにはない。

するとクロウがポツリと呟いた。


「マーメが俺以外に…」


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