魔法講師就任
領地が保有する戦力は、2つの種類が存在する。1つは領主が雇っている騎士たちである。これを貴族騎士と言う。彼らは領主に仕えており領主が好きに動かせる戦力となる。もう1つは国家騎士と呼ばれる騎士たちで、彼らはこの国の王族に仕えて、王都だけでなく各地で治安維持を行っている。彼らの命令権は王族にあるが各地に派遣されている騎士たちについては命令権を、王族から領主に貸し与えられているのだ。
そのため、領主の戦いとは自分自身が前線で剣を振るったり、魔法を唱えるのではなく軍団を指揮することが主となる。勿論自衛のため剣や魔法を習うし、12歳になると学院にも通うらしいが貴族、領主として評価されるのは指揮力なのであるそのためテイルの得たスキル『統率』はまさにうってつけのスキルなのであった。
そして功績を残した者は他人に妬まれるものである。そんなとき他者を蹴落とすために用いられるのが暗殺であり、暗殺の手段の1つである毒も、もう1つのスキル『毒無効』で防ぐことが出来る。『統率』を保有し騎士たちに守られている貴族を害する可能性のある毒を無効に出来るこのスキルはテイルにとってかなり魅力的である。
そのためメイリーの仕事は完璧に近く、成功したのだが、成功しすぎてしまった。メイリー自身も運気を扱う上で微妙な調節などは困難であり、中途半端に発動して失敗するよりも、成功するように全力を尽くしたのだがここまで成功してしまうと領主が放っておいてくれないだろう。
「まさかこれほどの結果を示してくれるとは。成果に見合う報酬は用意させて貰う。しかしすまないが少々想定外であったから報酬はしばし待たれよ。それで相談なのだが、テイルの魔法の講師としてメイリーを雇わせてはくれぬか?」
「は、え。しかしメイリーはまだ1歳の幼女でありますし…テイル様の講師など務まるとはとても…」
「ふむ。いや講師とは言い過ぎたかな。なに、昨日の一件でテイルがメイリーの事を気に入った様子であったからな、一緒に学べば勉学にも励むだろうとな。勿論、給金は支払うぞ。」
「は、はあ。」
ラカンは困惑した様子であった。メイリーにとっては対してメリットは無い。そのため断ろうとするが、その様子を察知してかティーチは、
「我が家にはそれなりに魔法関連の書籍もそろっておる。この話を受けてくれるのならば、これらは自由に読んでもらって構わないが?」
メリットを示される。
(貴族家の保有する本が読み放題か。悪くない。悪くないがめんどうだな。それでもこのファンタジー世界で生き残るには、女性の私は体を鍛えるのも限度があるし、魔法の向上は必須。しょうがないか。)
「期限はいつまででしょうか?」
「そうか。そうだな。本格的な勉強は12歳から学院で出来るだろうからそれまで、と言いたいところだが、まあまず様子見で1年。経過を見てまた期限は決めよう。どうだい?」
「分かりました。」
メリットが有るだけでも良いかと自分を納得させたメイリーは、静かに頷くのだった。




