プロローグ『大霊蛇イオラ VS 藻の奇っ怪霊獣モモン』
プロローグ『大霊蛇イオラ VS 藻の奇っ怪霊獣モモン』
「ももんがうわあぁ! ももんがうわあぁ!」
「しゃああっ! しゃああっ!」
巨大奇っ怪霊獣モモンと大霊蛇イオラ。『二大霊獣に依る壮絶にゃまでの死闘』との表現をしても決していいすぎじゃにゃいと思われる闘いが、今まさにウチらの目の前で繰り広げられようとしていたのにゃん!
はるか昔のことにゃ。惑星ウォーレスの地上から、のちに『死の灰』と呼ばれる強い毒性を持つ噴煙が湧き上がり、上空にあった、ここ『天空の村』に降り注いにゃという。噴煙の中には地上で生きていた者らの怨念も込められており、それが元で今まで村には存在しにゃかった『奇っ怪霊獣』にゃる命が出没し始めたのにゃ。これから対決しようとしている悪役のほうもまた然り。にゃんと、湖に発生する藻が集まって生まれた霊獣にゃん。巨大な人型格好で名前は『モモン』。藻の塊であることから全身が深緑一色という、にゃんとも地味にゃ容姿にゃん。
一方、モモンにゃんを迎え討つ正義の味方はといえばにゃ。イオラの木に宿る精霊のイオラにゃん。幼くして命を失ったウチを哀れんで、妖体、化けネコとして復活させてくれた恩ある村の守護神。親友ミーにゃんの創造主でもあるのにゃ。今回の闘いでも定番中の定番、ウチらが期待した大霊蛇の姿で挑むみたいにゃ。容姿についていうにゃら、彩色がにゃんといっても目につく。先ずはお腹にゃ。白い縁取りの内側は真っ黄っ黄。『だんだん腹』とでもいうのにゃろうか。ほぼ均等に横線のくぼみが縦に何本も走っている。這いずれば、もこもこと動いてにゃんとも面白い。そしてお腹以外は黄緑色の地肌にゃ。でもって、白い縁取りで内側がピンクという丸っこい斑紋が、あちらこちらに描かれている。にゃんともカラフルにゃお姿にゃのにゃん。……とはいうものの、『ねぇ、ミアンちゃん。この際、逆にしてみたらどうかしら。地肌をピンクにして斑紋は黄緑にするの。そしたらもっとウケると思うんだけど』との相談をイオラにゃん自身から持ちかけられたので、今後変わる可能性は十分あるのにゃ。彩色以外では……親しみやすい外見、といえるかも。全身が柔らかにゃ曲線を帯びたフォルムで顔も楕円形と、にゃかにゃか可愛い。タレ目にゃのも可愛らしさに拍車をかける。蛇にゃけに口を閉じていても隙間から、先っぽが二つに分かれた薄ピンクの細長い舌が時折、『はい、こんにちは』とでもいうように、にょろにょろ、と飛び出してくる。これもちょっとぐらいは可愛い気がしにゃいでもにゃい。もちろん、口を大きく開けば、鋭くとがった牙がずらりと並んで『いらしゃいませ』のお出迎え……。失礼。こちらはどこをどう見ても可愛くにゃい。
モモンにゃんも大霊蛇も、イオラの森に生えているどの樹木よりも背丈が大きい。久々の二大巨獣の闘いとあってウチの心は高揚しまくるばかりにゃ。みんにゃの顔つきからもそれが十分伺える。
今ウチらが居るのは『遊びの広場』の一角、端っこのほうにゃ。他の場所とは違い、『荒野』と呼ぶに相応しい光景が拡がっている。乾いた土で覆われた薄茶色の地面。砂色の石っころがあちらこちらに散らばっていることを除けば、他には草木一本生えてはいにゃい。闘いが繰り返し行にゃわれたことを無言で物語っているのにゃ。
ここには観客席が何台も配置されている。ウチと親友のミーにゃんが旗揚げした、造って間もにゃい友にゃちサークル『ミーにゃん同盟』のみんにゃで力を合わせて、普段は隅っこに束ねられて放置されているものを一つずつ、そりゃあもう、大急ぎで準備したのにゃん。誰が造ったかといえば、樹木カモックに宿る精霊のゲンじいにゃん。滑らかにゃ肌触りが感じられるつやのある薄い琥珀色の長椅子で、まさに傑作と呼ぶに相応しい代物にゃん。
闘いの場は、観客席とは目と鼻の先。二つの間を遮るものはにゃにもにゃい。上から下までばっちし、一望出来る。ややもすれば、こっちまで巻き込まる恐れもある。それでも、『観客席をもっと遠ざけては?』との声は一つも出にゃい。みんにゃがみんにゃ揃って、『もっと近づけるべきだ』との大合唱、というのが現実にゃ。
(みんにゃ怖いもの知らずにゃん。
……そういえば、ミーにゃんとこんにゃ話をしたようにゃ気が)
「ねぇ、モワン。そんなに怖いなら、どうしていつも最前列のど真ん中なんかに座っているわん? 一番後ろでいいじゃない」
「にゃにをいうのにゃ、ミーにゃん。怖いもの見たさ、っていう言葉を知らにゃいのにゃん?
