その二
読んで頂きありがとうございます!
よく晴れた朝、私はぼろ宿の窓という窓を全開にしてズボンの裾を膝までまくり上げ、男物のブカブカなシャツの袖を肘までまくりバケツと雑巾、箒を持って1階ロビーで仁王立ちをしていた。
ガルガンさんに魔力の使い方を教わる条件の一つ、ぼろ宿の清掃をするため気合十分だ。
ガルガンさんはそんな私を遠目で見て、苦笑いを浮かべ自室にそそくさと逃げて行く。
手伝ってくれる気は全くないようだ。
「よし、やるか!」
魔力の使い方は全くわからないが家事は長年やってきている。
私は大胆かつ効率的に大掃除を進めた。
あの薄暗く色々な物が転がって汚れていたロビーはみるみると綺麗になっていくのが楽しくなり、掃除に夢中になりすぎて昼時が過ぎている事に気が付かなかった。
「アロー、昼買ってきてやったぞ」
いつの間にかガルガンさんは街に買い物に行っており、お昼ご飯も買ってきてくれたらしい。
ちなみにアローは私の偽名で私がレオンだとバレないよう普段はこれを使うようにしている。
ガルガンさんは明るく綺麗になった1階ロビーを見回しテーブルにお弁当を置いた。
「綺麗になるもんだなー」
私はふふん!とちょっと自慢げに胸を張る。
「掃除は得意なんです!」
褒められた事で上機嫌になり、掃除道具を隅に寄せて手を洗いに行く。
ロビーに戻るとガルガンさんが弁当を広げ飲み物まで準備をして座って待っていた。
私は待たせて申し訳ないと小走りでテーブルに向かいイスに座る。
「いただきます」
私が食べ出すとガルガンさんも食べ始めた。
お弁当は色々なおかずが入っていて、とてもおいしかったのでペロリと残さず食べて、お茶を飲む。
するとガルガンさんがポケットから1㎝ぐらい厚みがある封筒を出してテーブルに置いた。
「何かといるものがあるだろう。これを使え」
私は封筒の中身を見るとみたことがない大金が入っていて目を丸くして固まった。
兄の替え玉で王都に来てすぐ帰る予定だったのでそれ程お金を持ってきてなく、これからの生活どうしようかと思っていたが…さすがにこんな大金もらえない。
私は封筒の中から札を一枚抜いて残りをガルガンさんに戻す。
「この一枚を貸して下さい!あとはその、必要なとき言いますから」
「それじゃ面倒くさい」
「面倒くさくてもそうして下さい。こんな大金、持ってたら落ち着きません!!」
ガルガンさんは少し呆れた顔をして、ヤレヤレと封筒を受け取った。
掃除がひと段落して、次は魔力の特訓が始まった。
とにかく私が使える魔力の能力?をはっきりさせたいとガルガンさんが何か魔力を出せないかというので、色々試してみた。
両手を構えて何か魔力が出るか試みたり、念力のように念じてみたり…とにかく色々してみたが何も起こらない…
「…本当に私に魔力あるのかな…」
「…あるはずなんだがなー」
そんなやり取りの日々が数日続いた。
ぼろ宿は私の掃除のおかげてちょっと古い普通の宿になった。
玄関の前を掃除していると、たまに宿泊したいと客がやってくるぐらいに。
ガルガンさんに相談すると泊めてもいいらしく、それで儲けたお金は私のお小遣いにしても良いと言ってくれたので助かった。
今更だが、ガルガンさんは宿屋で生計を立てている感じが全くなく、なんで宿屋をしているのかサッパリわからない。
「ほら、こう集中すると何か感じるだろ?」
「…全然」
魔力の特訓をするが何も進展しない日々が続き、今日はロビーでイスに座りテーブルの上に置いてある水の入ったコップを睨み付けていた。
魔力で何かを作ることが出来ないのなら、今度は物体をどうにか出来る魔力の種類でないかと考えたからである。
しかし、それもハズレだったらしい…
ロビーの奥ガルガンさんの部屋の扉の前で背もたれして立っていたガルガンさんはあごに手を当て目を閉じて考え込んでしまった。
ガチャリ
玄関の扉が開く音がして、私は来客かと思い立ち上がって出迎えると見覚えのある青年が入ってきた。
兄の代わりに騎士試験を受けた帰りに話し掛けてきた青年だ。
「いらっしゃいませ?」
私が少し疑問系で挨拶をするとガルガンさんがその青年に近づく。
「おい、何しに来た。」
「…宿に泊まりにですよ、兄さん」
兄さん!?
