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第8話 ツンデレ美女の優しいご褒美

「さっきまで勝てる気しなかったのに……。今は見える、この虫の動きが予測できる!」


レミリアはどんな死角からの攻撃も容易く躱し、徐々に的確に反撃をする。

彼女はA級を1匹倒すのがやっとだった自分の記憶からは想像も出来ない自分の力に驚きと興奮を隠しきれなくなっている。


「これなら私だって、あいつと同じレベルに……いいえ、あいつ以上に戦える! (なんて言ってもあいつは私より凄いところに行ってるんだろうけど)」


自分に飛びかかる1匹を軽く避け、その先で待ち伏せていたもう1匹の頭を一突き。

そしてスキができるはずだったレミリアにスキができず飛びかかろうとしたもう1匹が体勢を崩した所を一突きで終わらせる。


「わかりやすすぎよ。出直しなさい、虫けら。……ふぅ。こっち終わったわよ。さっさと終わらせてパンツ返しなさいよ、バカ」


×××


「もう1発だオラァ!」


「黙ってやられるアント様じゃないわぁ!」


アントの持つ槌を腹部にくらい軽く飛ばされるが、体勢1つ崩さないタスキ。

その力強さは以前自分と戦った時のものとははっきり違うことをアントも気付き始める。


「フッ、なんだそのヘナチョコ攻撃は。全然効いてない、ふごはっ」


タスキはセリフを言いきるや否や大量の血を吐き出す。何度も言うようだが、タスキの骨や肉、内蔵などが格段に鍛えられたりはしていないのだ。


「……」


「……」


「めちゃくちゃ普通に効いてんじゃねぇか! 愚かな人間め!」


「効いてねぇよ! 空気読めよ! クソ小者アリが!」


「んな義理はねぇだごはっ!」


アントが言い切る前にアントの右頬へと強烈なストレートをお見舞する容赦ないタスキ。

パンツを握ってるだけでも男として汚れきっているのに、戦い方も人としてとことん汚い。


「不意打ちとは……下等な人間に相応しいな! キャシャシャシャシャ!」


「てめぇこそ、不意の反撃とは小者のアント様にはピッタリだ」


「誰も反撃しねぇとは言ってねェ!」


「そこは空気読んで反撃しないもんだろうが! その辺学んでから敵やり直せ小者!」


「クソガキィ……っ!」


度重なるタスキの無礼な発言に、プライドの高いアントは怒り、脇腹、後頭部、顔と槌で怒涛の攻撃を仕掛ける。


「だから、効かねぇんだよ……」


頭からも鼻からも口からも血を流しながら言うそのセリフに説得力はもはや存在していなかった。

だが、タスキも無意味に殴られていたわけではない。

タスキは右拳にぐっと力を込める。そこから放たれる威圧感に危険を感じたアントは避けようと後ずさりした瞬間身動きが取れない事に気付く。


「これ、は……っ!」


「集中しないと難しくてな。一方的に殴られるしかなかったんだ」


アントの足元は氷により固められていた。

下着共鳴(おパンツリンク)は意識だけでなく魔法の共有もされるのだ。

それによりレミリアの得意とする氷魔法を扱えるようになったタスキが考えた作戦がこれになる。

身動きの取れないアントに渾身の一撃を打ち込む。


「覚悟しろ、俺はこれでお前との決着をつける!」


「……キャシャ。キャシャシャシャシャッ! いいだろう、このアント様がその攻撃受けてやる! そしてお前の無力さを痛感させてからじわじわと痛ぶり殺してやっぐごふぁっ!」


またもやアントがセリフを言い切る前に容赦ない一撃をアントの腹部へと打ち込み。

その威力の凄まじさからアントの足元を固めていた氷を砕き、アントがかなり後ろへと吹き飛ばされていた。


「だから……最後まで言わせろ……下等な、人間……め」


「本当の正義のヒーローってのは勝つためなら何でもするんだよ。パンツ借りるために必死に頭下げることも、当然不意打ちもな」


アントがその場に倒れ込み意識を失ったのを確認すると今まで引き締めていた気持ちが急に緩み体から力が抜けその場に倒れ込む。


「(あちゃー。もう体動かねぇや。パンツ返しに行かねぇとなんだけどな……。一眠りくらい、許してくれるよな)」


そして、そのままタスキは眠りに付いた。


「本当にバカね。返しに来なさいって言ったでしょ。私に取りに来させるなんて……まだいいわよね。あんたが返しに来るまでそのパンツ責任持って握りしめてなさい」


タスキが気絶してすぐにA級ワーム族を倒しきったレミリアが合流し、タスキの傷の応急処置した後アントを近くの木へと縛り付けておく。

そして暇を持て余したレミリアはボロボロのアントとタスキを見る。


「こんなになるまで頑張って。けど、あんたは本当にすごいわね。私じゃあんたみたいになれはしないわ……これはささやかなご褒美よ」




レミリアという美しい1人の女性から額にキスをされるタスキ。気絶していてこの幸せを彼が感じる事はない。

だが、アントを倒した安心感なのか、何かを悟ってなのか。

気絶し眠っている彼のその顔はどこか幸せそうであった。

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