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第15話 衝突不可避の双英雄

「失ってからじゃ遅い? 少なからず今のお前に何かが守れたりはしないと思うぞ! 俺は俺のパンツコレクションをお前には任せらんねぇよ!」


「そんなもの任せられても守ったりしねえ! くたばれパンツ廃人が!」


「なんか嫌な事でも思い出したのか…? 戦闘狂。さっきよりずっとマシな顔になってるぞ。その方が人間らしくて俺はいいと思うんだがな…!」


「人間らしい…? 人間らしさなんぞとっくに捨てた! パンツ廃人如きが…パンツ廃人如きが俺を惑わすなぁ!」


パラドが放ったのは手刀ではなく、ただ強く握りしめた拳。

それを避けることもなく頬へと受け、森の奥へと吹き飛ばされるタスキ。

立派な木がストッパーとなるが、とても立派な木が削れ、今にも倒れそうになっているのを見ただけでパラドの拳の威力が危険なのは判別出来るほどだった。


「そんだけ殺す殺すって言ってんのに、まだ俺一人殺せてねぇじゃねぇかよ…。どうしたんだ? お前の言う強さってやつはそんなもんかよ」


「俺は本気で殺しにかかっている。何故だ? なぜ死なない。どうして笑っていられる」


「守りたいもんがあるからだ。俺はまだ約束も果たしてないし、パンツだって集めたりない。そんな状態でくたばったり出来ねぇよ。強さの為に強くなるんじゃない。守りたいもの(パンツ)の為に人はどこまでも強くなれるんだ」


「いやそれは絶対あんただけだし」


多少空気は読めていないものの、ミカエルが的確なツッコミを入れる。

確かに何億人の人間を総当りしても、パンツの為にここまで命を燃やせるのはこの男くらいだろう。


「俺は自分が許せなくなる。なぜお前のようなパンツ廃人一人を殺しきれないんだ。俺は強くなったはずだ」


「思い込みだろ。それにお前だって強さ廃人だろ。強さ強さってそれしかねぇのかお前には」


「廃人? 俺は強くなるために人である事なんて既に捨てている。俺はもはや人などではないんだ」


「人じゃない…だ? つまり理性なんか捨てたって事か?」


タスキの動きが完全に止まり、周りが地響きを立てながら大きく揺れ出す。

次第に小さな石や砂がなにかに引き寄せられるように宙へと浮く。

その正体は膨大すぎる魔力による威圧だとミカエルが気付く。

つまりタスキがキレたのだ。


「理性を捨てて。ただの本能で求めるものに何の価値があるんだ…? 理性で抑えようとしても抑えられないくらい欲しいって求めるのが、真に求めるもので、そいつに必要なもんだろ。見損なったぞ…お前は、理性の壁を超えて、何を犠牲にしてでも強さを求めると思ったのに…」


「何を言ってるんだ? お前は…」


「つまり俺は! 理性なんてリミッターすら振り払って全力で! …いいや、全身全霊! 魂をかけて! パンツが欲しいって事だァ! クソ野郎!」


「いやいや。めちゃくちゃ熱くてかっこよく見せてもそれ犯罪者宣言だから」


タスキは右足を一歩前に出し、踏みしめるとそこを中心に半径10m程のクレーターになる。

そして、その勢いを殺さないように半ば無理やりパラドの顔へと拳を大きく振りかぶった。

とんでもない音と勢いで森の奥へとパラドが吹き飛ばされ、更にその勢いから発生する風により周りの木々が何本もなぎ倒されていく様は今までのタスキとは比べ物にならない威力の拳だった。


「|(…っ! 俺のキャンサーの防御力を完全に無視しての物理攻撃だと? なんだ。何が起きた。あのパンツ廃人がなぜ突然こんなにも…)」


「あっちゃー。ミカエルの連れて来た彼何者? あの魔力量人間じゃないよ。それに無意識かわかんないけど、その魔力を体内に取り込んで身体能力をどんどん上げてるよ。あれは止めないとやばいね、パラド死んじゃうわ」


「調子に乗るなァ! パンツ廃人がァ!」


パラドはフラフラと立ち上がるが踏ん張り自分の体を支え手刀をタスキへと振り下ろし斬撃を飛ばす。

先程まで城を無数に切り裂き、タスキも逃げる事しか出来なかったのに、それを今のタスキはもろに受け、弾くのだ。


「魔力の…厚い膜が外からの魔力を弾いてるし…。嘘でしょ? あんな芸当見た事ないんだけど」


「本当にさっきまでのパンツ廃人か? 別人だろ。なんだこの強さは、お前は一体なんなんだァ!」


「今お前の目に俺が強く見えているなら、多分それがお前が手に出来ない真の強さって奴だ。求めて手に入る力なんか限界があると俺は思う。だから意識せずに溢れてきちまうこういう力が、いわゆる底力って奴が手に入れるべき真の強さだろ?」


タスキがパラドに向かって拳を構える。

それを止めたくてもレミリアとヒメリアは疲れも重なり、タスキの放つ人間離れした魔力の圧の立っていることすら叶わず。

ミカエルとガブリエルもその圧により、近づく事すら上手く出来ずに戸惑っている。

この状況下ではパラドを逃がすのではなく、タスキを止める手段を考えなければならないのは言わずともな状態である。




「俺は…俺は負けるのか」

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