これが見られるから、ウチは生きているようにゃものにゃんよ」
「そ……そこまでいうわん?」
並べたウチらは元より、実体霊体問わず、この森を棲み家とする者らがこぞって、『そろそろ始まるよぉ』との顔つきで、かの座席に着く。もちろん、早いもの順にゃ。席が全部埋まったあとでも帰るにゃんて思いもよらにゃいらしい。ある者は傍の地べたにしゃがみ込み、またある者は木の枝に乗るにゃどして、二大霊獣の闘いを今か今かと固唾を呑んで見守っている。ほとんどがおんにゃじ格好にゃ。頭には、てっぺんにふわふわの白い真ん丸がついた、色とりどりの三角帽を被っている。左手には赤い紙容器を持っていて、中身はといえば定番のポップコーン。景気良く大量に詰め込まれていて今にも零れんばかりにゃ。香ばしい匂いが漂うことも手伝ってか、闘いが始まる前にも拘わらず、既に右手でほお張る者も居る。みんにゃ大昔、天空の村にやってきた移民ら……人間にゃ……が持ち込んだ文化や食べ物の名残りにゃん。取り分け、アースっていう星の、……ええと、ジャムパン? とかの美味しそうにゃ名前の国の影響が、色濃く出ているそうにゃ。とまぁにゃんたらかんたらで受け継がれたものは数々あれどにゃ。これらの中でも『娯楽もの』という奴はとにもかくにも広まる傾向がある。人間らの間だけじゃにゃく、ウチらの間にも浸透してしまっている。ついでいうにゃら言葉や文字も。早い話が毒されているのにゃ。イオラにゃんの闘いも今では森に棲む生き物たちが楽しめる見世物の一つとにゃってしまった。『当のイオラにゃんも、さぞかしこの現状を嘆いているのにゃろうにゃあ』と思いきや、逆に張り切っている。『ねぇ、ミアンちゃん。どうやったらもっと盛り上がると思う?』とネコのウチに尋ねたりもする。観るほうも観るほうにゃら闘うほうも闘うほう、ってにゃわけで双方が楽しんでいる。
(困ったものにゃん。でも楽しいからいいのにゃん)
一番毒されているのはウチかもしれにゃい。
暑い陽射しが照りつける真昼に、熱い闘いの火蓋が切って落とされたのにゃ。
ずぶっ! ずぶっ!
「おおっ、と。これは当たって砕けろ作戦かぁ!」
そう叫んだのは友にゃちのミクリにゃん。目を見張るのも無理はにゃい。イオラにゃんは突き出た口部で盛んにモモンにゃんをつついているのにゃ。『藻であれば痛くにゃいのでは?』という懸念がふと頭をよぎったものの、直ぐに打ち消された。一回突かれる度に後方へ下がるといった、いかにも痛手を被ったかのように見えるさまを目の当たりにしたからにゃ。『これにゃら楽勝』と観客の誰もが思ったはず。ところがにゃ。今までににゃい勢いでつつこうとした瞬間、モモンにゃんは、ひらり、とジャンプ。イオラにゃんの背後へと下りてしまったのにゃん。
ぼむっ!
藻の足が奏でる着地音。それが響くわずかな間に、イオラにゃんも右側へ、ぐるり、と回転。180度向きを変えたところで、またまた対峙する格好とにゃったのにゃ。
びぃぃぃっ! びぃぃぃっ!
