第3話 ツンデレ女騎士の水玉秘宝
「あの、それでその魔王なんたらの幹部が住み着いた城っていうのはどの辺りに?」
「気安く話しかけないでよ。別にあんたに興味なんて全くなくて、国王様に頼まれたから仕方なく私が監視してるんだからね? 調子にならないで変質者」
あっれー? なんかこの人、城にいた時と雰囲気違くない? 気のせい?
あのかたっくるしそうなお嬢様はどこへ?
「私の雰囲気が変わって戸惑っているの? そんなの当たり前でしょ。国王様の中で私は真面目で謙虚な優良騎士。その期待に応える必要があるのよ。あなたのようなどこのアンデッド族の骨や肉の塊の汚物かもわからないゴミの前でまで演じる意味なんてあるわけないでしょ」
彼女が具体的に何を言ってるか理解をするのは異世界から来た俺には難しかった。だが、それでもとてつもなく悪口を言われているのはわかる。
「あ、けどあなた。目的の魔物がいたら盾になりなさいよ」
「なんで!? レミリアさんほどなら倒せるんじゃないのか? 魔王なんたらの幹部」
「あなたはワーム族を超越したような哀れな姿だけでなく頭もアンデッド族の腐った脳みそよりも哀れなのね。私が倒せるならあなたなんかに頼むわけないでしょう?」
俺は彼女に何かしただろうか。具体的な意味はわからなくてもすごい傷つく事を言われてるのがわかってしまう。俺だって泣くんだからな?
それにしてもさっきから気になる事がある。
それは確かに遠いと思ってはいたが歩いても歩いても近付いてる気がしないという点。
それともっと重要なのが、さっき彼女は茂みで用を足したようだが、その時だろう。スカートがパンツに挟まれて水玉模様の下着が丸見えな点だ。目が離せなくて困っている。
「ねえ、変だと思わない?」
「いや、いいと思う」
「何言ってるの? ……さっきから歩いても歩いても城に近付いていない気がするのだけど」
「なんだ。そんな事ですか。そのうち着くでしょう」
「これは罠かもしれないのよ? もう少し緊張感ないわけ」
幹部の罠より、既にあなたは別の罠にハマっている事に気付いたりはしないのだろうか。
俺は例えこれが罠でも、今この時間は最高だし気にしないさ。
「てか、さっきから私のお尻ばっか見て何のつもり……っ!」
「しまった……」
「殺す。いや、死んだら困るから記憶がなくなるまでぶん殴る……」
「待って! 仮にも客人ですが……? それにこれはレミリアさんの不手際では?」
「問答無用!」
「いや、本当に待っ……しっ」
「……わかってるわよ。2つ……3つね」
茂みから出てきた黒くて大きい虫に俺は言葉を失うが、見た目は俺の世界にいたヒッコリーホーンドデビルに似ている?
どちらにせよ背筋が凍るが。
「何でこんなところにA級のワーム族が3匹も!」
「ああ。やっぱりさっきのは悪口だったんだね、皮肉にもこいつらが現れて確信に至ったよ」
つまりこの女騎士様は俺をヒッコリーホーンドデビル呼ばわりしていたって事だよな。
どれだけ酷いこと言えば気が済むんだ。天然モノか?
「でも、たかが虫3匹。レミリアさんならちょちょいのちょいでしょ」
「A級のワームは1匹でも苦労するわよ。3匹なんて手に負えない……」
「そんな……。はあ。じゃあさがってて」
「は? あなたみたいなどこから湧き出たかもわからない黒光りした虫みたいな貧弱戦士の後ろになんで私が?」
本当にいい性格してんなこの女騎士様。
「いざって時は俺が盾になるんでしょ? いいからさがって。ここは俺が何とかする」
とか何とかかっこつけてしまったが、さてこのキモいモンスターどう倒すのかな。
表面にヌルヌルした液体……打撃は当然。物理攻撃自体が通用しない可能性がある。
それでも俺に取れる選択肢は斬る、殴る。
どっちも有効とは思えないけど、何もしなきゃただやられるだけ。ならとりあえず……。
俺はキモい虫の懐? へと滑り込み、下から持ち上げるように思いっきり殴り込む。
そうすると口と思われる場所から大量の何かを吐き出し宙へ浮き、地面へと叩きつけられるとその場で悶えていた。
「あれ? 意外と効いてる?」
「嘘……。A級ワームをたった一撃で?」
「思ったよりちょろいな。さあ害虫共!俺がお前らを蹴散らしてやるよ」