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鬼の焦燥
もう少し。もう少し。もう少し。
なのに。どうしたのだろう。
あなたの声はまだ来ない。
あなたの手紙はまだ来ない。
時間がかかっているのだろうか。
ここまで来たんだ。
一刻も早く、あなたの想いを成し遂げたい。
こんなに近いのに、あなたはとても遠くにいる。
身近にいるのに、遥か彼方にいる。
「会いたい」
会って、何を話す。会って、どうするのか。
まずは、謝罪だろうか。
安っぽい言葉しか紡ぐ事が出来ないような気はするが、それでも最初の言葉はそれだ。
自分に出来る事。
とにかく今は、それしかない。
あなたに会えるのだとしたら。
早く。
だから、早く。
早く、あなたの無念を晴らさせて。
あと。
もう一人だけなのだから。