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凍り鬼  作者: greed green/見鳥望
最終章 氷解
68/70

(8)

 刑事という職を私欲の為に使ったのは初めてだった。だがそれが今の先生を知るにはうってつけの道具だった。


 先生は千葉にいた。教職からはすでに離れていた。結婚もしているようだったが、夫はどうやら重い病に伏しているようだった。


 久しぶりに見た先生は、見る影もないほどに老い、疲れ果てていた。


「先生」


 声を掛けてはいけないと思った。それはルール違反で、資格もない恐れ多い行動だった。

 虚ろな目が、俺を見つめた。


「……三原君」


 この人に、もうちゃんと名前を呼んでもらえる事もないんだな、そう思うととてつもなく悲しかった。しかし、それでは終わらなかった。


「今さら謝ったって許さないわよ」

「……」

「あんた達のせいで、昌彦君は死んだの。人殺し」



 それだけ言うと、先生は背を向け去っていった。

 俺は茫然と立ち尽くした。


 ――そうだよな、先生。


 分かっていたつもりだった。だが改めて言葉を真っ直ぐに向けられると、抉られるような、想像以上の痛さだった。

 先生は、俺達をずっと恨み続けていた。イジメを起こした俺達を。

 

 俺は、二度も先生を傷つけた。昌彦を虐め、そして、殺した。

 ずっと先生の中に、その傷は残り続けた。


 ――先生は、何を望む。


 俺は考えた。

 向きは違えど、俺と先生の求めるものは、似通っている。


 ――あいつらも、死ぬべきだよな。先生。


 それが復讐。

 そして俺も殺されよう。

 それが償い。


 ――でも、一つだけいいかな。


 死ぬのなら、最後は俺でありたい。

 三原栄治ではなく、神山忍である事の証明。

 その心残りだけは残したくなかった。


 ――先生、ごめんな。


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