実地訓練
感想、ブクマいただきました。誠にありがとうございます。
1話は説明ばかりでつまらないものになってしまったので、これからガンガン動かしていきたいと思います。
薄暗い石の回廊。水の滴る音が木霊する。俺たち第7部隊は大迷宮を進んでいた。
4人で1組となり、課題のクリアを目指す。クリア条件は第4階層のどこかにいる教員を探し出すことらしい。尚、教員は階層内を移動しており、見つけ出すのは容易ではない。
実地訓練の部隊決めは完全なランダムだった。シオンと一緒になれたのは素直に喜ばしい事だ。彼女は俺を見下さない。他の2人も蔑んだ目線は寄こさなかった。内心どう思っているのかは知る由もない。
この部隊はなかなかに攻守の均衡が取られている。前衛、中衛、後衛が1人ずつ、治療師が1人の構成だ。俺は前衛しか出来ない、使い込んだ両刃の剣を1つ、腰に吊っている。中衛の男子は槍を装備しており、全体の補佐が出来るようにと常に周りに警戒していた。後衛はシオン。シオンは魔法が使えるため、小さな短剣とローブで身を固めていた。治癒師の少女は自衛の為に盾を装備している。何故かビクビクと震えていた。
1層に入りすでに1時間程が経っている。まだ魔獣には出会っていない。そろそろ頃合いか、と警戒をしていると男子候補生が声を上げた。
「なあ、そろそろ集中力も限界だ。一休みしないか?」
「……そうだな、一回休憩を入れるか」
辺りに弛緩した空気が流れる。一時休憩という言葉が緊張を和らげていた。
足を止め、後ろを振り返る。皆が緩んだ表情をしていた。前から見るという行為をしたおかげでソレにいち早く気付く。
「――ッ!」
列の最後方ににいた治癒師の少女、そのすぐ後ろに魔獣の影ッ――。
途端に思考が加速する。景色が引き延ばされる。視界から色が消え、灰色と化す。
少女の後ろにいるのは四足歩行型の魔獣、地から足は離れ跳躍している、前足が首元に迫り、今にもその柔肌を切り裂かんとしていた。
クッ!間に合えッーー。
瞬時に右手を照準、体内の魔素を励起させる。俺特有の紫色をした魔素が周囲に舞う。光の粒子は右手に収束し、手のひらに雷光が煌めく。
「雷よッ!」
ズガァンッ!
少女の頭スレスレを迸り、首元に迫っていた前足を消し飛ばす。ようやく魔獣の正体に気付いたシオンと少年だったが、もう遅い。
ドサ、と倒れる音が2回分木霊した。1つは魔獣の、1つは少女のだ。少女は大きく目を見開き、呆然としている。すぐにそばまで駆け寄る。周囲を警戒しつつ容体を訪ねた。
「大丈夫か……?」
「へッ?」
今度は間抜けな声が木霊した――。