大霊蛇の両目から霊力ビームが発射された。ところがにゃ。モモンにゃんのお腹に命中するも吸い込まれてしまう。見た目にも、にゃんのダメージも与えられにゃかったのが良く判る。この意外な結果にさしものイオラにゃんも、『おおっ!』とたじろいだ様子にゃ。身体に一瞬、震えが走ったようにも思える。このわずかな隙を突くかの如く、モモンにゃんは両手の大きにゃ藻の塊を『モモン弾』として左右の腕から同時に発射。しかも続けて撃ってくる。イオラにゃんはのらりくらりとかわしていたものの、いつまでも、とはいかにゃかった。一つ、また一つとモモン弾を浴びてしまい、身体が深緑色の、べちゃっ、としたものに覆われていく。
そして……ついに怖れていた事態が。
にゃんと、発射したモモン弾の一発が、こともあろうに大霊蛇の口の中へと入ってしまったのにゃん!
「しゃあああん! しゃあああん!」
呻き声を上げながら、狂わんばかりの勢いで身体を左右に動かすイオラにゃん。無理もにゃい。天然青汁100%にゃもの。その苦しみ悶えるさまは正視出来にゃいほどにゃ。
(そういえば……)
「にゃあ、ミーにゃん。ええと、ええと……ウチはにゃ。恥ずかしにゃがら」
もじもじ。もじもじ。
「なに? なにがそんなに恥ずかしいわん?」
「今までにゃ。青汁にゃるものを飲んだことがにゃいんよ。
あれって一体どんにゃ味にゃんにゃろうか?」
「へへっ。そういうと思って用意してきたわん」
ささっ。
「おおっ、木造りのコップにゃん。
ミーにゃんミーにゃん。これってゲンじいにゃんの手造りにゃろ?」
「当ったりぃ、だわん!」
「やっぱりにゃ。……あっ、中に入っている緑っぽいのはもしや……」
「もちろん、青汁100%だわん」
「零れにゃいにゃろうか?」
「防水加工を施してあるから大丈夫っていっていたわん。……ああ、それと」
ごとん。
「木桶? しかも、なみなみと水が張ってあるのにゃ。一体にゃんに使うのにゃん?」
「ニャムネおばあちゃんがいうにわね。『もしもの場合の備え』だって」
「この青汁、おばあにゃんが造ってくれたのにゃん」
ニャムネおばあにゃんはウチが慕う高齢の精霊にゃ。温泉の森を棲み家としている。とっても優しくて親しみやすいネコ柄。『本当に、ウチのおばあにゃんにゃったらどんにゃにいいか』との思いを込め、『ニャムネ』を取っ払って、『おばあにゃん』とウチは呼んでいる。
「うん。身体にいいものを色々と集めて煎じたんだって。
ただ……、『味見は一切していないからね。気をつけるんだよ』ともいっていたわん」
「ただの青汁にゃろう? 気をつけるもにゃにもにゃいにゃん。
さてと。それじゃあ、有り難く頂くとするのにゃ」
「なら、アタシも」
ささっ。
「ミーにゃんも飲むつもりにゃのにゃん? 大丈夫にゃろうか?」
「飲んでみなければ判らないわん。当たって砕けろ! だわん」
「ミクリにゃんみたいにゃことを……ぶふふっ。
ミーにゃんもにゃかにゃかの猛者にゃん。にゃら一緒に飲もうにゃん」
「うん!」
「頂きますにゃん!」「頂きますわん!」
ごくごくごくっ…………ぷわぁっ!
ごくごくごくっ…………ぷわぁっ!
じたばたじたばた。じたばたじたばた。
「げほっげほっげほっ! ミーにゃん! 幾らにゃんでもウチに吐き出さにゃくたって」
「ごほっごほっごほっ! モ、モワンこそ……ごほっごほっごほっ!」
「げほっげほっ……そ、そうにゃ! あれにゃん!」
にぎりっ。ぐぉっ。……ごくごくごくっ……ごっくん。
「ごほっごほっ……モ、モワン。アタシにも」
にぎりっ。ぐぉっ。……ごくごくごくっ……ごっくん。
ウチとミーにゃんはかわるがわる、木桶を持ち上げて中の水を飲みまくったのにゃん。
(『もしもの場合の備え』とはにゃあ……。さすがはおばあにゃんにゃ)
「ふぅ。し、死にゅかと」
「お、思ったわん」
(しっかしまぁ、ここまでとはにゃあ……。
そうにゃ! ウチの大切にゃ仲間らにもこの貴重にゃ体験をしてもらうのにゃん!)
