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第6話 パンツ狂者の復讐戦闘

「追ってこないのね……舐めきられてるって事ね」


王国のすぐ近くまでタスキを背負ったまま逃げてこられたレミリアは、自分らの必死さとは裏腹に全く追いかけてくる気配のないアントに自分らが追って殺すほどでもないと判断されているのを悔しくも感じるが、同時に納得もしていた。


「私より遥かに強いこいつが手も足も出ないんじゃ殺す機会なんていつでもあるわよね」


レミリアの心のどこかに生まれていた、タスキなら何とか出来てしまうのではないかという過度な期待の崩壊は、自分の自信を奪うのにも十分だった。


×××


「それであの男は幹部どころかその部下如きに殺られた、という事か?」


「はい。その通りなのですが……」


「なんだ? レミリアよ」


「彼はA級のワーム族を拳一つで数匹撃破しました」


その報告を聞き、国王だけでなく周りの兵士たちもザワつく。

レミリアは王国内でもトップに当たる騎士だ。そのレミリアですら手こずるA級ワーム族を武器もなく容易く倒すというのは次元が違うのだ。


「だがそれでもわしは魔王の幹部を倒して来いと命じたのだ。それが果たせないのなら……」


「……っ。お父様!」


「ちょっとは……待ってくれませんかね?」


「あなた……」


頭や腕、胴体に包帯を巻きフラフラな状態で現れたタスキにその場の全員の視線が向かう。


「俺には奥の手があります。幹部と言わずともその部下のあいつは次で必ず倒します。……だから俺に、チャンスをください」


深々と王様に向かって頭を下げるタスキ。


「失敗したら……どうするのだね?」


「出て行きますよ。この城と言わずに、国から……」


「そうか。いいだろう、レミリアよ。もう一度だけその男に付き合ってやれ」


「あ、はい! わかりました」


×××


「とはいえ……本気なの?あんた勝てるわけないでしょ」


「いいや勝つ。俺には能力があるんだ。……こういうのなんだが」


この世界ではお互いのスキルは本人の任意で他人に見せることが出来る。

能力や魔力、称号などがある者はそれらも全てが見せ合えるようになっている。


「へー。女性の24時間以内の脱ぎたてパンツを握りしめることで発動……ね」


「力をかしてください。レミリアさん」


「それはどういう意味?」


「率直に言えば、脱ぎたてのパンツを貸してください、という事です」


「バカなの?」


「本気です」


世の中に女性に本気の顔で深々と頭を下げながらパンツを貸してくれ、と頼むような男は他にいないだろう。

それも脱ぎたてのパンツを所望するような高度な変態は大人のビデオの俳優くらいだろう。


「それで……100%勝てるの?」


「……ああ。必ず勝つ。負けたりしない」


「はあ……」


シュルリと布が下がる音と同時に脱ぎたてのパンツの匂いがタスキの鼻を通り抜けた。


「レミリア……さん」


タスキの目先には水色と白のストライプ柄のまだ脱ぎたてで少し生暖かい下着があった。

そのあまりの神々しさにタスキは片手で光を遮るようにする。


「何してるの……?」


「あ、すいません。その、(パンツが)綺麗で……直視出来なかったです」


「は、はぁ? な、何言ってんのよ! バカ!」


手に持った脱ぎたてパンツで叩かれるのは常人には屈辱でも、タスキにとっては至福の時間でしかなかった。


「こんなに可愛い私をノーパンで戦わせるんだから必ず勝ちなさいよ? 勝って、そのパンツ返しに来なさい」


「はい。約束します」


そしてタスキはレミリアの差し出す脱ぎたてパンツを受け取り握りしめる。


「それでは行きますか。リベンジマッチに」


×××


森へと足を踏み入れると予想通りいつまで経っても進んでいる気がしなくなっていた。


「いるんだろう? アント様。リベンジマッチに来てやったぞ」


「あんた……敵に対してはそんな口調なの?」


「敵に敬語だと締まらないじゃないですか」


「まあ、それもそうね」


そして、大量のワーム族を率いて姿を現す影は間違いなくアントのものであるとタスキは確認した。


「キャシャシャシャシャ! また来たのか、貧弱な人間め。今度は生きて返さんぞ」


「必ず勝つさ。2度は負けない」


「A級が2匹……」


「え? あの中の虫にA級が2匹いるんですか。それを倒してから任せます?」


「あんたはリベンジマッチに集中しなさい。あんたが覚悟決めてんだ。私だってこれくらい1人でやるわよ」


「わかりました。じゃあ任せますよ」


「あんたも、ちゃんとそれ(・・)返しに来なさいよ」


「了解です」


レミリアがワーム族を引き付け、その場にはアントとタスキだけが残る。

顔がアリなので表情はわからないが、タスキは舐めきられているのがなんとなく察せていた。


「キャシャシャッ! キャシャシャシャシャッ! また俺にボコボコにされたいのかァ? 人間よォ!」


レミリアから預かった脱ぎたてで生暖かいパンツを握りしめタスキは構える。




「舐めんな小者アリ。今度は俺が一方的にお前をいたぶる番だよ」

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