私はガルガンさんとその青年を見比べ、パッと見似ている所は…髪の色ぐらい?
ガルガンさんは嫌そうな表情を浮かべているので青年とはあまり仲の良い兄弟というわけではなさそうだ。
「この国一番の魔道騎士様はこんな所に泊まらなくても立派な住居が支給されているだろう?」
な、なんと!?このラフな格好をした青年は魔道騎士様なのか!!
私は再び驚き青年を凝視してしまった。
胸の部分についてる三つの紋章は騎士魔力すべてにおいて最高ランクの証らしい。
青年は驚いている私をジッと見て少し目を細め顔を曇らせる。
「兄さん、薬を飲ませましたね」
「…なんのことだ?」
青年はすっとぼけているガルガンさんを横目に私に近づいて来た。
私はどうしたものかと目を泳がせガルガンさんに助けを求めるがガルガンさんは頭をぼりぼりとかいてマズいなーといった感じだった。
青年は私の目の前に立ち左手を広げ私に向けて構えた。
「騎士たちの間でおかしな噂を耳にしました。元魔導騎士長のガルガンが男を拾って愛でているって。まぁあの時の君なら納得するけど、どうして魔力を隠す必要がある?」
元魔導士長のガルガンって言葉が気になるけど、今は目の前で何かされようとしている私の状態の方がよっぽど気になる…というか何が起こるのか不安でしかない。
青年が集中するとかざしていた左手の手のひらにほのかに光が集まりそれが小さく渦を巻いていく。
それが私に向かって放たれた。
私はそんなものが当たったら何が起こるかわからず、恐れて目をギュッと閉じて構えると私に当たる直前その光の玉はギュイーンと方向を上に変え、なんと青年の元に向かった。
青年は驚き急いで別の魔法を作り自分にあたる直前、魔法を相殺させる。
パアッンと風船が割れる音がして魔法が消えた。
私は何が起こったのか解らず、薄ら目を開くと驚き固まっているガルガンさんと青年の姿が目に入った。
「ど、どういうことだ…」
「なんてこった…そういう事か…はは…おい、ハリスこいつは貴重な能力をもっている魔力者だ」
少し興奮気味のガルガンさんは笑いながら私と青年ことハリスさんの元に駆け寄った。
「兄さん説明してもらえますか?」
ガルガンさんは頭をぼりぼりとかいて、仕方ないと今までの経由を説明し出した。
私が兄の代わりに騎士試験を受けたこと、稀少種な魔力を持っている女であること、騎士試験を受けて自由を手に入れようとしていることなど…
そして、本題の私の能力の話になる。
私は生唾をごくりと飲み、興味津々で聞いていた。
「おそらく魔力操作だな」
魔力操作?さっきみたいに魔力を跳ね返す事が?
私が首をひねって考えていると、ハリスさんが何か閃いたようだった。
「なるほど…あ、でも待って下さい…試したい事があります」
そういうと私とガルガンに裏庭に連れ出して庭を包囲するぐらいの結界を張った。
そして今度は私の隣にハリスさんが立ち、宿の壁に向かって左手で人差し指を指し小さく呪文を唱える。
その指先に数センチの小さな炎の玉が現れそれを壁に向かって放つとその玉は急激に膨らみ30センチぐらいの大きさになってドカンっと壁に大きな穴をあけた。
その様子を見て、私はあんぐりと口を開けて唖然とした。
宿の壁になんてことしてくれるんだ!!せっかくきれいにしたのに!!
