第21話 第一魔王の重い一撃
時は今に戻り、タスキ達。
「あんた…どうやって、レミリアはどうした!」
「レミリアァ? …あー、この子だろ? 気を失ってるだけだ、安心しろ」
男は担いでいたレミリアをそっとおろし、タスキとパラドを完全に無視しCode:76へと近付いていく。
圧倒的な魔力による存在感にタスキはもちろん、その威圧感に魔力を感じないパラドすら手を出そうとしない。
「お前らはこの先の奴に用があんだろぉ? 勝手に行ってこい。どうせこいつは俺が終わらせちまうからよ」
「人間のくせに随分と調子に乗った事言ってくれるな!」
「お前は聞かれた事だけに答えろ。一桁コードって奴らがどこにいるか知ってるか? あぁん?」
「知らねぇよ! 知ってても答えねぇけ…」
男はCode:76の言葉を聞き切る前にCode:76の頭を殴ると、Code:76の頭が宙を舞い転がり落ちる。
タスキとパラドがあれだけ苦労した相手をその男は軽く一撃当てるだけで済ませる。
二人がその光景を見た瞬間はまるで時間が止まったようだった。
「俺はもう用は済んだから帰るわ。後はお前らの好きにしろ…ん?」
男はその場を立ち去ろうとする前に、ヒメリアの顔を見ると何かに気付いたかのように一度立ち止まる。
「そういうことか。頑張れよォ、お前ら」
先程まで城を揺らしていた魔力が嘘のように軽い雰囲気を出すその男はその場を去っていく。
威圧感がその場からなくなり、奥の部屋から感じるおぞましい魔力。
パラドはカニ型の何かを体内に、タスキは下着共鳴を使い扉を開ける。
「せっかく要請しても無駄だったか。所詮三下ロイド族…期待なんぞしていなかったが」
「お前がタウロスか? お前を殺しに来た」
「なぜ?」
金色の鎧を全身にまとい、立派な二本の角が生えた兜が特徴のタウロスだと思われる者が玉座から立ち上がりじわじわと距離を詰める。
先程の男には劣るものの激しく空気を揺らす魔力。
タスキは初めての魔王に少し戸惑う。
「魔王は悪。それがなぜ前提なのだろう。俺は人間を殺したいとは思わない。生き物の命を無理やたらに奪ったりはしない。我々には人間から突然変異として魔王になった者、生を受けた時点で魔王だった者。俺は後者だ」
「だからなんだ。最初っから魔王だったなんて最悪じゃないか!」
「いいや、それは違う。前者は強い憎悪によって生み出された。いわば悪意そのもの。我々オリジンよりも遥かに強い憎しみを持ち大量の虐殺を目的とする」
タスキやパラドよりも一回り大きな体のタウロスが二人の前で立ち止まり、二人を見下ろす。
「オリジンにも戦いを好む奴はいる。キャンサーのコアを持っているお前ならわかるだろう。奴がそうだ。だが、俺は違う。無駄な戦いはやめないか?」
「そんなの関係あるか!」
パラドが力を込め胸元を殴ってもビクリとも動かないタウロス。
タスキは動こうとせず、その光景を隣で見ている事しかできない。
「次が最後だ…無駄な戦いはやめないか?」
「だから、そんなのどうでもいいんだ! 俺はお前のコアがもらえればそれでな!」
「それが、お前らの答えか…残念だ」
「え? 俺もなの?」
タウロスが拳を引くとそこに魔力が集中し、金色に輝く。
「金砲!」
高密度の魔力が雲を割く一筋の光となり放たれる。
それを真正面からくらいタスキは地下から地上へと押し出される。
「お前には魔力が効かないんだな」
「なっ!?」
魔力の光が消える前に魔力反発体質により金砲を無効化し、その場から動かないパラドの頭を掴み宙へと投げ、身動きの取れないパラドの腹部へと飛び込み頭突き押し上げ、天井をパラドを盾に砕いていく。
「かはっ!」
「この程度でダウンか? それで俺と戦おうとは…無駄な戦いではなく、無駄死にをしに来たのか? お前は」
「ふざ…けるな…っ!」
「クソ。なんだ今の…魔力ってあんなふうに使えるのか…」
「タスキ! 大丈夫!?」
「ああ、なんとか生きてるさ。こりゃ本当にあれ試さなきゃならなそうだ」
タスキはパラドが自分の生存を確認したのに気付き、息を吸いこみ全力で叫ぶ。
「今から少し時間稼げ! そうだな…五分でいい! 出来るな!?」
「俺に指図するな! 終わったら必ずお前を殺す。それと五分? 笑わせるな。何時間でも稼いでやるさ」
「無理だ。お前では数分も稼げないさ」
タウロスは地面を強く蹴りものすごい勢いでパラドへとタックルを仕掛ける。
それに反応し、自分の体へとダイヤを馴染ませる事で物理的ダメージをすべて受け流しながらタウロスを受け止める。
そしてタウロスの背中へと回り込み、がっしりと捕まえヘビーメタルへと変更する。
「ここから抜け出すのに何分かかるだろうな」
「秒だ」
タウロスはヘビーメタルと化しているパラドを軽々と宙へ浮かし、タスキの方へと向かう。
だが、パラドは一度ヘビーメタルを解除し、再び馴染ませることで急降下し、その後カニ型の何かを体内に埋め込み斬撃を飛ばす。
「言ったろ…俺を舐めんなって」




