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鬼の引き金
幾年が過ぎ、腹の底に沈んでいた憎悪に見て見ぬふりを続けた。住めば都と言えば違うが、完全に受け入れるとまではいかずとも、ある程度の慣れというものはある。それも人生かと思ったりもした。
「久しぶりだな、**」
そんなありふれた、気兼ねない一言が引き金になった。あまりに不平等な現実は、無情に心を引き裂いた。それが一つ目。
もう一つはあなただ。そこに喜びはなかった。あまりに輝きが失われていた。そしてその原因が何かを知った時、心は更に引き裂かれた。
あの頃の無邪気さに、少しでも大人の配慮や心遣いがあれば、こんな事にはならなかったのに。
その思いが、二つ目の引き金となった。
「最後の一人、か」
もう少し、待っててくれ。