っと心の中で抗議した。
しかし、そんな私と違った反応をガルガンさんはしており、目を見開き、小さく震えているように思える。
そんなに宿の壁を壊されたのがショックなのだろうか…?
「兄さん…彼女に初めて逢った時、同じようなことが起きました」
「ああ、魔力増強か…これはとんでもない能力だ」
二人はゆっくりと私の方を見て顔を引き攣らせ笑っている。
私はひとり、なにがなんだかわからずキョトンっとしていた。
それから簡単にわかりやすく3時間ぐらいかけてガルガンハリス兄弟が私に説明してくれた。
私の能力は他の人が放った魔力を操ったり、強く?したりする能力らしい。
この能力はとても貴重で、いままで1人しかいなかったとかなんとか…
戦闘で役に立ち、もちろん人助けにもなる能力だが、難点は自分が魔力を発生する事が出来ないという点。
しかも今現在私は無自覚なので操る事もできず使えないって事だ。
結局、ハリスさんはこの日宿に泊まりガルガンさんとどうすれば私が能力を操れるようになるか議論する事にしたらしい。
もしかして、この兄弟本当は仲良し?
私は難しい事は二人に任せて、壁に空いた穴をせっせと補修して片付ける事に専念した。
それからというもの、ハリスさんは数日おきに宿にやってくるようになった。
目的は私の魔力を研究実験?すること。
自分の放った魔法に私の力がどのように作用するか細かく研究し、実験を繰り返す。
私はガルガンさんに魔力を操作する方法を教わり意外と簡単に出来たので拍子抜けをしてしまった。
ただ対象の魔法を見て念じるだけでいいのだ。
放たれた魔法に右に曲がれと思えば曲がるし、魔力を放った本人に戻れと思えば戻る。
なんだか不思議な感じがする…
魔力増強の方は…まだ暴走状態なので練習が必要だ。
「よし、今日はこのくらいで休もう」
そういうとハリスさんは結界を解き持ってきた手帳に何かを書き出す。
3日ぶりにやって来て、試したい事があると庭に誘われ結界の中2時間色々とさせられた。
私はちょっと疲れてフラフラになりながら宿の中に戻るとロビーのカウンターの上にケーキ箱が置いてあるのが目についた。
後から入って来たハリスさんがああっと言って
「ケーキ買って来た。食べよう」
「え、やった!」
ケーキは私の大好物である。
貧しかった子供時代、数えるほどしか食べたことがなく数年ぶりのケーキに私は感動してしまった。
うはうはと喜び、ケーキを食べるお皿とコーヒーを準備しているとハリスさんは少し呆れながらテーブルに着いた。
あ、ちなみにガルガンさんはちょっと用事があると朝出かけたっきりだ。
私は苺がたっぷり乗ったケーキを頬張り目に涙を浮かべて幸せをかみしめる。
「本当にケーキ好きなんだ。君の兄から聞いて来た」
「え!兄ちゃん!兄はその…」
「…牢屋に捕えられている。残念ながら今はどうにも出来ない。ロロ村のおじさんの所にも監視がつけられているらしい」
「そうですか…」
私がしょんぼりしているとハリスさんは元気づけるようにもう一つケーキを食べるよう勧めてくれたので有難く頂戴しました。
ついでに今まで気になっていた事を聞いてみる事にした。
「ハリスさんはガルガンさんと兄弟ですよね?その、ガルガンさんが元魔道騎士団長というのは本当ですか?」
「ん?ああ、本当だよ。2年前に魔力が使えなくなったと言って辞職したけどね」
ハリスさんは衝撃的な事をサラッと言ってコーヒーを飲んでいる。
魔力が使えなくなったって何があったのだろうか?
