第18話 人類超越の新種族
「それにしてもレミリア大丈夫か? あの人めっちゃ強そうだったんだけど」
「レミリアちゃんよりは強い感じかなー」
「は? じゃあなんであいつ一人にしたんだよ! 今すぐ引き返す…」
「大丈夫だし! モスキート? って奴の時もレミリアちゃんは一人で頑張ったし! あの子はうちらが思う以上に強いものがあると思う。だから信じてあげてほしい」
「…お前がそう言うなら信じてやる。けど、もしレミリアが死ぬような事あれば一生恨むぞ」
タスキとヒメリア、そしてミカエルは城の地下へと足を運んで行く。
地下まではかなり長い螺旋状の階段で繋がれていたが、その降り切るとそこに重そうな扉が存在していた。
タスキが扉に手をかけ開こうとするとミカエルが何か言おうとしているのに気付く。
「ん? どうし…」
大きな音と同時に扉がタスキを巻き込み吹き飛ぶ。
その扉の上にはボロボロになったパラドの姿があった。
「おまっ。どうしたんだその傷」
「…パンツ廃人…。殺す。まずはお前を殺す」
「いやおかしいだろ! 敵を最初に倒せよ!」
「知るか!」
「なんだ、仲間か」
扉の先に一人の男の声を発する機械のような何かがいた。
ミカエルはそれを見て、どうしてあんなものがここにいるのかと震え始める。
「なんだあいつ」
「ロイド族です。元は私たちと同じ人間種だったらしいのですが。改造され人間とは別の種族になった者達…そのスペックは人間を遥かに超えていると聞きます」
「俺はCode:76。タウロスから依頼料はしっかり受け取ったんでな。お前らをここより先には行かせないさ」
タスキがCode:76と名乗るロイド族に気を取られていると、すかさずタスキへと攻撃を仕掛けるパラド。
それを間一髪で避け、体勢を崩すがすぐさま立て直す。
「お前なぁ…」
「お前はパンツ廃人だが強い。俺よりは強い。そして俺は俺より強い奴を誰一人として許さん。殺す」
「なんでお前そんなに物騒なんだよ」
「人間はやはり頭が悪い生き物だな。仲間割れをしてくれるなら仕事が減って助かる。勝手にしてくれ」
パラドのタスキへの攻撃が止まる。
タスキもパラドの説得を中断する。
「今お前…俺をバカ呼ばわりしたのか? 俺は俺より強い奴を許さない。俺を見下す奴も許さない。つまりお前は両方当てはまった、優先して殺す」
「人間が頭悪いだァ? パンツという神器を創り出す人間が頭悪いわけねぇだろ。パラドを止めながらでもお前は倒す」
「「…。とりあえず一時共闘だ!」」
あれ程にぶつかり合った二人が理由は違えど、たった一言で一致団結をするのはそれを見ているミカエルやガブリエル達からすれば奇跡のような光景だった。
それから何の合図もなしにパラドはカニのような金属を体内に取り込み、斬撃を飛ばし始める。
その間を潜り抜け、タスキがCode:76へと追撃を仕掛けるがタスキは天井へと弾かれ。
斬撃を飛ばすパラドの前へと瞬間的にCode:76は移動し、パラドを柱へと思い切り弾く。
「弱い。弱すぎる。こんな雑魚ならタウロス本人でも十分だったろう。なぜ俺が」
「おいおい、まだ終わってねぇぞ…。勝手に勝った気になってんじゃねぇぞ! ポンコツ!」
「俺だってここからが本番だ! 下着共鳴! ミカエル!」
タスキは空中から光の矢を連射しまくる。
それを必要以上の動きを取らずに全て躱すCode:76。
パラドがその余裕のCode:76に渾身の斬撃を飛ばし、それを躱そうとするCode:76の背後にタスキが周り動きを止める。
「これで終わりだ!」
「何を言っているんだ? 魔導フィールド」
Code:76を包むように発生した電磁バリアのような膜がタスキを弾き、さらに斬撃を無力化する。
その後、魔導フィールドを解除しパラドへと手の平を向け、そこから魔力の弾丸を放つ。
しかし以前同様、それを弾くパラド。
「あいにく俺に魔力は無意味なんだよ!」
「ほう。攻撃魔力に対する耐性か。ならば物理で仕留めるのみだ」
再び一瞬で間合いを詰められ、壁へと押し込まれるパラド。
かなりの勢いで弾かれたタスキはそのダメージにより、しばらく身動きが取れず。
パラドもほとんど意識がない。
「なんだよ…こいつっ。強すぎんだろ…」
「俺が強いんじゃない。お前らが弱すぎるのだ。恥ずかしくないのか? 二人がかりでたった一人にボコボコにされるどころか、手も足も出ない始末。それでもなお力の差を弁えず戦う己たちの愚かさが」
「たかが…。たかが一人に手も足も出ねぇからって…。だからと言って逃げるようなカスになるよりは何倍もマシだ! クソ野郎!」
「特にお前に言っているんだ。ギャーギャーうるさいお前だ。そこの弱ってるのには潜在能力があるのがわかる。だがお前にはそれすらない。お前のような真のゴミがいつまで喚き散らかすつもりだ?」
パラドはCode:76の言葉に完全に静止する。
弱いを通り越した、まるで存在の否定をされたかのようなその虚無感にパラド一時的に意識が飛んだように止まっていた。
だが、パラドは意識が戻るなりブツブツと何かを言いながら金色に輝く何かを取り出す。
「潜在能力? んなもん必要ねぇ。お前には使ってやるよ。俺のとっておきをな…血祭りだ、お前は」