第一話『村の一大危機にゃん!』のその④
第一話『村の一大危機にゃん!』のその④
とまぁこんにゃ風に、いつ果てるともしれにゃい、『霊体について』の取り留めのにゃい思いに耽っていたらにゃ。突然、けたたましい声が鳴り響いたのにゃ。それはあたかも、虚脱した空間に身を置いているウチを現実へと引き戻そうとする警報のように。
「大変なんだよおぉぉっ!」
びゅうぅぅん!
一陣の風がウチの目の前を通りすぎていく。あまりの勢いに思わずつられて顔の向きも左から右へと。風の正体はいわずとしれたミクリにゃん。仲間うちで一番声が大きく、一番行動力がある妖精にゃ。にゃにゃっ広い『遊びの広場』の中を縦横無尽、所狭しと駆け巡る。
(相も変わらず、威勢がいいのにゃん)
ミクリにゃんはネコ型霊体。真っ正面から見ると、頭の縦半分を境に左側が青、右側が赤の毛並みにゃ。力を使う時は赤に、技を使う時は青に、全身がどちらか一色に染まるという特異体質にゃん。『勝つ者、強い者が正義』の思想があるのかどうかはともかく、『ええいっ! 当たって砕けろぉっ! お釣りは要らないよぉっ!』とばかりに行動が直進的。この判りやすい性格が魅力といえば魅力かもにゃ。
「そりゃ大変だぁ!」
ミーにゃんにつられるが如く声を張り上げたのは翅人型霊体のミロネにゃん。ミクリにゃんと追いつ追われつのデッドヒートを繰り拡げている。翅を一切使わず、身体を発光させているところから、霊力にゃけで飛んでいるのが良く判る。
(にゃにもそこまでしにゃくとも。やれやれ。つき合いのいいことにゃん)
ミーにゃんが『箱入り娘派』にゃら、こちらはさしずめ、『野戦派』といったところか。同じ翅人型ではあるものの、見た目の印象はだいぶ異にゃる。身体は褐色で、翅と霊服は緑、紺、茶色のまだら模様。一見、アウトドア派に見えにゃくもにゃい姿の中で唯一、印象を裏切っているのが顔立ちにゃん。インドア派を思わせる翳りとマジメさがどこはかとにゃく漂っている。
ついでにいえば……、ミーにゃんが『可愛い』のに対し、ミロネにゃんは『綺麗』。おんにゃじ幼児、おんにゃじ背の高さでこうも違うかと、霊体の奥深さを感じ入った次第にゃん。
「あら、大変!」
ぐるぐると『8』の字で上空を旋回しまくるミストにゃん。身体が、ぶるぶるっ、と小刻みにゆれている。元々、口数が少にゃい女の子にゃ。それにゃけに平静を装った声の中に潜む恐怖の響きは、こちらの背筋さえも、ぞぉっ、とさせてしまうほどにゃ。
ミストにゃんも翅人型霊体。霧の妖精にゃん。紫がかった白い身体をしている。二枚翅は紫の地に光沢のある水色の帯が走っていて、霊服も紫一色。『わたしは謎めく冷たい女の子』『わたしは破壊神』『わたしは神秘が生んだ女の子』にゃどのキャッチフレーズを次々と生み出しては、自分をそれらしく装うとする。普段、愛想のにゃい顔をしているのもそれが理由にゃのでは? と勘ぐるぐらいにゃ。でも、いつもダメ。長続きをした試しがにゃい。内気で怖がりにゃ性格にゃのが幸いして逆に親しみやすいキャラとにゃっている。
「た、大変なんでありますかぁっ!」
ぱたぱたぱた! ぱたぱたぱた!
ウチの近くに飛んできたのは、一見、翅人型とも見てとれる妖体で、名前はミムカにゃん。ミロネにゃんみたいに発光してはいにゃいものの、一生懸命羽ばたいている。にゃから、速さもそれにゃりには保たれているのにゃん。
心の動揺が口調ばかりじゃにゃく、姿や動作からも感じられる。とにかく落ち着いてはいられにゃいのにゃろう。『どこへ逃げますですかぁ?』といわんばかりの視線を誰ともにゃしにぶつけつつ、同じところをぐるぐると。身体を少し屈めて、じぐざぐと上下にゆれにゃがら飛んでいるのにゃ。
(ごめんにゃ。ミムカにゃん)
この友にゃちこそ、ネコ型、翅人型、ぐにゃぐにゃ型、のいずれの姿をも持つ変態、いや、多様型霊体にゃのにゃん。今は翅人型で、身体はネコ型の時とおんにゃじ白地に黒の縞模様。霊服と翅は逆に、黒地に白の帯が絵柄のように走っているのにゃ。
ミムカにゃんはくりくりとした目に相応しく、好奇心が旺盛みたいにゃ。自分が興味を持ったにゃら、ところ構わずツッコミたがる傾向がある。当然、燥ぎ回るのにゃって大大大好きみたいにゃ。感情を表に出したがるところから察するに開けっ広げにゃ性格にゃのかも。表現の仕方がいささかオーバーにゃのは、この性格が起因しているとも考えられる。怖がったり驚いたりしていても、実際には見た目の半分ぐらい、と考えたほうが良さそうにゃん。
ミーにゃんとは仲が良いばかりじゃにゃい。『翅人型の時であれば頭や力、それに技、顔の器量までもが伯仲の実力を持つわん』と、あのミーにゃんが絶賛。『アタシの最大のライバル』といわせしめたほどの相手にゃん。
すたすたすた……ばたっ!