「まぁその後を俺が継いだから家としては何も問題なく、兄はああやって自由に暮らしている訳だけど」
「ハリスさんって何歳ですか?」
「27だけど?」
グレイのストレートな髪を一つに束ね、しゅっとした顔とラフな服装から自分と同じぐらいの歳かと思っていたが5つも年上だった事に少し驚いた。
「アロー、騎士試験に合格するのは大変だし、騎士になった後も色々大変だと思う。もし、君さえよければ俺の所に来ない…かな?」
「へ?」
ハリスさんはコーヒーをテーブルの上に置いて微笑みかけているが、その瞳は真剣なように思えた。
俺の所にって…
「あのー使用人的な?」
「…いや、そうじゃなくて」
バタン!と急に玄関の扉が開いて、少し不機嫌そうな表情でガルガンさんが帰って来た。
片手に袋を持ち、ギロリと一瞬ハリスさんを睨み私にその袋を差し出す。
「今晩のおかずだ、冷蔵庫に入れておいてくれ」
袋の中は生きが良さそうな大きな魚が入っており、今晩のおかずは刺身とあら炊きにしようと思った。
私はいそいそと魚を持って厨房に向かおうとすると背後からハリスさんに呼び止められる。
「アロー、今日はもう帰るから考えておいて。バツイチの兄さんにはアローは任せられないよ」
バツイチ!?
私は驚き振り返るとガルガンさんは視線を逸らし自分の部屋に入った。
そして、ハリスさんも私に軽く手を上げ玄関から帰って行く。
やはりこの兄弟…仲が悪いのか…?
ガルガンさんの宿でお世話になって一月とちょっとが経とうとしていた。
今ではすっかり此処の生活にも慣れて、掃除洗濯ご飯までほぼ完璧にこなせる立派な使用人だ。
そんな私が男装をして玄関の前を掃除していると背後から話し掛けられた。
「お前はここの者か?」
振り向くと騎士筆記試験会場に現れた煌びやかな騎士様ともう一人お付きの騎士が立っている。
私は顔を引き攣らせ箒を持っていた手をぎゅっと握りしめて、じっとり汗をかいた。
「はい、そうですが…」
「…ガルガンは居るか?」
「中に居ます。どうぞ」
私は警戒して必要以上に喋らず宿のロビーに案内した。
「ガルガンさんお客様です」
私の声を聞いてガルガンさんは部屋からぬぅっと出てくると客の顔を見て一瞬目を見開き、すぐに憂鬱そうな表情をした。
「久しぶりだなガルガン」
「騎士団長キラ様が直々に来るなんてなーこっちで話を聞こうじゃないか。アロー、お茶と菓子を出してくれ」
「はい…」
厨房から適当なお菓子を見繕い、ガルガンさんの部屋に向かった。
ガルガンさんの部屋の前で付き人の騎士が待っており、その横を通りすぎて部屋に入る。
騎士団長キラ様は小さなソファに腰を下ろしガルガンさんはデスクチェアに座っていた。
私はお菓子をキラ様の前のテーブルに置いて、ガルガンさんの部屋に置かれているコーヒーセットでコーヒーを入れ出した。
「若い男を囲っているって噂は本当だったのか。意外だな」
「囲ってねーよ。タダの使用人だ」
私は背後から二人の視線を感じつつ、もくもくとコーヒーの準備をした。
「ハリスもお気に入りらしいじゃないか。私も最近気になる女性が出来て探しているのだが、ガルガン心当たりがないか?ロロ村出身のブラウン色の髪の娘だが…」
私は帽子をかぶって髪を隠しているつもりだが、ところどころからブラウン色髪が見えていると思う。
キラ様は確実に私がその村娘ではないかと疑っているような口ぶりだった。
「随分前に宿に泊まったあの兄妹か?知らないなー」