とまぁ並々にゃらにゅ決意をしたのにゃん。
「ミーにゃん!」「なぁに? モワン」
「こんにゃ大変にゃ飲み物をウチらだけで味わってはにゃらにゃいと思うのにゃ。
幸せとは、みんにゃで味わうものにゃんよ」
「そうだわん。是非とも友にゃちみんなに飲ませてあげなくっちゃ」
……ってにゃ親切心から、ミーにゃん同盟の仲間にもお裾わけすることとにゃったのにゃん。ミーにゃんが青汁とコップをたくさん用意してくれていた……はて? どうしてにゃろう? まぁいいにゃん……おかげでみんにゃに配ることが出来た。誰もが、『どうも』といって受け取ったあとは、ウチらとおんにゃじに一気飲みにゃ。
……してその結果は。
ミクリにゃん。「ぎゃああおおぅっ!」じたばたじたばた。
ミロネにゃん。「ぐわああああぅっ!」がくがくがくがく。
ミムカにゃん。「あうあうあうあう!」ばたばたばた。
ミストにゃん。「うぐっうぐっうぐ!」がたがたがた。
ミリアにゃん。「うぅっ………………」ばたん!
喚いたり痙攣したり、はたまた気を失ったりの大混乱。
「にゃははは。ミーにゃん、見にゃさい。みんにゃ、のたうち回って喜んでいるうっ。
ばんにゃあい! 大成功にゃん!」
「きゃははは。モワン、やったぁわん! 残りもどんどん飲ませようわん!」
……んにゃことをやっている場合じゃにゃい。
モモンにゃんは、『ここで一気にケリを』とでも思ったのにゃろう。イオラにゃんに向けてモモン弾を集中砲火。避けることも叶わず、
……ついに大霊蛇の身体は隙間なく藻で埋め尽くされてしまったのにゃ。
ぴたあっ。
イオラにゃんがとうとう動きをとめてしまう。『実体波を纏っていたのが仇となったのかも。きっと窒息死をしたんだ』『いいや、まだだ。でも、あとは時間の問題さ』と誰もがしたり顔で状況を分析、落胆しかけたその時。
ぷわわわあああぁぁ!
いきにゃり、大霊蛇の全身から緑色に輝く爆風波が。貼りついていた全ての藻が一気に吹き飛ばされる。たちまち観客席から『やったぁ!』『だと思ったわん!』にゃどの歓声が沸き起こったのにゃん。
この成り行きに驚きを隠せにゃい様子のモモンにゃん。あんぐりと口を開けていたのが災いしたのにゃ。イオラにゃんから飛んできた藻の一つが、すぽっ、と入ってしまう。
「ももんがうわああ! ももんがうわああ!」
今度はモモンにゃん自身が苦しみもがく。当の身体をしているとはいえ、やっぱり、あの味には太刀打ち出来にゃいらしい。まさに千載一遇のチャンス。これを見逃すイオラにゃんじゃにゃい。
「しゃああ!」
勢いをつけて敵へと飛びかかっていく。慌てて戦闘態勢に戻そうとするモモンにゃん。でも時既に遅し。イオラにゃんに巻きつかれてしまったのにゃん。
「ももんがうわああ! ももんがうわああ! ももんがうわああああああ…………」
締めつけに締めつけた、と思ったら、モモンにゃんの声が途絶えた。
ひゅるひゅるひゅるひゅるひゅる。
縛りを解いたイオラにゃん。大霊蛇の目の先にあるものは。
ゆらゆら。ゆらゆら。…………ばたぁん!
モモンにゃんがうつ伏せの状態で倒れた。イオラにゃんはじっと敵の背中を睨んでままにゃ。ややあって地に伏している身体の両腕が動く。次に上半身が起きてきて、ついには足が地に立つまでとにゃる。……でもにゃ。
ふらふら。ふらふら。ふらふら。
どう見ても立つので精一杯みたいにゃ。モモン弾を撃とうとしてか、両腕を上げようとするも、直ぐだらり。そんにゃ敵の様子を見て、『終わったようね』とでもいうようにゃ顔つきを見せるイオラにゃん。閉じた口の隙間から、にゅぅっ、と現われたのは、『にょろにょろとした舌』ではにゃく、大きなマッチ棒一本。口に咥えた格好で近くの樹木へ。摩擦熱が起きやすいと思われるざらざらとした黒っぽい表皮に、しゅうっ、と擦すりつけたのにゃん。
ぼぉっ!
