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凍り鬼  作者: greed green/見鳥望
七章 鬼
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(2)

 豊さんの死の衝撃が身体から離れぬままに、東京への新幹線へと私達は乗り込んだ。新潟に行く前の旅行気分はもうどこにもなく、空いた腹を満たすために買ったのは豪華な駅弁ではなく、適当なおにぎりと水だけだった。

 もしゃもしゃとおにぎりを齧りながら、なるべく頭を整理した。


“今の君なら感じ取れているはずだ”


 買被りな言葉だとも思ったが、豊さんの死を見聞きした時、確かに私の中に僅かながら感じたものはあった。その正体は何か。

 

 犯人はいる。そして全ての死は繋がっている。

 全員の死は猪下小学校に端を発している。ではそのきっかけは何か。


 武市君だ。

 武市君というイジメを受けていた生徒。氷鬼という次沢達が行っていた無邪気な遊びで苦しめられていた彼は、とうとうその怒りを爆発させた。そしてそこで神山君が死んだ。

 事故、という考え方はもう捨てよう。後に繋がる死人の手を軸にすれば、この時武市君の手の力によって神山君は死んでしまった。その考えで事件を紐解いていく。


 人殺しのレッテルを張られた彼は居場所を失くし、徐々に追いつめられた。そして卒業後、猪下南中へと進学した彼は、猪下小で首を吊り死んでしまう。

 一見すれば自殺だが、これも自殺ではない。何者かによって自殺に見せかけ殺された。そして手首を斬り取られた。

 犯人は何を思って手を斬ったのか。そこで私は前に一度考えた仮説を思い出した。

 

 次沢達は、失われた中学生の手首に殺されたのでは。


 とんでもない妄想だと思った。手首が殺しに来るなんてと。

違うんだ。全てを超常的に考えるからおかしくなるんだ。この世界は、全てがそうではない。八割九割は私が慣れ親しんできた現実で創られているはずだ。その上に、私が知らなかった世界が折り重なっている。


 この手首を使って、犯行を行った者がいる。しかしそうなると考えなければいけない。

 手首が欲しくて斬ったのなら、手首の力を知っている、その可能性に思い当たる人物の行動になる。しかし実際に事件が起こっているのは十年以上も後だ。こうなる事を想定して、当時手首を斬ったのか。


 誰だ。誰がそんな事を。


 ――駄目だ。分からない。


 一旦流れを戻そう。ともかく、武市君の手首を使って行われた犯行によって次沢達は殺された。

 そして、今豊さんが首吊り死体として見つかった。


 次沢達を殺害した者。そして豊さんの死についても、自殺ではなく殺人として考える。


 ――おかしい。


 これだ。これが感じ取ったものの正体だ。

 次沢達は武市君の手首で殺されたのに対し、豊さんは首吊り死体として見つかっている。特に豊さんに関しては、武市君の死に方とあまりに酷似している。

 この事件が誰によって引き起こされたのかはまだ分からない。でも。


「御神さん」


 二種類の殺害方法。加えて、関東周辺で連続的に殺されている三人に対し、豊さんは新潟にいる中で殺された。


「犯人は、ひとりじゃないんですよね」


 御神さんはこちらを見て、何も言わずに頷いた。


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