ガルガンさんは極自然にとぼけているが、それだけで疑いが晴れるとはとても思えなかった。
私は緊張して少し震えながらコーヒーをキラ様の前に置き、次にガルガンさんのテーブルの上に置いた。
騎士団長キラ様は私の魔力が見える騎士だ。
今の私はクスリを飲んでそれを隠しているが、強力な魔力をもつ例えばハリスさんとかは隠していてもうっすら解るらしい。
私はキラ様が解らない事を祈っていた。
「アロー、買い出しに行って来てくれ」
「あ、はい。わかりました」
私はキラ様の顔を見ない様に俯いてお辞儀をして部屋を出ると入り口で待っていた騎士と目が合った。
その眼に何故かぞくりと寒気がして、視線を外し会釈をして通り過ぎて宿を出た。
怖かった…
生きた心地がしない宿から外に出て思いっきり息を吸って深呼吸をする。
特別ガルガンさんに何かを買ってきてと頼まれていなかったので、気晴らしに今日の晩御飯のおかずを買って帰ろうと市場に向かう事にした。
王都の市場はいつも活気づいており、おいしそうな食べ物が沢山並んでいる。
いままで食べたことがないモノも沢山売られており、自分が田舎娘だとつくづく実感した。
一月ちょっとガルガンさんと生活をして、ガルガンさんが好きな食べ物は肉だと最近気が付き、特に評判が良かったのが鶏肉の照り焼きだったことを思い出した。
晩御飯は鶏肉の照り焼きに決めて肉屋で鶏もも肉を二枚購入すると、その他にも、野菜や飲み物など適当に買い物をして時間をつぶし、日が傾いて夕方になってきた。
さすがにもうキラ様は帰っているだろうと思い、近道の路地を抜けて帰ろうとすると、前方に黒いフード付きマントを被った大柄の人が立っている。
私はその人に違和感を感じ、引き返して違う道を使おうとするが路地の入口にも似たような風貌の人が道を塞ぐよう立っていた。
私は嫌な予感がして、どこか他に逃げ場がないかキョロキョロと周りを見るとゴミ箱が置いてあり、そこから塀を超えられる事に気が付く。
ジリジリと距離を詰めていく人たちを横目に警戒し、荷物を置いて一気にゴミ箱に飛び乗り壁を這い上がって乗り越えた。
最後にちらりとマントの人たちを見ると焦って私を追いかけようとしているので、私は振り向かず全速力で逃げた。
塀を乗り越えた先は普通の家の庭で急いで外に出て別の路地に駆け込み脇道に入った。
背後から追いかけられている気配を感じながらもこれ以上ないというぐらい一生懸命逃げて心臓がバクバクなっている。
次の路地に入った瞬間出会いがしらにマントの人にぶつかった。
しまった!!
焦って逃げようとするが腕を強く掴まれ逃げる事が出来ない。
私は大声を出して暴れようとしたが瞬時に口を手で覆われ床に倒され、騎士が馬乗りをしてきた。
どうしよう、どうしよう、どうしよう。
恐怖で少し震えながら目に涙を浮かべジタバタ暴れているとフードの中の顔が少し見え、その顔はさっき宿で見た騎士だった。
その騎士の眼は凍り付くほど冷酷な瞳をしていて、ぞくりと悪寒がした。
「んー!!!!んーんー!!」
手で口を抑えられ文句を言っても何も反応しない騎士は無表情ではあるが何か考えて、私の腕を掴んでいた手を放し私のシャツの胸元に手を掛け一気に服をひき裂いた。
ブチっビリビリ!!
無情にもボタンが飛ぶ音とシャツの生地が破れる音に私は強姦されると思い、体を強張らせ固まり震え出した。
騎士はそんな私に構わず胸に巻いていたサラシを乱暴にずらすと動きを止める。
私の豊満な胸が露わに…ん?
