第一話『村の一大危機にゃん!』のその①
第一話『村の一大危機にゃん!』のその①
「ふわああぁぁんにゃ」
前足と後ろ足。ともに、ぐぐっ、と真っ直ぐに延ばしての大あくびにゃん。
「天空の村ってのんびりとしているのにゃあ」
ウチらが棲んでいるイオラの森って、『天空の村』にある森の一つにゃん。この森のほぼ真ん中に位置する、ここ『遊びの広場』で一日の大半を過ごすことにしている。普段たむろっているのは広場のど真ん中。まぁ早い話がイオラの森の真ん中、とにゃるわけにゃ。柔らかにゃ草むらが一面に生い茂っていて、座るにしても寝転ぶにしても快適この上にゃい場所。昨日、闘いが行にゃわれた『荒野』と目と鼻の先にあるのに、似ても似つかにゃい寛ぎの場にゃん。ウチらがここを『遊び場』と呼ぶのもこうした理由からにゃ。
「今日もいい天気にゃのにゃあ」
時刻はまにゃ朝。暖かにゃ陽射しの中、ミーにゃん同盟の仲間みんにゃで、ごろごろごろごろ。香ばしい草の匂いを身体にこすりつけている。大地と触れ合い、たわむれているのにゃ。
どうして友にゃちサークルの名前を『ミーにゃん同盟』にしたかといえば……、ミーにゃんとウチとで造ったからでもにゃければ、会議の際、ミーにゃんが議長をやっているからでもにゃい。集めた友にゃちの頭文字が偶然、『ミ』にゃったからにゃん。
(まぁどんにゃ理由であっても構わにゃいのにゃ。
にゃって、それで天変地異が起きるわけじゃにゃいもん)
ところがにゃん!
ごろごろごろ……がたがたがた……ごろごろごろっ……がたがたがたがたっ……ごろごろごろぉっ! がたがたがたぁっ!
「じ、地震にゃあ!
みんにゃあ! にゃにか頼りににゃるものにしがみつくのにゃよぉっ!」
ウチの声に応じて、友にゃちみんにゃが良い子のように揃って声を張り上げたのにゃ。
『はぁい!』
ぴたっ。ぴたっ。ぴたっ。ぴたっ。ぴたっ。ぴたっ。
間もにゃく地震らしきもののゆれは収まった……のにゃけれども。
『にゃんかうっとしいにゃあ』と首を延ばして身体のあちらこちらと見てみればにゃ。
ネコ型妖体のミクリにゃんとミリアにゃんがウチの左右に陣取っていた。それぞれが自分の前足をウチの前足に絡ませ、引っついているのにゃ。でもって背中には翅人型妖体の四にんが陣取っていた。ミーにゃんが、『ここはアタシだけのものだわん』といい放ちにゃがら、ミストにゃんとミムカにゃん、それにミロネにゃんを出来るにゃけ遠ざけようと悪戦苦闘の真っ只中にゃ。
「みんにゃあ」
声をかけたら、首を延ばしたウチの顔へと視線が一斉に注がれたのにゃ。
「にゃあ。どうしてみんにゃ、ウチにたかっているのにゃん?」
「えっ。だって今、頼りになるものにつかまれって」とミクリにゃん。
「オレも確かに聴いたな」とミロネにゃん。
「ミムカもしかとこの耳で。間違いありませんですよ」とミムカにゃん。
「わたしも。で、目の前にあったから」とミストにゃん。
「私もです。なにか甘美な思いに身体が支配されかかったのですけど、引き戻さんとばかりの声につられて、本能的に、ばぱっ、と」とミリアにゃん。
「アタシもアタシも。聴いたから、しがみついているわん」とミーにゃん。呆れたようにゃ顔をして、次いで出た言葉が。
「たった今、自分が喋ったばかりなのにぃ……。
ねぇ、モワン。頭、大丈夫わん? 幾らネコとはいっても、忘れるのが早すぎるわん」
異口同音。口々に『当然の行為』でもあるかのように喋っているのにゃ。にゃもんで、ウチは我知らずのうちに、ふぅ、とため息を。
「あのにゃあ。ウチはかよわい乙女にゃん」
五感及び霊覚においても特段の異常にゃ気配は感じられにゃい。
「みんなぁ、どう思うわん?」
ミーにゃんのかけ声に応じて、『ボクは』『わたしは』と、ひとりひとりが自分の『現状分析』を口にしたのにゃ。もちろん、ウチもミーにゃんも。結果、誰もがおんにゃじ考えと知れたのにゃ。
「うぅぅん。それなら、『なにごともなし』ってことにしたいけど……、
それでいいわん?」
『はぁい』
みんにゃがみんにゃ、挙手の姿勢。これで決まりにゃ。
ウチらは再び、ごろごろごろごろ、を始めたのにゃん。
そして……次第に地震の記憶も薄れ、『そんにゃのあったっけ?』と思うくらいににゃった頃。自然が拡がる空間にて、大地との触れ合いに誰もが身も心も奪われ、平和を満喫していたさにゃかのことにゃん。
いきにゃり、びくぅっ、とするようにゃ大声が。
「千里の道も一歩からだわん!
