第10話 下着共鳴の根絶
「キャシャシャシャシャ! また来たのか愚かな人間め。今度は前の様には────」
「そこどけぇ! アントぉ! 下着共鳴! 行くぞ、レミリア」
「言われなくても!」
レミリアが周りに氷の薄いが、高い壁を作りながら道を開ける。
ワーム族はサイズこそあっても幼虫タイプの物理的攻撃力は低い。
「姫様!」
「わかりました!」
そしてヒメリアの支援魔法にレミリアとの下着共鳴を上乗せし、拳に氷を纏わせアントへと強力なアッパーを決める。
「このまま一気に行くぞ……ってなんか霧が濃くなってないか?」
突然の濃霧にタスキ達は視界を奪われるが、勢いを殺さず前進を続けるタスキ。
霧の先から光が見え、そちらへと一直線に走り抜ける。
「抜けた。今のは一体……ってあれ。姫様だけか?」
「え、レミリアさんとミカエル様は?」
「まさか霧の中なのか!」
「心配しなくて大丈夫だし、レミリアちゃんはうちに任せといて」
「ミカエル……。わかった、任せるからな」
×××
「ヒョーヒョッヒョッヒョッ! 私はウルフ様の忠実なる部下モスキート」
そこには人より少しばかり大きい喋る蛾が飛んでいた。特に人間の足が2本、腕が4本とキモさしかない姿にレミリアは今にも逃げ出したくなっていた。
「なんなのよ。さっきのアリみたいなやつの方がまだマシだったわ! 大体知能のあるワーム族はみんな笑い方がキモいわけ!」
「ヒョーヒョッヒョッヒョッ! 失礼な小娘だなぁ。まあすぐに楽にしてやるぞ」
「レミリアさん、大丈夫?」
「ミカエル様! 大丈夫です。これくらい何とかしてみせます」
「わかりました。私が出来るだけ援護致しましょう」
タスキがいなくなった途端に天使というより女神のような素振りをし始めるミカエル。
とりあえずとミカエルは光の魔法により辺りの霧を払う。この濃霧はモスキートの魔法によるものでそれ以上の光魔法を使えば簡単に払い除けられるのだ。
「(今の私じゃこいつには勝てない。けど、あいつがあれを使えば……)」
「(んー、とりあえずは時間稼ぎって感じかな)」
×××
「俺の手元にはレミリアのパンツと姫様のパンツ。使い分ければ案外ちょろかったりしてな」
「あの、タスキ様?」
「ん? どうしました? 姫様」
「あんまりまじまじ見られると、その。恥ずかしいです」
片方の拳を軽く握り頬を赤らめながら顔を半分隠すヒメリアの行動はまたタスキの心を掴む。
その反面、この状況で手元にパンツを広げ眺める余裕のあるタスキの姿には心強さも感じてはいた。
「タスキ様、お体は大丈夫なのですか?」
「え? 体?」
「はい。先のアントという魔物との戦いから1日も経っていませんので、疲れが溜まっているのでは、と」
「そんな事ですか。大丈夫ですよ。何より今俺には姫様もレミリアもついてます。寝てられなんかいられません」
「タスキ様……」
「姫様(のパンツ)は必ず守りきってみせますから」
「そんな事、出来ると思う?」
建物全体に響くように声が聞こえたため、声の正体がどこにいるのか判断出来ない。
だが、タスキはその位置を発見出来ていた。
「お前! そんな所で俺のもんジロジロ見てんじゃねぇ!」
「タスキ様、そのお言葉遣いは?」
「ああ。流石に敵に丁寧な言葉を使うのもあれなんで、こういう言葉を使っています」
「……そう、なんですの。それとタスキ様の指の方向に誰もいませんが……」
「いいや、いる。俺には感じるんだ。さっきから向けられる」
そこに薄々と人影が現れ始める。
貴族のような衣装をまとったウェーブ髪の中年の男。
突然何もないところから現れヒメリアは少し驚くが、タスキは全く動じない。
「俺の右手に持つ姫様の純白パンツへの熱い視線がな!」
「そっち! そっちなのですか!」
ヒメリアは顔を少し赤らめタスキを怒鳴る。
だが、なんで怒鳴られたんだと言わんばかりの疑問の顔をタスキはヒメリアへと返す。
「俺のヒメリアのパンツを許可なくマジマジ見つめるなんてとんだ変態野郎だな」
「そ、そうです! 私のパンツを見つめるなんて変態です!」
「なんでかっこよく登場したはずなのに早々変態呼ばわりされているのかなぁ。僕は」
「ウルフだろ。わかってんだ、わざわざ名乗んなめんどくさい。一気にいくぞ……下着共鳴!」
右手に持つヒメリアの純白パンツを握りしめ、ヒメリアと下着共鳴を発動する。
「これが……タスキ様の」
タスキへヒメリアの魔力や感情が流れ込むように、ヒメリアにもタスキのそれらが流れ込む。
ウルフはそれを興味深そうに眺めている。
「ふぅん、それがアントを倒した力かぁ。いいね」
「その余裕の喋り方、もうさせねぇぞ」
ヒメリアの支援だけでなく、自分でも支援魔法を使う事で本来のタスキとは比べ物にならない程の速さでウルフへと接近した。
だが、次の瞬間にヒメリアとの下着共鳴が途切れた。
右手に握っていた純白パンツが破かれていたのだ。
正確には握っていた拳にも切り傷のようなものが出来ていた。
「お前……俺のパンツになにしやがんだぁ!」
当然タスキはぶちギレる。