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疑似転生記  作者: 和ふー
114/150

魔法学会 前

魔法に携わる者たちの中でも第一人者たちが集まり、魔法関連の最先端技術が公開される『魔法学会』の会場に芽依はいた。学会では各研究者や企業の発表ブースを入場者が自由に回れる会場と著名な研究者たちが魔法についての講演や研究内容、新商品などを発表する会場に別れており諸事情により学会に来た芽依としてはVRコーナーを中心に散策していたかったのだが、『魔法演舞』の優勝者としての特別招待枠の芽依は多少の希望は聞いてくれたが、ほとんどが事前にスケジュールが決まっており魔法開発や『箒』の研究ブースを中心に見て回ることになった。


「此方が空間魔法を主に開発している多々良開発所のブースですね」

「そうですか」

「…空間魔法は私生活の充実だけでなく災害時など幅広い利用が考えられる魔法です。多々良開発所はここ数年で幾つもの新魔法の開発や空間魔法特化型の箒の開発など実績を残してます」

「そうですか」

「…はい」


露骨に不満そうな芽依だがこれに困惑しているのは案内をしてくれている係の人だ。魔法開発や箒開発部門は例年かなりの人気を誇っておりそれらのブースを見て回ったり解説を十分に聞くことは難しいほどなのだ。しかし魔法演舞優勝者はみんな当然のようにそれらの見学を希望する。多少の思惑はあるが事前にスケジュールを決めておく、つまり予約しておくのは特別招待者に人気ブースを優先して見て貰おうという善意に他ならない。彼らも魔法演舞優勝者なのに魔法にそれほど興味が無い芽依のような人を想定していない。

ただ芽依にも言い分はある。


(確かに色々な魔法があって面白いが、基本的に汎用性重視で誰でも使えるレベルにした結果効果が弱まってたり、理論的には発現可能ってだけの実験途中で実用性度外視の魔法だったりが多いな)


そもそも魔法が現代に現れてからまだそれほど時間が経っていない現状、魔法研究はまだまだ手探り状態のところも多い。そして芽依は転生世界では魔法の開発や改良もしている。メイリーの場合、自身の制御能力や魔力量によるゴリ押し感が強い素人研究だがそれなりに成果も出ている。部位欠損を直せる回復魔法『神聖魔法』などはその典型だろう。これを今、発表すれば芽依のところに参加者が殺到するだろう。

また芽依が求めている魔法はゲームで、異世界で使える魔法だ。一方この世界で研究されている魔法は科学が発展した現代に即した魔法だ。つまり既存の科学技術に魔法を組み込むという取り組みが多いのだ。そのため芽依は興味が引かれない。


「それでは次は鹿島様が希望されたVR部門に行きましょうか。その後は一ノ瀬博士の講演ですね」

「分かりました。楽しみです」


その言葉にようやく芽依がちゃんとした反応をしてくれたため係の人もほっと胸を撫で下ろすのだった。

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