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満月の夜

「お前さえ、お前さえいなければ・・・。」

消えるような声で、しかしはっきりとそう告げられた。

自分が何をしたのか自分でも理解できていない。

そもそも何もしていない。

それなのにこの世界に自分の居場所がなくなった。

ただただ絶望し、世界に失望し、誰とも接触することのない場所へと追いやられた。


時間は1日前にさかのぼる。

平和で、争いなど一つもない活気にあふれた街、そこの1住人として俺は住んでいた。

俺の名前はリリーガ。

何の変哲もないごくごく普通の家庭に生まれた。

種族は狼族。

特別な種族なのかと言うとそういうわけでもなく、何万人も同士はいる。

特別な力などもあるわけではなく見た目からそう呼ばれている。

そしていま、街の中央広場では住民のみんなが大騒ぎしていた。

「今夜はここ数百年で最も美しい月と星が見れるのじゃ。」

町の長老である鬼族のガリッタが愉快に笑いながら言った。

時間は午後5時。

今か今かと待ち望んでいる人たちが酒の入ったグラスを片手に大騒ぎしている。

だんだん俺の気分も高揚してきた。

なんだかんだ楽しみなんだなと思うと同時に口元が緩む。

「でも少し雲が出てきたみたいですけど大丈夫でしょうか?」

少し心配になってガリッタ長老に尋ねると変わらない口ぶりで

「なぁに心配などいらん。7時には完全に雲は晴れる。」

そして7時になって本当に雲が晴れた。

今、目の前には今までにないとても大きい月が光っていた。

「とてもきれいですね。ただ、少し赤いような。」

その時全身に違和感を感じた。

何というか、全身の毛が逆立つというかただ事ではないことがわかった。

「おい、リリーガ、大丈夫か。呼吸が荒いし、顔色も悪いぞ。」

そこからの記憶は完全に途切れていた。

気が付いた時には周りには住民の姿も家があった痕跡すらもなくなっていた。

そこにガリッタ村長の息子が戻ってきた。

変わり果てた街の様子に驚いていた。

「おい、これはどういう状況だ、説明しろ。」

「俺にも、よくわからないんだ。月がきれいで、それを見ているうちに体調が悪くなって、意識を失って気がついたらこのありさまだった。」

嘘偽りのない真実に息子は口を半開きにしたまましばらく立っていた。

「ふ、ふざけるな!お前がやったんだろ。そうでもなきゃなんでお前だけが無事でいるんだよ。なんで、なんでお前だけが・・・。」

声を荒げて叫び、悲しみに耐えきれなくなって泣きだしてしまった。

それでも何も声をかけることができなく、ただただ黙って立つことしかできなかった。

「お前さえ、お前さえいなければ・・・。」

消えるような声で、しかしはっきりとそう告げられた。

自分が何をしたのか自分でも理解できていない。

そもそも何もしていない。

それなのにこの世界に自分の居場所がなくなった。

ただただ絶望し、世界に失望し、誰とも接触することのない場所へと追いやられた。

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