「痛っ! んもう。なんとかなりませんかねぇ、本当に。大変なんですよぉっ!」
すたすたすた……ばたっ!
「痛っ! んもう。なんとかなりませんかねぇ、本当に。大変なんですよぉっ!」
すたすたすた……ばたっ!
「痛っ! んもう。なんとかなりませんかねぇ、本当に。大変なんですよぉっ!」
(キリがにゃい)
お次にウチの目に飛び込んできたのは……、どっちへ行こうかと迷っているのにゃろう。ふらついたようにゃ足取りのミリアにゃん。ネコ型にしては、ちと情けにゃいお姿にゃ。
(ここに居る以上、被害は免れにゃいと思うのにゃけれども)
ミリアにゃんはネコ型霊体にゃ。身体中が薄緑一色の毛並みに覆われている。目立って特徴あるものといえば……、
(はて? にゃんにゃろう? ネコにゃから真ん丸顔は当然にゃしぃ。
あとはこれといって特に……そうにゃん!)
ピンク色の首輪にゃ。先祖伝来の形見とか。フレームの輪っかは念動操作で拡げたり縮めたりが自由自在にゃ。霊技を出す時は真ん丸型レンズ……ちょっと大きめにゃ……のメガネに変わる。フレームが拡がって上昇、目の辺りまで来ると、ぱっ、とレンズが出現。狭まって装着とにゃる。見ように依っては、『ワレワレハ、ウチュウネコダ』とでもいいそうにゃ雰囲気で、ちょっと身を引くほど。もちろん、メガネから首輪へと戻る際も念動操作にゃ。
普段のミリアにゃんはからは、『沈着冷静』『思慮深い』といった気配がどこはかとにゃく漂っている。黙って座っていれば、『おしとやか』で『清楚にゃ乙女』の感がたっぷり。でもにゃ。残念にゃがら見かけと実際は違うのにゃ。現に今、目の当たりにしている姿からも、ドジっ子らしき匂いが、ぷんぷんと漂ってくる。まぁこんにゃのは序の口で、一番まずいと思うのは、夢想に耽る性格にゃということ。それが高じて、にゃのか、夢想に基づいた同好会を考えては誰彼構わず手段を選ばず誘いかける、という迷惑至極にゃ行為に走る。にゃんとも呆れた話にゃ。人もネコも霊体も見かけじゃ判らにゃい、という教訓を示唆するキャラといえるのかもにゃ。
もぐもぐもぐ。もぐもぐもぐ。
「どうにゃ? ネイルにゃんが造った今日のヨモギ団子は?」
「そうねぇ。いつもと違って『甘さ控えめ』ってとこかなぁ」
「ミーにゃん的には『あり』? それとも『なし』? どっちにゃん?」
「やたら甘いモノが食べたい時には物足りないけど……、
今日はそんなでもないから、うん、『あり』にしておくわん」
「良かったにゃあ。それを聴いたら、ネイルにゃんも、ほっ、とすると思うのにゃん」
「でも珍しいわん。お喋りの前におやつを出してくるなんて。なにかあったわん?」
「さすがはミーにゃん。いつもにゃがらの鋭いツッコミにゃん」
「ミアンとはつき合いが長いからね。
まっ。おだてるのはそこまでにして、早くいうがいいわん」
「お話のことにゃん。実はにゃ。ここで一つ注意があるのにゃん」
「おや、開始早々?」
「面目にゃい」
「別に謝るほどのことではないわん、
で? なにを注意するの?」
「『小説家になろう』では、にゃあまん『ミリアにゃんが居にゃくにゃったのにゃん!』が投稿されているはずにゃのにゃけれども」
「そうね。無事に最終回まで行ったわん」
「まっことに、いいにくいのにゃけれども……、
本当のところ、あのお話はにゃ。二作目にゃんよ」
「そういえば……、確かにお話の順序からいえばそうなるかもね」
「今回のお話をぐにゃぐにゃまとめている間に、二作目をほとんど、まとめ終えてしまったのにゃ」
「なぁるほどね。それで『ミリアにゃん』のほうが最初に発表となったってわけね」
「なぁるほどね。それで、キャラの描写やお話の説明部分が重複しているのね。『こっちのお話で造ってあるから、それを借りればいいや』って手抜きをしたってわけでしょ?
真実は知らないほうがいいこともある、っていう、お手本みたいなお話なのね」
「イオラ……」
「イオラにゃん……」
「あら、どうしたの? ふたりとも、薄焼きせんべいよりも薄い目をして。
そうそう。おせんべいといえば」
ちょい。ちょい。
「頂きます」
もぐっ。もぐっ。
「うわぁっ! 二本同時に口の中へ入れたわん!」
ずるずるずるぅっ。
「ふにゃん! 口の両端から二本いっぺんに串から引き抜いたのにゃん!」
もぐもぐもぐ。もぐもぐもぐ。
「へぇ。甘さ控えめもなかなかいいじゃない。ねっ、ミーナちゃん、ミアンちゃん」
「ふぅ。イオラには勝てないわん」
「ふぅ。イオラにゃんには勝てにゃいにゃあ」
「うふっ。もち!」




