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凍り鬼  作者: greed green/見鳥望
六章 誘う手
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(10)

『妹尾先生の事なんですが、彼女は千葉にいるかもしれません』


 御神さんの携帯に茅ヶ崎さんから連絡があったのは、三原君の実家の所在地に向かっている時だった。


「千葉?」

『ええ。どうやら私の少し後に、彼女は関東の方に移っていたようです』


 妹尾先生の事が気になり、その後個人的にも動いてくれた茅ヶ崎さんの話によれば、妹尾先生は猪下にしばらく残った後に関東に移り、そちらで採用試験を通り教師を続けていたそうだ。

 教師のネットワークを通じて茅ヶ崎さんが調べた限り、彼女が最後に赴任していたのが千葉の中学校だったという。それが一年程の前の話だという。

 妹尾先生は結婚していたそうだが、旦那は病気で既に他界しているという事も分かった。

 

「千葉か」


 関東エリア。三人を殺すには十分な範囲だ。彼女が今回の事件でなんらかの動きを見せていると考えるのは、そう無理な発想ではない。そんな考えが頭をよぎった。


「お、この辺りかな」


 アルバムの情報を頼りに、私達は三原君の実家の住所を尋ねた。


「おや。これはハズレかな」


 しかし、住所の場所にあった一軒家の表札はまるで違う苗字だった。駄目元でインターホンを鳴らした。出て来た住人は三十過ぎ程のごく普通の女性で、残念ながら三原君の情報は何も得られなかった。

 ならばと次は中学校へ焦点を当てた。武市君が進学した中学である猪下南中学に連絡を入れ、取り次いだ男性事務員に経緯をかいつまんで話した。上に確認をとり、少し時間をもらえれば調べられるだろうとの事だったので、それに従い情報を待つことにした。


 ほどなくして、連絡が返ってきた。

 三原君は中学二年の時に家庭の事情で関東の学校に転校したそうだ。転校先の学校名を控え、事務員に礼を言い電話を切った。

 すぐさまその学校に連絡をとり事情を伝え、三原という生徒に関しての情報がないか確認してもらうようにお願いした。分かり次第また連絡をもらう事を約束し、一旦電話を切った。


「よし。じゃあ神山君について調べがついたら、向こうに戻ろうか」

「そうですね」


 早速、私達は神山君について捜査の目を向けた。

 クラスメイトの話では当時、突然の死を迎えた彼の印象は、やんちゃで明るく、頭が良いというそう悪くない評価で、どこか一目置かれた存在だったという。

 誰にでもちょっかいをかけ、それは生徒だけじゃなく担任の妹尾先生に対してもそうで度々彼女を困らせていたという。そんな彼にとって武市君はお気に入りのようで、他の生徒に比べよく彼をからかっていたという。


 神山君の実家にも立ち寄ったが、声だけで応対した母親と思われる人物には「話す事など何もない」と門前払いを食らってしまった。

 神山君の当時の様子はある程度知る事は出来たが、事件に関連するような事実は掘り起こす事は出来なかった。


「そううまくはいかないね」


 御神さんはさして残念がる事なく、ぐっと身体を伸ばした。


「お腹空いたね」





 新潟での最後の夜という事で、私は御神さんをあの小料理屋へと連れて行く事にした。


「あら、また来てくれたのね。しかもミステリアスな男前つき」


 女将さんは相変わらずのアットホームな接客で、事件で張りつめた心と身体はすぐさま解きほぐされた。

 出された郷土料理には御神さんも舌鼓をうち、「新潟に来たらここは必ず寄らないといけないね」と気に入った様子だった。

 平和な時間。しかし、それは一時のものだった。





 翌朝、御神さんの声は硬かった。


「一つやるべき事が増えてしまった」

「やるべき事?」


 それは、全く予想もしていなかったものだった。


「豊さんが、自宅で首を吊ったそうだ」


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