豊満は言い過ぎたが、確かBカップぐらいあったハズの胸が…ない。
毎日サラシ巻いてたから潰れました-レベルではなく、本当になく、完全な男の胸元になっている。
騎士はソレを凝視して、私の口から手を離しスクッと立ち上がり走って去って行った。
私は上半身を起こし再度マジマジと自分胸を見て両手でペタペタ触りサーと青ざめた。
それから無我夢中で宿に走って帰りガルガンさんの部屋に駆け込む。
バン!!と勢いよく扉を開けるとイスに座って本を読んでいたガルガンさんはびっくりして立ち上がる。
「ガルガンさんっ…む、胸がなくなってる!!」
私は全速力で走って帰ったので息をきらし肩で呼吸をしながら涙目でガルガンさんに訴えた。
引き裂かれ汚れた衣服に乱れた姿と涙目の私にガルガンさんは顔を歪め壁に掛けていたコート私の肩に掛けて引き裂かれた服を隠してくれた。
襲われた事によるショックもあるが、私はそりよりも胸が無いことの方が重大だった。
確か昨日の夜、お風呂に入ったときはあったハズなのに…
「ガルガンさん、なんで私の胸無くなっちゃったの!?」
「あーそれは恐らくあれだ、薬の副作用だな」
「え!!」
「まあ、大丈夫。薬の効果が消えたら戻る…トオモウ。それより、なにがあった?」
私は買い物の帰りに襲われた事を話すとガルガンさんはスゥっと目を細め無表情になる。
そんなガルガンさんを見たのは初めてで、言いようのない迫力を感じ思わず私は怯えてしまった。
ガルガンさんはそんな私に気が付き頭をボリボリとかいて、私にコーヒーを入れてくれた。
それから、買い物した物を取りに行ってくるからここで待ってろと言って出て行った。
路地に置いてきた買った物を取りに行くだけにしてはなかなか帰って来なかったので心配になったが、一時して帰ってきたので安心した。
おそらく襲って来た騎士は私が女かどうか確かめたかったのだろう。
副作用のせいで突如つるぺったんになった胸は哀しいが、結果騎士が勘違いしてくれた事は良かったのかもしれない。
私は服を着替えて夜ご飯の準備をしているとガルガンさんは心配そうに遠くから私を見ていた。
騎士試験の朝日
私はいつもの男装ではなく、髪型をポニーテールにして、女性用の軽装具を身に着け気合を入れて部屋を出た。
試験の申し込みはハリスさんが任せろと言ったのでお願いしており、騎士試験のうち市民枠で応募しているはずだ。
今日は適性検査と筆記試験、明日は実技試験の予定である。
私は朝食をガルガンさんと一緒に食べようと思い、調理場に向かった。
いつものように朝食を作りロビーのテーブルに並べガルガンさんの部屋の扉をノックする。
「おはようございますーガルガンさん朝ごはん出来てますよ」
するといつものようにぬぅっと扉から顔を出し大きく欠伸をしながら部屋からガルガンさんが出て来た。
「お、馬子にも衣装ってやつか?」
「…まぁそんな所です。さ、早く食べて下さい。片づけをして試験会場に行きたいので」
「あぁ……なぁ、レオン」
突然ガルガンさんに本名で呼ばれたので違和感を感じ、朝食を食べる手を止めてガルガンさんを見た。
ボサボサ頭のボサボサ髭はいつも通りだが、その目は真っ直ぐ私の目を見つめていた。
「…あの?」
「…やっぱり、何でも無い食べよう」
そういうとガルガンさんは朝食をガツガツとたいらげ「頑張れよ」と言って部屋に戻って行った。
私はガルガンさんが何を言いたかったのか気にしながら、片づけをして騎士試験会場に向かった。
最後まで読んで頂きありがとうございます!
この小説は一話のボリュームが多いく、内容詰め込みすぎているので作者ですら「え?いまどうなったの?あれ?つじつま合わない…」と思う事が多々あります。
さすが暴走小説…
掲載前も何度も読み直していますが、変な所見つけ次第訂正していくつもりです(*^-^*)
実は掲載直前に兄の恋人の名前をアリア→サナに変えたので…そこの見落としあったらごめんなさい!!
こんな適当な私の小説を読んで頂きありがとうございます!