表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/53

6

短い眠りの中で、私は夢を見た。



□■□



6時間めの授業が終わって、私はぐーっと腕を伸ばす。斜め前に座る友達の肩を叩いて、くだらないおしゃべりが始まって……

「そういえば、×××××がいつも言ってるあの漫画、何だっけ? 今朝、本屋に並んでたよー」

長い付き合いなのにちっともハマってくれない友達に言われ、私はニヤッと笑う。

「そうなんですよー、今日は『王国と炎』の12巻が発売されるんですよー。これを機に読んでみない? 全巻うちにあるから!」

「いやー、私、複雑な話はちょっと苦手なんだもん! 分かりやすい学園ものの方が好きだな。あ、そうそう、今度、実写化されるやつがあるからそれ読んでよー」

友達が挙げたのは、イケメン転校生と主人公、その幼なじみが繰り広げるラブコメを描いた、いわば王道の少女漫画だった。

「えー、『王国と炎』も面白いから!今、めっちゃいいとこなんだよ?」

なになに、と一応聞いてくれるのが、彼女のいいところ。私は気をよくして答える。

「王家の家系図が出てくるシーンがあったんだけど! そこにはやっぱり枝分かれした家とか人とか、どこに嫁いだとか、何て爵位をもらったとかも書いてあってね」

そーゆーのが難しいんだよね、と笑って、続きを促してくる友達。

「それで、どーしちゃうの?」

「その家系図の端っこに、結構昔の、グレース・ニコルっていう第17王女がいてさ。その人ね、実はあの人の家系図にも書いてあった名前だって……私、気づいちゃったの! つまり、あの子も王家の血が入ってるんだよ!」

「第17王女ってマジか……。で、あの人って誰なのさ?」

それは、と私はドヤ顔でタメを作る。


「それはね! ×××××、だよ!」


「え、誰だっけそれ……聞いたことはある気がする」

「ひどい!主要キャラよ?」

…………反応イマイチの友達に、私は嘆息するのだった。





□■□




目を開けると、自室のベッドの上だった。誰か運んでくれたのかな……ごめんね。

さっきの夢は、もう思い出せなくなっていた。ぼんやりと、前世で高校に通っていたときのことだというのは覚えている。

私は、あの世界では既に故人。

だれかが悲しんでくれたかもしれないーーそう、よく話していたあの子とか、家族。もしかしたら、部活のみんなも多少はそうかもわからない。


……今度こそは、天寿を全うさせてもらいたいものだ。おばあちゃんになって、孫を甘やかすとか、やってみたい。

「そのためには、やっぱり火事を防がなきゃ」

決意を新たにしたものの……どうすればいいかは、よく分からないままだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