マッチ棒の先っぽ、赤い膨らみ部分がたちまち点火。一瞬、白っぽい色で勢いよく燃え拡がったものの、直ぐに安定した黄色っぽい炎へと変わったのにゃ。
「しゃああ!」
当事者にも拘らず、『ワタシにはかかわりのないことなの』とでもいっているかのよう。ぷい、と吹き出したマッチ棒はモモンにゃんへと真っ直ぐに飛んでいく。
ひゅぅっ……ずぶっ!
そして……炎上。
ぶおおぉぉっ!
「ももんがうわああ!」
命の終わりを察したのにゃろう。モモンにゃんは断末魔の声を最後に、ぴょおん、と観客席を飛び越えて、後ろにあるキャンプファイヤーの囲い台へと突っ込んだ。これもウチらが用意したものにゃ。囲いの中には既に大量の木片が仕込まれている。モモンにゃん自らが着火剤の役目を果たして、点火まではあっという間。ごおぉっ、と勢い良く燃え出したのにゃ。
(勝つほうも勝つほうにゃら、負けるほうも負けるほうにゃ)
とはいえ、ここまでお膳立てしてくれたのにゃ。
『盛り上がらにゃければ申しわけにゃい』ってにゃことで。
「うわぁい!」「やったあぁ!」
ぱちぱちぱち! ぷっぷっぷっぷっぷうっ! どんどんどん! どんどんどん!
ぱああん! ばじばじっ! ばじばじっ!
イオラにゃんの勝利を祝う歓声や拍手。それにどこから持ってきたのかさっぱり判らにゃい妖楽器や妖玩具のいろいろ。ラッパや太鼓、紙吹雪を舞うクラッカーや、爆竹、……etc。
ウチらは席を離れ、キャンプファイヤーを囲んにゃのにゃ。目の前では赤と黄色の炎がめらめらと競い合うかの如く踊っている。
ウチらの燥ぎ心についた火にも、『さぁ、君たちも一緒に!』と誘わんばかりに。
あとは呑めや歌えの大騒ぎ。
勝ったお祝いに、と誰かが木の実を漬け込んだ樽を幾つか持ってきたのにゃ。発酵して果実酒とにゃったのは大人の霊体分。それ以前のジュース状態は子供の霊体分。ウチら幼児はもちろん、後者にゃ。ミーにゃん同盟のみんにゃで揃って『百パーセントじゃにゃきゃジュースじゃにゃい!』と息巻きにゃがら、甘い香りと味がする飲み物をぐびぐびと。木造りの四角い枡で豪快に飲み干したのにゃん。
この騒ぎを更に大きくさせた者らも。イオラにゃんの闘いに酔いしれ、勝利に『感謝感激、雨あられ』とにゃった多数のお魚にゃんと獣にゃん。よせばいいのに、にゃんと! 自ら身体を切り身にして、誰が用意したのか判らにゃいバーベキュー台の網の上へと身を投じたのにゃ。『早まったことを』『前以って一言相談してくれれば』にゃどの嘆きの声も交えて、きゃあきゃあ、叫んでいる間に、網に並んだどれもが、ほど良い焼き加減に。香ばしい匂いが鼻をくすぐる。思い留まらせることが出来にゃかったお詫びにと、みんにゃがみんにゃ食べ始めたのにゃ。歌い放題、踊り放題に加えて、呑み放題、食べ放題へとまでも展開してしまったこの状況。気分はいやが上にも盛り上がる。
「ばんにゃあい!」
そんにゃこにゃで祭りのようにゃ賑わいが夜通し続いたのにゃ。
(アホにゃん)
そう思いつつも、集まった中で一番踊りまくっていたのはウチにゃん。
ツワモノどもが夢のまた夢。キャンプファイヤーの飛び火が熱いのもにゃんのその、へっちゃらちゃらちゃら、ってにゃ感じで、囲い台の周りには観客にゃった者らが多数、円陣を組んで踊っている。『実体波をユルめれば飛び火が来ても身体をすり抜けるだけ』との有利さを生かしてウチも参加。歌い手……ネコ型霊体の誰かにゃ……のリズムに合わせにゃがら、ネコ人型モードで、にゃんにゃかにゃんにゃか踊っていたのにゃ。