でも千里の道は遠すぎるから、一歩も行かないわん!」
(…………はて?)
にゃにをいいたいのかさっぱり。みんにゃもおんにゃじとみえて、揃って首を傾げた格好にゃ。それでも、七者七様。『生き物の数だけ違う考えがある』との言葉通り、てんでばらばらの顔つきとにゃっていく。
きっと、あれにゃろうにゃあ。『ついに来るべき時が来た。本物のアホになったんだ』とか思っている者も少にゃからず居るのにゃろうにゃあ。でもって、思いはおんにゃじでもにゃあ。それを『喜び』の表情で受け入れる者もいるのにゃろうし、『憐れみ』の表情で受け入れる者もいるのにゃろうにゃあ。
決して偏見にゃどではにゃい。良く良く見れば、確かにそれらしき者の姿が、ちらほらと見受けられるのにゃ。誰とはいわにゃいのにゃけれども。
まっ。それはそれとしてにゃ。
誰もが続く言葉を待っているのか、辺りが、しぃぃん、と静まり返る。にゃんとも異様にゃ雰囲気にゃ。
と、これを狙っていたのにゃろうか、間髪容れずに、
「みんなぁ! ごろごろしていてはいけないわん!」
とがめるようにゃ口調にゃ。聞き慣れた声にゃから、別に振り向かずとも誰にゃか判る。とはいえ、無視でもしようものにゃら、それこそ大変にゃ。ご機嫌を損ねることは目に見えている。にゃもんで、やむを得にゃく声のする方へと顔を向けてみる。案の定、目に映ったのは、立ち上がった姿でこちらを指差す親友の姿にゃ。確か、『ミーナ』とかいう名前にゃったと思うのにゃけれども……、生まれた時からウチは、『ミーにゃん』と呼び続けている。にゃもんで、今とにゃっては正しいかどうかすらも自信がにゃい。
(ごめんにゃ、ミーにゃん。親友にゃのに)
ミーにゃんはウチら『ミーにゃん同盟』のリーダー。その正体はといえば、イオラの木に咲く花の化身。精霊イオラにゃんを『創造主』とする花の妖精にゃん。
(『母親』といったほうがしっくりとくるかもにゃ)
第一話『村の一大危機にゃん!』のその①あとがき
「ミーにゃん。いよいよ、本編の始まりにゃあ!」
「うん。ミアン。アタシね。なぁんか、どっきどっき、するわん」
「にゃら、ここは一つ、いつも通りに」
「深呼吸よね。判っているわん。せぇのぉっ!」
すうっ。はあっ。すうっ。はあっ。
「どうにゃん? 気分は?」
「すっごく落ち着いたわん。もう矢でも鉄砲でもどんと来い、だわん」
ひゅうぅっ! ひゅうぅっ! ひゅうぅっ! …………。
「ふにゃああっ! 大量の鉄砲が頭上から落ちてきたのにゃあ!」
しゅっ! しゅっ! しゅっ! …………。
「きゃあああっ! 大量の矢も降ってきたのわぁん!」
じたばたじたばた。じたばたじたばた。
ばらんばらんばらん! ばらんばらんばらん! …………。
ぶずっ! ぶずっ! ぶずっ! …………。
「ふにゃあん!」「きゃあぁん!」
しぃぃん。
「あら。頭隠して尻隠さずね。
どぉう? ミーナちゃん、ミアンちゃん。
楽しんでもらえたぁ?」
「イオラ……」「イオラにゃん……」




