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凍り鬼  作者: greed green/見鳥望
七章 鬼
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(3)

 次の犠牲者の可能性が高い三原君。

 そして千葉にいるという妹尾先生。関東エリアにいるという事。そして全員が彼女の元教え子。


 復讐。何度か出て来たその言葉が、再び頭の中に湧き起こる。

 もし、クラスで起きたイジメについて、武市君が死んだ事に彼女が恨みを抱えていたとすれば。

 犯人像として考えた時、あまりに綺麗に全てがはまっていくように思えた。


「一人は、妹尾先生」

「おそらくね」


 彼女が、武市君の手を使って、三人を殺した。

 しかし疑問は晴れない。どうやって彼女は手首を手に入れたのか。死後自ら斬りとった手首の謎。


 ぶるると、ポケットの携帯が震えた。番号は猪下南中学のものだった。


「すみません、電話です。猪下南から」

 

 新幹線の中の為、私は手帳と共に座席を立ち通路へと移った。出ると、声の主は私が電話をかけた時の男性事務員だった。


『三原という生徒に関して分かりましたので、ご連絡させて頂きました』

「ありがとうございます」


 手帳を開き、メモをとる準備をする。


『三原栄治という生徒はおりませんでした』

「え、そんなでも……」


 予想していない答えだった。転校したのは間違いないはずだ

 しかし私の狼狽をなだめるように事務員は声を和らげた。


『いえいえ。なので私もおかしいなと思いましてね、よく調べたんですよ。そうしたら、そういう事かと納得しましてね。多分この生徒の事だろうと思うのですが、お伝えしますね』

「はい、お願いします」


 そして事務員は、生徒の名前を私に告げた。私は一瞬耳を疑った。


「……すみません。もう一度、言ってもらってもいいですか?」

『はい? あ、ええ。分かりました』


 もう一度。

 聞き間違えではなかった。


「……ありがとうございました」


 礼を言って、電話を切った。

 偶然だ。偶然に違いない。私は急いである場所に電話をかけた。女性の声がかえってきた。


「すみません、ある人の履歴書を調べてもらいたいんですけど」

『ウチの中にいる人の、ですか?』

「はい」

『そんな事急に言われても困りますよ。個人情報の扱いは近年特に――』

「至急なんです! 何かあったら後で責任は私がとります! 人が死ぬかもしれないんです!」

『……人が?』

「はい」

『……私は何も知りませんからね。何も見てないし、何も言っていない。それでいいですね?』

「はい」


 私はその人物の名前を伝えた。「すぐに調べます」と通話が保留音に切り替わった。ほどなくして、声が戻った。


『ありましたよ。それで、何が知りたいんです?』

「その人の学歴を教えてもらっていいですか?」

『分かりました』


 淡々と彼女は履歴書に記載された学校名を読み上げていった。

 すぐさま答えは出た。


 ――……何なのよ。


「もう大丈夫です。ありがとうございました」

『いえ。すみません、ところで……安部刑事ですよね? そんな事知ってどうするんですか? 気になる男性、ってわけでもないですよね。さっき人が死ぬなんて言ってましたし。それに、あなたなら――』

「ごめんなさい、そんな事話してる場合じゃないの。とにかく、ありがとう」


 彼女の声がまだ受話器から漏れているのも構わず、私は通話をきった。


 ――ほんと、いい迷惑。


 ふざけるな。どういうつもりだ。


 ――何様のつもりっすか。


 私は、再び電話を耳にあてた。


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