第9話 純白天使の決意
アントとの激闘から数時間経過した後に一旦王国へと戻る事にしたレミリアとタスキ。
妙に騒がしい城の内部に疑問を持ちながらも王の間へと足を踏み入れる。
「お前……っ!」
「あ。っかーり。まじ暇だったんだけど、終わったの?」
「あ、ああ。じゃなくてなんでここに」
そこにはタスキをこの世界へと送り込んだ天使の姿があった。
あの空間では大して思わなかったが、この世界に順応してから改めて目にするとどこか神々しくも感じた。
「ミカエル様が送り込んだ英雄ならそう言ってくれればよかったものを……」
「ミカエル様……?」
「あんたがここに来たのは偶然でも何でもないし」
「なんかお前初対面の時と話し方違くないか?」
「本来のうちはこんな感じだし、その辺気にしてたら疲れるよ? そんで話戻すけど、うちはこの国の守護天使なの。だからうちに選ばれたあんたはここに転送されたってこと。ついでにうちの仕事は2つ。まずは神様に選ばれた英雄候補から相応しい者を選んでこっちの世界に送り込むこと。もう1つはあんたのサポート」
「そんでサポートしに降りてきた、と」
「そそ。話が早いね。まあ当然うちはここの守護天使だから王様とは面識もありありって感じで話をつけといたわ」
ウインクをしながらいぇーいとダブルピースをする姿が妙にイラつくのはタスキ自身がこの手のギャルに拒絶反応を起こしているだけだろう。
「もう試練の事はいい。時間をかけ、ゆっくりと魔王撃破を」
「それじゃダメっすよ。アントって奴は倒しました。次は幹部を倒します。少なからずこんな所でヘタれるようじゃパンツを守れたりしなっすよ」
「まあ、そうなんだけどさ。とりあえずヒメっちがあんたを呼んでるからさ、行って来なよ」
「ヒメっ……ヒメリアの事か。なんで俺を……」
タスキが呼ばれてる理由に検討がつかず眉をひそめているとミカエルは耳元に顔を近づけタスキ以外には聞こえないように囁く。
「話つけといたの。あんたの能力的にヒメっちのパンツもあった方がいいでしょ」
「お前……」
「なんだし」
「クソ天使とか思ってたけど神だったんだな。今までの非礼は詫びとくわ」
「本当、いい性格しすぎ。」
「褒められてると思っとくわ」
ミカエル達を後にし、ヒメリアの自室へと足を向けるタスキ。
ヒメリアの使う魔法によっては大きな力になりえない。何よりあの純白のパンツ。それも脱ぎたてが手に入ると思うだけでタスキは胸踊らせていた。
×××
「おまたせしました、お姫様!」
「生きておられたのですね、タスキ様」
「そう簡単に死ぬタマじゃないですよ」
「ミカエル様から伺いましたわ。その……タスキ様は女性の脱ぎたての……パ……がないと能力を使えないんですね」
頬を赤らめながら聞こえるか聞こえないかくらいの声でパンツと口にするヒメリアの可愛さは言うまでもなく、タスキは数秒時が止まっているような状態だった。
「あ、え、はい。そうなんです、脱ぎたてのパンツがないと俺は力が使えないんです」
会話自体もかなりシュールな状況だが、これを男女二人きりの部屋でお互い真面目な顔で話してる光景はシュールなんてものじゃない。
「では、その……私の……じゃダメです……か?」
スカートの横から手を入れパンツに手をかけながら頬を赤らめ涙目の状態で、上目遣いをされた挙句少し震えている彼女の姿をもう少し見ていたいと思いもしたが、タスキは1度その行為を中断させる。
「2つ程伺いたいのです。1つは姫様はどんな魔法をお使いに?」
「え、魔法ですか。私のモノなんて皆様を支援する程度のものです」
「(下着共鳴しても俺が使うには意味ないが上乗せとして支援してもらえるなら心強い、か)」
「もう一点は一体……」
「俺にパンツを貸す、という事は姫様にも着いてきてもらう必要が出てくるんです。とても危険です。出来る限り守りたいんですが、守りきれるか……」
「心の準備はとうに出来ていますわ」
大きすぎず、かと言ってないわけではない丁度いい胸の膨らみの間に右手を添えるようにして、真面目な顔でタスキを見つめるヒメリア。
「準備って……?」
「私はタスキ様のためなら死ねます」
「……結婚しよう」
「え!」
「あ、すいません。返答を間違えました。いや、間違えではないんですが、けど命なんてかけたらダメです。俺は姫様を守るためにいます。あなたに死なれたら意味がないのです」
「でしたら、私はタスキ様のために命をかけます。だからタスキ様も私を命懸けで守ってください。そうすればどちらも死んだりしませんわ」
「それもそうですね」
×××
「それでは、お主とミカエル様、レミリア、ヒメリアで幹部を倒しに行くと?」
「はい。無理を言ってるのはわかります。ですが、俺も含めこのメンバーの誰1人として欠けさせずに帰ってくる事を誓います」
「何をいまさら……ミカエル様もいる。わしとてアントとやらを倒した時点でお主の実力は認めておる。何よりお主は英雄なんだ。こんな所でしくじったりはしないだろ」
「もちろんです」
自信に満ち溢れたその表情に誰も水を差したりはしなかった。