(きっと、ひと眠りしたあとは身体のあちこちが悲鳴を上げているのに違いにゃい)
ミーにゃんを含むミーにゃん同盟の仲間らも、前半ぐらいまでにゃろうか、ウチにつき合ってくれたのにゃけれども、後半は火の傍で揃っておネム。それでもウチは踊り続けたのにゃん。不屈の闘志で。自分がネコであることも忘れて。
踊りにゃがら、ふと気がついて親友に目を向けてみた。ミーにゃんにとって夜の闇は大敵にゃ。でもここはイオラの森の中。にゃんの心配もにゃい。現に今もぐっすりと寝込んでいるみたいにゃ。ただ……他の仲間が観客席の上に直接ごろ寝、にゃのに対し、ミーにゃんは自分の羽根布団を敷いてその上で寝ている。ミーにゃんにゃらではの寝姿といってしまえばそれまでにゃのにゃけれども。まっ、傍目に羨ましく思われているかどうかは別としてにゃ。ちょっと違和感が覚えるのを禁じ得にゃい。
(そうそう。すっかり忘れていたのにゃん。勝利したイオラにゃんは…………ぶふふっ)
やっぱり嬉しかったのにゃろう。淡い光を纏う大霊蛇の姿で、青白い三連月と白い星々が瞬く夜空に浮かんで踊っていたのにゃ。
(にゃあるほど。創造主が真上に居るのにゃもん。ミーにゃんも安心して眠れるはずにゃ)
そして……イオラにゃんは踊り明かしたのにゃ。地上に居るウチと一緒に。
「んもう! 悔しいわん。悔しいわん。悔しいわんったら、悔しいわん」
「どうしたのにゃ? ミーにゃん。にゃにをそんにゃに悔しがっているのにゃん?」
「このサブタイトルよ。『ウチもミーにゃん』。これって、『天空の村・アタシはミーナ』の最終回の後書きで口論した際にミアンの口から出た言葉じゃない。ミアンが出るなら、『アタシはミーナ2』にでもすれば良かったのに。残念でたまらないわん」
「ミーにゃん、そう悔しがる必要はにゃいのにゃよ。
ほら、この作品のタイトルを良く見てごらんにゃさい」
「タイトル? だって天空の……じゃないわん。『にゃあまん』になっているわん」
「そうにゃよ。これは天空の村とは別のお話。イオラの森に棲むウチとミーにゃん、それににゃ。ウチらが立ち上げたサークル『ミーにゃん同盟』の仲間とにゃってくれた友にゃちのお話しにゃのにゃん」
「そうだったのわん。
ちょぉぉっと待つわん。ってことは、ひょっとしてアタシの幼児期の話?」
「その通りにゃ。ミーにゃんが無茶苦茶していた時代にゃ。ウチのことを、モワン、としかいってくれにゃかった頃のお話にゃん」
「まだ根に持っているわん? 今はちゃんとミアンって呼んでいるじゃない。
あれは幼き日々の楽しい想い出のひとコマにすぎないわん」
「まぁ確かに、この物語はミーにゃんが生まれてから二百年位経った頃にゃものにゃ」
「本当、長かったわん。なんせ三百年だもの。妖精の幼児期って」
「幼児期とはいってもにゃ。『霊力が十分に使えにゃい』ってにゃけで、実際、口やかましさはもう、成霊期並みぐらいはあるのにゃけれども」
「いいじゃない。ミアンだってそのほうが楽しく会話出来るでしょ?」
「でもにゃ。時々はこんにゃ風に叫びたい時もあるのにゃ」
「へぇ。なんて?」
「昔の可愛いミーにゃんを返してくれにゃあ!」
「ムリムリ。過ぎ去った時はもう二度と帰って来ないわん。
ミアン、もっと現実に目を向けなさい」
「ミーにゃん、あのにゃあ。
それが、幼児期をすぎて間もにゃい妖精のいうことにゃん?」




